Simply Dead

映画の感想文。

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『鉄コン筋クリート』(2006)

『鉄コン筋クリート』(2006)

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 今年観たアニメーション映画のなかでいちばん好きだ。躍動感に満ち溢れ、それぞれのキャラクターが魅力的で、美術や作画のビジュアル面でも目を見張る。特に、主人公のクロとイタチが対峙するクライマックス・シークエンスでは、芸術的かつダイナミックな悪夢世界が展開し、圧倒的だ。

 何より素晴らしいのは、とても「素直」に作られているところ。奇をてらったクールでスタイリッシュな印象ではなく、町の空気感や子供の心情を大事にした、風通しのいい情緒に溢れた世界になっているのがいい。それは松本大洋の原作マンガに対するストレートな愛情の反映にも見える。マイケル・アリアス監督を筆頭に、スタッフ・キャストが『鉄コン筋クリート』という作品に真から惚れ込んでいるのが伝わってくるのだ。しかも、絶対にSTUDIO4℃という会社でしか作れない、べらぼうに個性的でクオリティの高いフィルムにもなっている。

 西見祥示郎によってデザインされたキャラクターは、日本の商業アニメではあまり類を見ない独特のフォルムで観客を驚かせる。それでいて愛嬌があり、マンガ的で、松本大洋の絵にあるエッセンスを独自の手法で見事に移し換えている。これがアニメーターたちの手によって動き出すと、不思議とメジャー感まで漂ってくるのが面白い。

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 ハイレベルな作画と共に、声優の演技もまた、映画に血を通わせている。特にシロを演じた蒼井優の巧さには驚愕した。クロ役の二宮和也も、役者としての実力を知らしめるのに充分以上の好演を聴かせてくれる。エキセントリックな悪役・蛇に扮する本木雅弘のヌメヌメした悪役演技も強烈。個人的には若い刑事・沢田を演じた宮藤官九郎の抑えた芝居にも感動した。西村知道や納谷六郎ら、脇を引き締めるベテラン声優陣の渋さもいい。

 細かい欠点もなくはない。熱烈な松本大洋ファンには物足りなく感じるところもあるだろう。しかし、あの原作をして、全国120館の公開規模にも堪えられるエンターテインメントとして完成させたのは、本当に凄いことだ。とても幸福な映像化だと思う。

 観終わって清々しく感動させてくれる、今どき真っ当な娯楽作。多くの人に観てほしい。

 『鉄コン筋クリート』を観て気に入った人は、同じくSTUDIO4℃が制作した湯浅政明監督作品『マインド・ゲーム』(2004)も併せて必見。こちらも西見祥示郎や久保まさひこ、浦谷千恵ほか『鉄コン』のスタッフが多く参加しており、アニメーション史上に残る未曽有の傑作となっている。


監督/マイケル・アリアス
原作/松本大洋
脚本/アンソニー・ワイントラーブ
演出/安藤裕章
キャラクターデザイン・総作画監督/西見祥示郎
美術監督/木村真二
作画監督/久保まさひこ、浦谷千恵
動画監督/梶谷睦子
CGI監督/坂本拓馬
編集/武宮むつみ
音楽/Plaid
アニメーション制作/STUDIO4℃
声の出演/二宮和也、蒼井優、本木雅弘、田中泯、伊勢谷友介、西村知道、宮藤官九郎、納谷六朗、大森南朋、麦人

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