Simply Dead

映画の感想文。

『密室の恐怖実験』(1968)

『密室の恐怖実験』
原題:Twisted Nerve(1968)

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〈おはなし〉
 良家に生まれ、母親に溺愛されて育った青年マーティン(ハイウェル・ベネット)。ある時、彼は町で美しい少女スーザン(ヘイリー・ミルズ)と出会い、とっさに知的障害を装って自らをジョージィと名乗った。数日後、継父と衝突したマーティンは家を飛び出し、スーザンの母が営む下宿に潜り込む。ダウン症の兄がいる彼にとって、純真無垢な“ジョージィ”を演じることなど容易かった。周到にアリバイを作りだしたマーティンは、継父を殺害し、完全犯罪を目論む。だが、スーザンがその正体を知った時、事態はさらにねじれた方向へと展開する……。

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 知的障害、ダウン症というデリケートな題材をサスペンスの中核に据えた、カルトなサイコスリラー。ジョン・ボウルティング(製作総指揮)とロイ・ボウルティング(監督・共同脚本)の兄弟が制作し、堅実な作りの佳作に仕立てている。

 映画の冒頭にあるナレーションでも語られるが、ダウン症と精神障害の間に関連性はない。本編のストーリー上でも、ミステリーのトリック的に扱われているに過ぎない。とはいえ製作者側も「正しい理解と判断を促す」ナレーションなど入れながら、そのセンセーショナリズムを売りにしているフシがある。ストーリー自体も、遺伝的心身異常は不可避であると言い切ってしまうようなヤバめの内容。そのいかがわしさこそ本作の妙味だ。今となっては余計に差し触りがあるのか、DVD化の予定もない。かつて日本ではキング=東北新社からビデオが出ていたが、現在ではかなりの希少品になっている。

▼日本版ビデオジャケット。怖い
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 しかし映画として面白いのは事実で、特に『血を吸うカメラ』(1960)あたりが好きな人にはたまらない内容だと思う。ロイ・ボウルティングの演出はクラシカルと言っていい正攻法なものだが、人物描写の積み重ねや、不穏なムードの作り方が巧い。殺人シーンにおけるサイコな高ぶりも、当時としては類を見ない切れ味とリアリティ。この辺の異常性を見事に描いてしまったことが、余計に本作を扱いにくくさせているのかも?

 主人公マーティン青年に扮したハイウェル・ベネットのキャスティングが絶妙だ。あどけなさの奥に狡猾さを秘めた表情、永遠に成長を止められたかのようなアンバランスな少年性が、映画のサスペンスをさらに奥深くしている。どうやら自己の性認識も曖昧らしい殺人者の苦悶は、怪作『サマーキャンプ・インフェルノ』(1983)のギミックにも踏襲されている……というのは単なる思いつきだけど、もしそうだったらなんか嬉しい。

 聡明なヒロインを演じているのは、ディズニー映画の子役スターだったヘイリー・ミルズ。当時のロイ・ボウルティング夫人であり、さすがに魅力的に撮られている。やっぱり映画の成否というのは、監督がいかに女優(または男優)にベタ惚れするかで決まる気がする。2人は本作の9年後に離婚した。

▼ハイウェル・ベネット(左)とヘイリー・ミルズ
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 軽快な口笛のメロディが印象的な、ドリーミーな音楽を作曲したのは、名匠バーナード・ハーマン。クエンティン・タランティーノが『キル・ビル Vol.1』(2004)で殺人看護婦のテーマとして引用していたので、聞いたことのある人も多いだろう。個人的には『悪魔のシスター』(1973)に次いで大好きな作品。


監督/ロイ・ボウルティング
製作/ジョン・ボウルティング、ジョージ・W・ジョージ
原案/ロジャー・マーシャル
脚本/ロイ・ボウルティング、レオ・マークス
撮影/ハリー・ワックスマン
音楽/バーナード・ハーマン
出演/ヘイリー・ミルズ、ハイウェル・ベネット、ビリー・ホワイトロー、フランク・フィンレイ、バリー・フォスター、フィリス・カルヴァート


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