Simply Dead

映画の感想文。

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『The Pyjama Girl Case』(1977)

『The Pyjama Girl Case』
原題:La Ragazza dal pigiama giallo
英語別題:The Girl in the Yellow Pyjama(1977)

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 オーストラリアでも、ブラック・ダリア事件を思わせる猟奇殺人事件が1934年に起きている。オーブリーという州境の町で、半分焼けただれた若い女性の惨死体が発見されたのだ。遺体は激しく損傷していたため身元は分からず、マスコミは彼女の着ていた衣服からそれを「黄色いパジャマの女事件」として大々的に報道した(詳細は後述)。

 本作はその事件をもとに、舞台を70年代のシドニーに移して描いた“ジャッロ”映画=イタリア製の猟奇スリラー。まさしくジャッロ(イタリア語で黄色)をミステリーの中心にあしらってはいるが、ジャンルの中では相当の異色作と言える。監督・脚本はフラヴィオ・モゲリーニ。元は美術監督で、『アッカトーネ』(1961)や『黄金の眼』(1968)などを手がけている。

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〈おはなし〉
 ある日、海岸で発見された若い女の無惨な焼死体。彼女は複数の男に輪姦された上、ピストルで喉を撃ち抜かれ、頭を割られた後、火にかけられていた。身元を証明する手掛りはなく、捜査は難航。警察は彼女の死体をガラスケースに入れて公開し、情報を得ようとするが……。

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 映画は引退した老刑事トンプスン(レイ・ミランド)の地道な捜査劇を描きつつ、平行して、若く奔放な女性グレンダ(ダリラ・ディ・ラッザーロ)をめぐる人間関係を綴っていく。最初は時制的なトリックで惑わせるが、勘がよければすぐ気付く。

 『悪魔のはらわた』(1973)などに出演している美人女優ダリラ・ディ・ラッザーロが、自由にしか生きられないヒロインを魅力的に演じ上げている。彼女のクールな美貌が存分に楽しめる、という意味でも愛好家必見の作品だ(ただし、切ない余韻は覚悟の上で)。

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 「すでに終わってしまった、どうにもならない悲劇を淡々と追い続けている」という諦観が全編に漂い、切なくはあるが、同情的ではない。イタリア映画らしいドギツさもありながら、どこか醒めている。オーストラリアの明るい情景がなおさらそう感じさせるのだろう。題名からポップな印象のジャッロ作品を想像してしまうと、やや取っ付きにくい内容だと思うが、独特のムードがあり、忘れがたい映画ではある。アンニュイな歌声の主題歌も印象的。

 映画の舞台はシドニー。ドラマの背景として、移民の国オーストラリア、放埒なライフスタイルが許されている自由都市シドニーの側面が切り取られている。一方で印象的に映し出されるのは、イタリア移民アントニオの孤独だ(ミケーレ・プラシドが好演)。終盤、それが映画のもうひとつの主題だったことが明らかにされる。


 ブルーアンダーグラウンド社から発売されたDVDには、特典映像として、実際の「黄色いパジャマの女事件」に関する本『The Pyjama Girl Mystery』を著したリチャード・エヴァンスによる解説が収められている。現実には、事件から数年後、容疑者として挙がっていたイタリア移民アントニオ・アゴスティーニが逮捕され、イギリス移民の妻リンダを殺したことを自白。事件解決が報じられた。しかし、その自白証言には不審点が多く、死んだ女性とリンダの身体的特徴も異なっていたため、早期解決をもくろむ警察が自白を強要したのだとエヴァンスは見ている。アントニオは4年の服役を経て出所し、イタリアに戻って再び家庭を築き、1969年に大往生を遂げたという。

 映画の製作者たちがこの事件に興味を持った経緯も、興味深いところだ。遺体をケースに入れて公開し、証言を募るという無神経な捜査も、実際に行われたことらしい(しかし舞台を現代に移した時点でやや無理が……)。イタリア人から見たオーストラリア気質の揶揄なのだろうか。

製作/ジョルジオ・ サルヴィオーニ
監督/フラヴィオ・モゲリーニ
脚本/ラファエル・サンチェス・カンポイ、フラヴィオ・モゲリーニ
撮影/ラウル・アルティゴット、カルロ・カルリーニ
編集/アドリアーノ・タグリアヴィア
音楽/リズ・オルトラーニ
主題歌/アマンダ・リア
出演/レイ・ミランド、ダリラ・ディ・ラッザーロ、ミケーレ・プラシド、メル・ファーラー、ハワード・ロス

・DVD Fantasium
『The Pyjama Girl Case』DVD(US盤)
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