『Futurama』 Third Series(2001〜2002)

メチャクチャ面白いのに日本では放映もソフト化もされていない、マット・グレーニング製作のSFコメディアニメ『Futurama』の第3シリーズ(全22話)。
第1シリーズ、
第2シリーズに比べて、胸にしみる感動的なエピソードや秀逸なストーリーが多く、個人的には『Futurama』全体を通していちばん好きかも。どの作品も素晴らしいけど、特にオススメの16エピソードを紹介。

「Amazon Women in the Mood」
ブラニガン船長と副官のキフ、そしてリーラとエイミーは、ダブルデートの最中にアマゾネスの惑星へ墜落。救出に来たフライたち共々、男たちは檻に幽閉されてしまう……。エイミーとキフの恋模様を軸に、いつも無神経な言動で女性陣を怒らせている男性キャラたちが酷い目に遭うエピソード。今回もブラニガン船長のバカっぷりが弾けている(作画もムダに気合いが入ってて呆れる)。タイトルはコメディ映画『アメリカン・パロディ・シアター(Amazon Women in the Moon)』から。アマゾネス村のスピーカーに“Sonya”って書いてあって吹いた。

「Parasites Lost」
トイレの自販機で買った怪しげなタマゴサンドを食べて以来、フライの調子がおかしい。実はタマゴサンドに潜んでいた寄生虫が、体内で都市を築いていたのだ! ファーンズワース教授たちは寄生虫を退治するため、自分たちをコピーしたナノロボットを使って体内に潜入。一方、寄生虫によって身も心も改善されたフライは、リーラに愛を告白する……。切ないラブストーリー要素を絡めた『ミクロの決死圏』のパロディ編。自分の脳神経をビシバシ切断しながら寄生虫と戦うフライの姿は爆笑必至! リーラとのロマンティックなラブシーンも秀逸。題名はもちろんミルトンの『失楽園(Paradise Lost)』から。

「The Luck of the Fryrish」
自分の運のなさを嘆くフライは、少年時代に持っていた幸運のお守り“七つ葉のクローバー”を探しに、地下の旧ニューヨークにある自宅跡地へ。そこで彼が見たものは、英雄として称えられる兄ヤンシーの銅像だった。その銘板にはフライの名前が! ひょっとして兄はクローバーを奪った上に、自分と取って代わったのか……!? 1970〜90年代にわたるフライの過去と、30世紀の現在をスイッチバックで描き、見事なオチで号泣させる傑作エピソード。ギャグ少なめの演出も異色。

「The Birdbot of Ice-Catraz」
輸送していた高密度燃料が、ベンダーのヘマで冥王星の氷の海にダダモレ。真っ黒に汚染された冥王ペンギンたちを救おうと、リーラはボランティアに参加する。一方、ベンダーはペンギンの群れに紛れて逃げ出そうとするが……。湾岸戦争時の原油にまみれた海鳥たちをモチーフにした、動物保護テーマの一編。燕尾服を着てペンギンになりすますベンダーが可愛い。タイトルはジョン・フランケンハイマー監督の映画『終身犯(Birdman of Alcatraz)』から。

「The Day the Earth Stood Stupid」
高度な知能を持った脳型エイリアン軍団が地球を急襲! 催眠状態にかかった人類は残らずバカになってしまうが、リーラだけはペットのニブラーに助けられ、からくも脱出。侵略者に対抗しうる唯一の希望は、なぜか催眠を免れたフライだけだった……。『顔のない悪魔』みたいな脳型エイリアンと、地上最強のボンクラ・フライが繰り広げる頭脳戦(!)が見どころの侵略SF編。タイトルはSF映画のクラシック『地球の静止する日(The Day the Earth Stood Still)』から。二ブラーを演じる動物声優のエキスパート、フランク・ウィルカーの地声の芝居も聞けるレアな作品だ。本筋とは関係ないが、冒頭に出てくる催眠ガエルのキャラクターが最高におかしい。

「Where the Buggalo Roam」
エイミーの両親が営む火星の牧場にやってきたフライたち。そこに火星人たちの操る竜巻が現れ、エイミーがさらわれてしまった! 気弱なキフはなんとか恋人を救おうとするが……。『捜索者』+『ゴースト・オブ・マーズ』といった感じの一編。タイトルは「峠の我が家」の歌詞“Where the Buffalo Roam”から。なぜかエイミーの両親に対して異常に馴れ馴れしいドクター・ゾイドバーグがすごく面白い。

「The Cyber House Rules」
リーラは孤児院の同窓会で、憧れの同級生アドレーと再会。エリート医師になっていた彼に2つめの目をプレゼントされる。晴れて他の人間と同じになった彼女は、知的でハンサムなアドレーに夢中になるが、フライだけは「1つ目の君の方がよかった」と言う……。リーラが2つ目となり、幼馴染みと婚約するエピソード。ベンダーが政府の援助金めあてに孤児たちを育てるサブストーリーも楽しい。タイトルはジョン・アーヴィングの小説『サイダー・ハウス・ルール』から。

「Insane in the Mainframe」
銀行強盗の濡れ衣を着せられたフライとベンダーは、2人まとめてロボット専門の精神医療刑務所へ送られてしまう。ノイローゼに陥るフライの前に、強盗の真犯人ロベルトが出現! 精神病院で文字通り「ロボット化(ロボトミー)」されてしまうフライの悪夢を描いた『カッコーの巣の上で』風エピソード。シュモクザメみたいな形の極悪サイコパス・ロボ、ロベルト役をデイヴィッド・ハーマンが怪演。本気で怖い。ハーマンは
『Idiocracy』(2006)などの実写作品にも出演している。

「The Route of All Evil」
ファーンズワース教授と会計士ハーミーズの息子たちは、理解のないオトナたちに認められようと新聞配達でひと儲け。だが、その繁盛ぶりには裏があって……という本筋よりも、フライとリーラとベンダーが自分たちのオリジナル銘柄ビールを作ろうとするサブストーリーの方が面白い。歩く醸造工場と化し、妊婦のようにお腹を膨らませたベンダーがキュート。タイトルは『カンタベリー物語』の一節“The love of money is the root of all evil.”から。

「Bendin' in the Wind」
ベンダーが巨大缶切りに巻き込まれ、全身麻痺に! 落ち込む彼は、たまたまベックの保存生首と出会い、一緒にライブツアーへ出ることになる。自分の壊れたボディを楽器代わりにして、スクラップになってもステージで活躍するベンダーは、ロボットたちのヒーローとなるが……。ゲストにベックを迎えた音楽ロードムービー編。タイトルはボブ・ディランの名曲「風に吹かれて(Blowin' in the Wind)」から。

「Time Keeps on Slippin'」
宇宙人バブルガム率いる銀河バスケチームが、地球を賭けた勝負を挑んできた。ファーンズワース教授は彼らに対抗すべく、宇宙に漂うエネルギー物質クロニトンを使い、最強ミュータントチームを作り出す。ところがクロニトンを採取した“穴”から時空に歪みが生じ、時間がジャンプしてしまう現象が発生。気が付くとフライとリーラは理由も分からず結婚していた!? 理論SFとラブストーリーを絡めた秀作エピソード。リーラへの想いに破れるフライの切ない心情と、まるで『トップをねらえ!』のようなラストシーンが泣かせる。バブルガム役のフィル・ラマーの演技も最高。脚本のケン・キーラーは、カルトSF作家ハリー・スティーヴン・キーラーの作品をもとにストーリーを考えたとか(2人に血縁関係はなし)。

「I Dated a Robot」
インターネットでルーシー・リューの模造人格をダウンロードしたフライは、ルーシー・ロボとのデートに夢中。だがそれは、悪徳業者がルーシー本人の保存生首から違法コピーしたデータだった。真相を知ったリーラたちは、業者に捕まっていた彼女の生首を連れて逃げ出す。が、そこに100人のルーシー・ロボ軍団が現れた! ルーシー・リューが本人役で出演したスペシャル・エピソード。声だけの芝居も結構達者でビックリする。さほど美人に描かれてないけど、怒らなかったんだろうか? ドクター・ゾイドバーグの物真似がクール!

「A Leela of Her Own」
ひょんなことから野球選手になったリーラは、その投球センスのヒドさから「ビーンボール・スター」として有名になってしまう。彼女は汚名を挽回すべく、史上最低の打者ハンク・アーロン24世と共に、特訓を開始した! 伝説のホームランバッター、ハンク・アーロンをゲストに迎え、最悪の野球選手を演じさせたバチ当たりなエピソード。『メジャー・リーグ』の解説者役でお馴染み、ボブ・ユッカーも本人役で特別出演。タイトルは映画『プリティ・リーグ(A League of Their Own)』から。

「Anthology of Interest II」
もしもマシンを通して映し出される3つの奇妙な世界……『ザ・シンプソンズ』のハロウィン・エピソードのようなオムニバス編。第1話ではベンダーが人間化。暴飲暴食を繰り返した挙げ句に、『AKIRA』のような肉の塊になってしまう。ベンダーが酒場やストリップクラブで享楽の限りを尽くすシーンの作画が凄い。第2話はテレビゲーム化した世界でフライが地球の救世主となる『デビルゾーン』みたいな話。パックマン将軍が可愛い。そして第3話は、みなしごのリーラが案山子のフライやブリキのベンダーらと共に「おうち」に帰ろうとする、『オズの魔法使』の秀逸なパロディ編。

「Roswell That Ends Well」
ふとしたことでタイムスリップしてしまったフライ一行。辿り着いた先は、1947年のロズウェルだった! 軍に捕えられたベンダーとゾイドバーグを救うべく、教授は策を練るが……。タイムパラドックスをテーマに、SFファンと「ムー」読者なら誰でも知っているロズウェル事件を絡めた、エミー賞受賞作。従来のSFセオリーをひっくり返す思いきったプロットに、20世紀の歴史的要素と、ギャグとアクションをふんだんに加え、バランス良くまとめた一編。さすがエミー賞。

「Godfellas」
宇宙海賊と交戦中、船外に放り出されてしまったベンダー。広大な宇宙を漂っていると、故郷を失った異星人たちが体に付着していた。ベンダーは彼らの居住を許す代わりに“神”として崇められる。だが、やがて内戦が勃発し……。宇宙の果てで神となり、神として挫折し、ついには神と出会ってしまうベンダーの旅を描いた傑作エピソード。終盤の展開もよくできてる。元ネタはスウィフトの『ガリバー旅行記』だが、今なら『電脳コイル』14話の先取り? タイトルはもちろん『グッドフェローズ(The Goodfellas)』から。
▼『Futurama』のスタッフたち。左がマット・グレーニング、右がベンダーとデイヴィッド・コーエン
上に挙げなかったエピソードも十分面白い。第2シリーズの凶悪ロボサンタが再登場する「A Tale of Two Santas」や、80年代バブル野郎に会社を潰されかかる「Future Stock」は必見。日本人としては、『料理の鉄人』のパロディが登場する「The 30% Iron Chef」も強烈なインパクト。鹿賀丈史の役をデイヴィッド・ハーマンがものすごく熱演してて爆笑する。
特に何度も繰り返し見てしまうのは、「Parasites Lost」、「The Luck of the Fryrish」、「Time Keeps on Slippin'」、「Roswell That Ends Wel」、「Godfellas」の5本だろうか。ギャグアニメだと思って甘く見ていると、思いがけず胸を揺さぶられ、泣かされてしまう。それが『Futurama』の恐ろしいところだ。
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DVD『Futurama』Vol 3(4枚組)
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『Futurama』 Second Series(1999〜2000)

西暦3000年のニューヨークで、宇宙を駆ける運送屋として働くことになった青年フライ。一つ目美女のリーラ、性格の悪いダメロボットのベンダー、遠い子孫のファーンズワース教授など、いちいちキャラの濃い仲間たちに囲まれて、今日もおかしな物語が幕を開ける。『ザ・シンプソンズ』のマット・グレーニングが原案・製作を手がけたSFコメディアニメ『Futurama』の第2シリーズ。相変わらずアイディア豊富なストーリーの連続で、全19話を一気に見せてくれる。
パイロット版を含む
第1シリーズが好評を博し、本格的にシリーズが始動してからは、メインキャラの過去や背景が少しずつ明るみに。恋愛ドラマ要素も色濃くなり、オトナ向けのきわどい描写も増加。もちろんブラックなギャグやバカバカしい遊びも倍増し、フライの肉体損壊描写もエスカレートする(医療技術の進歩した世界だけあって、復元も簡単なのだ)。甲殻類系エイリアンのドクター・ゾイドバーグや、ジャマイカ人会計士のハーミースといったサブキャラをフィーチャーした話も楽しい。中でも面白かったのは、以下の10本。

「I Second That Emotion」
リーラの可愛がっているペット、ニブラーをトイレに流してしまったベンダー。お仕置きに人間と同じ“感情”をインストールされた彼は、途端に自責の念に駆られ、危険を顧みず下水道へ。慌てて後を追うリーラとフライの前に、地下に棲む異形のミュータントたちが現れる……。人でなしロボット・ベンダーに感情が芽生えるハートウォーミングなエピソード。個性豊かなミュータントたちのキャラ造形も見もの。タイトルはザ・ミラクルズの同名曲から。第2(Second)シリーズ一発めのエピソードで、感情(Emotion)がテーマの話だから、でもある。
「Brannigan Begin Again」
宇宙一サイテーな英雄ザップ・ブラニガン、ついに艦長資格剥奪! 行く当てもなく、流れ流れてプラネット・エクスプレス社に身を寄せたブラニガンと副官のキフは、宇宙配達屋として第二の人生をスタートさせる。が、仕事のキツさに我慢できず、ブラニガンはフライたちを巻き込んで叛乱を企てる……。ハタ迷惑なヒーローのめでたい失墜と、誰も望まない再起を描くエピソード。ハリー・ニルソンの名曲「Everybody's Talkin」に乗せて、路頭に迷うブラニガンたちを映し出す『真夜中のカーボーイ』モンタージュが最高。
「Xmas Story」
未来のXマスはなぜか夜間外出禁止。フライはリーラにプレゼントするために買ったオウムを逃がしてしまい、捕まえようと夕暮れ近い町をさまよう。そこで彼が遭遇したのは、恐怖の殺人ロボットサンタだった! 『Futurama』のクリスマス・エピソードは、凶悪なロボサンタがニューヨークを破壊しまくるというメチャクチャな内容(ついでに子どもの夢も破壊するという事で、フォックスは放映を拒否)。一方で、身寄りのない者同士であるリーラとフライの絆をしみじみ描く、イイ話でもある。ロボサンタの声はジョン・グッドマン。怖すぎ!

「Why Must I Be A Crustacean in Love?」
最近、ドクター・ゾイドバーグの様子が(普段に増して)おかしい。実は彼の種族は繁殖期に入っていたのだ。ゾイドバーグはフライたちを連れて母星に帰り、恋人を見つけようとする。が、目をつけていた幼馴染みの女性がフライを見そめてしまった! 2人は闘技場で決闘する羽目に……。「医者なのに貧乏」「キモい」「変な臭いがする」等、いいところなしのヤブ医者ゾイドバーグが、母星でもやっぱりモテない君だったことが分かる爆笑エピソード。フライがかなりヒサンな目に遭う話でもある。アニー賞受賞作。
「Put Your Head on My Shoulder」
よりによってレイ・ミランド主演のB級ホラー映画『Mr.オセロマン/2つの顔を持つ男』にオマージュを捧げた一編。エイミーと付き合うようになったフライは、車でデート中に大事故を起こしてしまう。気が付くと、フライの頭部は応急処置としてエイミーの体に縫い付けられていた! タイトルはポール・アンカの同名曲から。

「How Hermes Requisitioned His Groove Back」
キャリアアップの懸かった大事な監査を前に意気込む会計士ハーミーズ。が、苦労して整理した仕事がベンダーたちのせいで全てオシャカに。一方、監査官の女性はフライのありえないだらしなさに惚れ、強引にデキてしまう……。ハーミーズ失業の危機と鮮やかな復活が描かれる一編。『未来世紀ブラジル』っぽい役所で繰り広げられる終盤のミュージカルシーンは圧巻。タイトルは映画『ステラが恋に落ちて(How Stella Got Her Groove Back)』より。
「Mother's Day」
30世紀の「母の日」は、世界中のロボットがフレンドリーロボット社の社長“ママ”にプレゼントを贈る日のこと。一堂に会したロボット達に、なんとママは武装蜂起を命令! 自らが女王として君臨する新体制を作り出そうとするママに、かつて恋仲だったファーンズワース教授が説得を試みるが……。高齢者同士による濃厚かつリアルなラブシーンが衝撃的。老人の裸体をここまでしっかり描き込んだテレビアニメもないのではないか(ほとんどイヤガラセに近い)。

「The Problem with Popplers」
リーラたちはとある星で非常に美味な食べ物を発見。地球に持ち帰って“ポプラー”という名で売り出すと、たちまち大ヒット商品に。だがそれは凶暴なオミクロン星人の幼生だった! 怒った彼らは地球に宣戦布告する。宇宙時代の食物連鎖問題を描く、いかにもSFらしい一編。第1シリーズの「When Aliens Attack」にも出てきたオミクロン星人が再び登場。動物保護を訴えるヒッピーを丸呑みしてしまうギャグが痛快。
「War Is The H-Word」
コンビニの割引カード目当てに宇宙軍に入隊したフライとベンダー。さっさと辞めてカードだけせしめようとしたものの、入隊直後に戦争勃発! ブラニガン指揮官の下、厳しい訓練を受けながら激戦地へと送られるバカ2人。リーラは彼らの身を案じ、変装して隊内に潜り込む。『スターシップ・トゥルーパーズ』や『MASH/マッシュ』など、戦争映画のパロディを満載した第2シリーズの最高傑作。クライマックスはロボット爆弾にされてしまったベンダーを助けるべく、手に汗握る救出劇が展開する。

「The Honking」
叔父の遺産を受け取ることになったベンダーは、不気味な屋敷で一夜を過ごす。あまりの怖さに思わず外へ飛び出した彼は、謎の車にはねられてしまう。それ以来、ベンダーは夜な夜な邪悪な車に変身する体になってしまった! タイトルは『たたり(The Haunting)』のもじりだが、中身はほとんど『狼男アメリカン』や『ザ・カー』のパロディ。『デスレース2000』ギャグもあり。

米盤DVDには各話にオーディオコメンタリーが収録されていて、これがまた楽しい。毎回参加している製作のマット・グレーニングとデイヴィッド・コーエンを始め、各話のスタッフや声優陣など、参加メンバーもみんなリラックスした雰囲気で楽しそう。特に、ベンダー役のジョン・ディマジオ、フライ/ファーンズワース/ゾイドバーグなど何役も演じているビリー・ウェストら、声優たちがはしゃいで脱線する瞬間がたまらなくおかしい。つい本編よりもコメンタリー音声の方を再生しがちだ。
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DVD『Futurama』Vol 2(4枚組)
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『Futurama』 First Series(1999)

ピザ屋の配達人として冴えない日々を送っていた青年フライ。その年の大晦日、彼は仕事中にふとしたきっかけで人工冬眠マシンに閉じ込められてしまう。そして時は流れ、目覚めるとそこは西暦3000年、千年後の世界だった! フライは飲んだくれの不良ロボット・ベンダーや、腕っぷしの強い一つ目美女のリーラと知り合い、遠い遠い遠い遠い(中略)遠い親戚ファーンズワース教授のもとで、スペースデリバリーボーイとして働き始める。
『ザ・シンプソンズ』のクリエイターとして知られるマット・グレーニングが手がけた、もうひとつの傑作テレビアニメシリーズ(日本では未放映)。30世紀の未来世界を舞台に、20世紀生まれのダメ青年が銀河を股にかける配達人となって、仲間たちと共に活躍するSFコメディだ。絵柄はまるっきり『ザ・シンプソンズ』まんまながら、またひと味違う面白さのシリーズに仕上がっている。

もちろんマット・グレーニング作品らしい皮肉のきいたギャグとパロディが満載で、『銀河ヒッチハイクガイド』や『宇宙船レッド・ドワーフ号』に近いノリの、破天荒かつドライなSFコメディとして楽しめる(アメリカのテレビ番組としては珍しいかもしれない)。その意地悪く突き放した笑いの質は、おかしくもあり、時には切なくもある。優れた未来SFになくてはならない、クールな無常観をしっかり持ち合わせた秀作なのだ。マイク・ジャッジ監督の
『Idiocracy』(2006)も、導入部の設定のみならず、本作をかなり意識していると思われる。
随所に現れるカルチャーギャップの描写は、過去=視聴者にとっての現在である2000年代への痛烈なアイロニーにもなっている。安易な郷愁も抱かせないし、時代の肯定などは絶対にしない。そこがクール。
映像的には、当時としては目新しかったセルシェーダー3DCGアニメーションがふんだんに採り入れられ、デジタル彩色によるカラフルでポップな未来世界のビジュアルが逆に新鮮。ファンキーで楽しげな音楽と共に、30世紀のニューヨークを映し出すオープニングタイトルは、何度観ても飽きがこない(演出はマイク・スミス)。

個性豊かなキャラクターたちも魅力的だ。主人公+ヒロイン+ロボットという王道の主役トリオ設定ながら、少しずつ定石をずらしていくグレーニング式のキャラ造形術が効いている。
怠け者でテレビ好きの青年フライのどうしようもないダメさ加減は“若きホーマー・シンプソン”といった感じだが、若年層より上のオトナ向けに作られた作品だけに、突き放し方はより辛辣。親友のロボット、ベンダーの型破りなキャラクターも秀逸だ。主人公よりもだらしない上、アルコール浸けで、性格も悪く、窃盗癖まである厄介者。そんな2人の世話役を務めるヒロインのリーラは、強くて知的で労働者階級出身のセクシーな美女という、いかにもオタク好みのキャラだが、「一つ目」というインパクト絶大のチャームポイントまで持っているのが素晴らしい。発想もいいけど、このビジュアルでちゃんと魅力的に見せているから大したものだと思う。ちなみにリーラ役を演じているケイティ・セーガルは、『地球最後の男/オメガマン』(1971)のボリス・セーガル監督の娘。

さて、DVD-BOXの第1巻に収録されている13話の中で、個人的に好きだったエピソードをいくつか紹介してみると……。
Episode 1 「Space Pilot 3000」
シリーズのパイロット版にして記念すべき第1話。タイトルもそこからきている。西暦2999年の大晦日にタイムスリップしてしまった主人公フライが目にする未来世界、リーラやベンダーとの出会い、役人からの逃走劇などがコミカルに描かれる。一見ユートピアのようでありながら、街角に設置された自殺ボックスに長蛇の列ができてたりする皮肉な世界観が楽しい。レナード・ニモイが本人(の保存生首)役でカメオ出演。
Episode 4 「Love's Labours Lost in Space」
消滅寸前の惑星へ希少動物の保護に向かったリーラ、フライ、ベンダー。3人は旅の途中で宇宙的英雄ザップ・ブラニガン艦長の船と遭遇するが、彼の真の姿はとんでもない大馬鹿マッチョ野郎だった。リーラはしつこくモーションをかけられ、弾みで一夜を共にしてしまう……。最低の男と寝てしまった女性の悲喜劇を描いた、『ザ・シンプソンズ』ではまずできない大人向けエピソード。一見タフだが弱さや迂闊さも併せ持つヒロイン・リーラの人間的な面にスポットを当てた秀作だ。タイトルはもちろんシェイクスピアの「恋の骨折り損(Love’s Labour’s Lost)」と、往年のSFファミリードラマ『宇宙家族ロビンソン(Lost in Space)』の合体。無神経でいやらしくて厚かましいブラニガン艦長のキャラがものすごい。『ザ・シンプソンズ』で言うとトロイ・マクルーアと市長の甥を混ぜた感じ。可愛い顔して何でも食べてしまうマスコットキャラのニブラーも初登場。

Episode 7 「My Three Suns」
液体状の生命体が住む惑星にやってきたフライ一行。ひとりで宮殿へ配達に行ったフライは、喉が乾いて瓶に入っていた水を飲んでしまう。が、それはこの国の王様だった! フライは新国王に選ばれ、優雅な暮らしを満喫するが……。主人公フライの底なしのダメさ加減が楽しめる一編。オーソドックスなSFストーリーの本筋よりも、ベンダーが料理の趣味に目覚める導入部が面白い。タイトルは60年代のTVドラマ『パパ大好き!(My Three Sons)』から。
Episode 8 「A Big Peace of Garbage」
ファーンズワース教授の開発したニオイ望遠鏡で、フライは偶然、宇宙を漂う巨大なゴミの塊を発見。それは21世紀にロケットで無責任に打ち上げられたもので、千年の時を経て再び地球へと戻ってきたのだ。ニューヨークに危機が迫る中、フライとリーラとベンダーは命がけのミッションに旅立つ! 『アルマゲドン』の秀逸なパロディ編。この回は特にギャグが際立っていて、ファーンズワース教授のひどすぎる発明スケッチとか、21世紀のゴミ問題を伝えるドキュメンタリー番組とか、『ザ・シンプソンズ』のセルフパロディとか、メチャクチャおかしい。演出は『ザ・シンプソンズ』でも活躍したスージー・ディーター。エンドクレジットに流れる音楽は某キューブリック作品への素敵なオマージュ。
Episode 9 「Hell is Other Robots」
ビースティ・ボーイズのライブ(ただし保存生首)に行ったフライたち。その楽屋裏でベンダーは電流ショックの味を覚え、タチの悪いエレキ中毒になってしまった。更正のためロボット教会に入った彼は、極端に品行方正な模範ロボ、というより鬱陶しい宗教キチガイに生まれ変わる。フライとリーラは親友を元の性格に戻そうとアトランティック・シティへ連れて行き、なんとかリハビリに成功。しかし、戒律を破ったロボはロボ地獄に落ちなければならなかった! ファーストシリーズの最高傑作。ベンダーの堕落と受難をたたみかけるように描く、歌とギャグ満載の爆笑エピソードだ。タイトルはJ・P・サルトルの言葉「Hell Is Other People.(地獄とは他人のことだ)」から。ビースティ・ボーイズがカメオ出演し、ロボ地獄を司るロボ悪魔の声を『ザ・シンプソンズ』のホーマー役でおなじみダン・カステラネタが怪演。後半の地獄のシーンで繰り広げられるミュージカル・パートは圧巻!

Episode 10 「A Flight to Remember」
ファーンズワース教授の計らいで、フライたちプラネット・エクスプレス社の面々は、豪華客船型スペースシップで社員旅行に出発。しかし、船長はあの宇宙に名を馳せるアホマッチョのブラニガン艦長で、しかも船の名前はタイタニックだった……。当時、世界的に大ヒットしていた映画『タイタニック』の素晴らしくよくできたパロディ。上流階級の貴婦人ロボットと出逢ったベンダーの切ない恋と別れを主軸に、名場面の数々が再現される。フライとリーラの仲も急接近。タイトルはタイタニック号事件の悲劇を綴った1958年のイギリス映画『SOSタイタニック/忘れえぬ夜(A Night to Remember)』から。
Episode 11 「Mars University」
20世紀には落ちこぼれ学生だったフライは、自分の学力を証明するため火星大学に編入。ルームメイトはファーンズワース教授が育てた天才サルのグンターだ。フライは秀才グンターと火花を散らし、片やベンダーはロボット寮の仲間たちと悪戯三昧を繰り広げ、放校寸前に……。『ナーズの復讐』や『アニマルハウス』といった学園コメディ映画のパロディ満載でおくる、「ホーマー大学へ行く」の姉妹編みたいな最高にバカバカしいエピソード。火星でやる必然性が全くないギャグの乱れ打ちには唖然とする。それにしてもベンダーはベルーシ役にぴったり!
Episode 13 「Fry & The Slurm Factory」
大人気飲料「スラーム」の工場見学ツアーに当選したフライたち。ところがその工場には恐るべき秘密が……。『チャーリーとチョコレート工場』のパロディ編。ウンパルンパもどきもしっかり登場する(もちろん70年代版の方)。『バッド・テイスト』まがいの悪趣味ギャグもてんこ盛り。ナメクジ型宇宙人のデザインがすっごく可愛い。

この他のエピソードも十分面白く、小ネタもいちいち楽しい。シリーズ全体に一定のクオリティが保たれているので、安心して観ていられる。『ザ・シンプソンズ』のファンで、SFも好きで、簡単な英語が分かる人にはぜひおすすめ。テレビ番組なので、DVDは日本のAmazonでも購入可能。
・Amazon.co.jp
DVD『Futurama』Vol 1(3枚組)
DVD『Futurama』Vol 2(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 3(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 4(4枚組)
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