Simply Dead

映画の感想文。

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『スキャナー・ダークリー』(2006)

『スキャナー・ダークリー』
原題:A Scanner Darkly(2006)

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 新宿ミラノ座でやっていた「表現の自由について云々」オールナイトで、封切りよりも一足先に拝見。個人的にやや期待しすぎていたので空振りする恐れもあったけど、しっかり面白い映画に仕上がっていたので一安心。とはいえ、周囲の客がほとんど寝ていたので、やっぱり視神経に負担をかける類の映画なんだろう。でも今回はカメラワークも役者の演技もしっかりしてるので、『ウェイキング・ライフ』(2001)よりは全然堪えられると思う。船酔い度もぐっと少なめ。

 『Slacker』(1991)や『バッド・チューニング』(1993)といった作品で若者たちの気怠い日常を綴ってきたリチャード・リンクレイター監督の作風と、ドラッグ常習者たちの暢気で絶望的な生活を背景にした原作小説とのシンクロ度は、分かっちゃいたけどそれでも想像以上に相性ピッタリだった。もちろん、相性ピッタリじゃないところから『ブレードランナー』(1982)も『トータル・リコール』(1990)も『バルジョーでいこう!』(1993)も生まれたわけで、そういう意味で『スキャナー・ダークリー』の映像化アプローチは相当バカ正直とも言える。本当にちょっと物足りなく感じてしまうほど「普通によくできた忠実な映画化」になっている。

 しかしながら、エキセントリックな原作自体の持つ面白さを1本の映画にまとめあげたという点で、リンクレイターの功績は大きい。ねじれていながら実はストレートに痛切な悲劇として、しっかり成立させている。しかも手法的にはロトスコープ・アニメーションの最新版という型破りな見せ方をしているのだから、やっぱりこの監督にしか撮れない作品になっているのだ。

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 一応書いておくと、『暗闇のスキャナー』はSFとは言いながら、ほとんど半分方が中毒者たちの日常描写に割かれている。そこでゲンナリしてしまう人もいると思うが、演じているのがロバート・ダウニーJr.や、ウディ・ハレルソンといったリアリティ満点の人たちばかりだから大丈夫。特にダウニーJr.のご陽気な壊れっぷりは最高で、ほとんどアテ書きのような役柄を嬉々として演じている。禁断症状に苛まれるフレック役でトボケた怪演を見せるロリー・コクレンもナイス。この両者の奔放な芝居(笑)をさらにトレースしてアニメーション化するという凄まじい労力のかかりようも、本作の見どころだ。いやホントに、この仕事をやり遂げたアニメーターはスーパー作画マンになっていてもおかしくない。ついでに言うと、アニメ化されたウィノナ・ライダーはどういうわけか実物よりも魅力的。

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 アニメーション監督は『ウェイキング・ライフ』と同じくボブ・サビストンが担当。絵のタッチは抽象的感覚を多分に採り入れた『ウェイキング?』とは大きく異なり、色の塗り分け、影や線の多さなど、よりリアル志向の絵柄になっている。共同製作の趣があった前作に比べると、今回はリンクレイターの夢を叶えるための仕事に徹したという感じ。

 混沌とした現実認識を、実写とアニメーションを融合させたビジュアルで見せるという手法は、すでに『ウェイキング・ライフ』で徹底して描かれているし、湯浅政明監督の大傑作『MINDGAME』(2004)では、さらに巧妙に現実とファンタジーが段階的に描き分けられていた。『スキャナー・ダークリー』を観ながら思い出していたのは、間違いなく『MINDGAME』の方だった。


原作/フィリップ・K・ディック
監督・脚色/リチャード・リンクレイター
アニメーション/ボブ・サビストン
撮影/シェーン・F・ケリー
編集/サンドラ・アデア
音楽/グレアム・レイノルズ
出演/キアヌー・リーヴス、ロバート・ダウニーJr.、ウディ・ハレルソン、ウィノナ・ライダー、ロリー・コクレン、ショーン・アレン(声)

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『スキャナー・ダークリー』DVD

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