Simply Dead

映画の感想文。

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『父子』(2006)

『父子』
原題:父子(2006)

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 東京国際映画祭“アジアの風”部門出品作品。ウォン・カーウァイが師と仰ぐという、パトリック・タムの17年ぶりの監督復帰作。度肝を抜く映画だった。

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〈おはなし〉
 ボーイ(ン・キントー)の一家はマレーシアの中国人街に住んでいる。料理人として働くハンサムな父(アーロン・クォク)は、博打好きの荒くれ者。そんな夫の激しい気性に堪えきれず、母(チャーリー・ヤン)は家出してしまう。父はかんしゃくを爆発させ、やがて職まで失う羽目に。

 借金取りから逃れるため、父子は名も知らぬ街のモーテルに身を寄せる。「人に使われるのはゴメンだ」と言って働こうとしない父は、やがてボーイに盗みまでさせるように……。

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 遠い熱帯の異国を舞台に、父と子の交流をたゆたうように描いた枯淡の映像詩……などという内容では断じてない。観客の襟首をつかんで引きずり倒すかのごときパワフルな演出で、壊れゆく家族の絆を150分ガッチリと描いていく。それでいて、映像は途方もなく美しい。息もつかせぬカッティングと、流れるようなカメラワーク、キレのある役者の演技……何もかもが圧倒的だ。映像の官能性も素晴らしく、ラブシーンの濃密さには息を飲む。その強靭な演出力たるや、とても17年間も休業していたとは思えない。特に前半部は凄すぎて、半ば呆然としながら観ていた。

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 精緻に振り付けられたダンスのような役者の動作からも、徹底した演出を感じる。アーロン・クォクのダメな父親ぶりが素晴らしい。素晴らしくいい男がどんどんダメになる。その堕ちっぷりがすこぶる感動的なのだ。健気な息子を熱演するン・キントーも、育ちの良さを思わせる品のいい顔立ちで、画面に美しく映えていた(彼もまた、堕ちる)。

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 家族を捨てる母親を演じるのは、チャーリー・ヤン。スレンダーな身体に薄幸のリアリティをしっかり身につけ、得難い存在感を醸し出している。『バタフライ・ラヴァーズ』(1994)や『天使の涙』(1995)でファンになった身としても、再び脚光を浴びているのは嬉しい。中盤から登場する娼婦役のケリー・リンのキャスティングも絶妙。

 終盤さすがにダレてくるが、それでも群を抜く作品だと思う。ここまで鬼気迫るテンションを維持できる映像作家が、今どれだけいることだろう? まさに“鬼才”と呼ぶに相応しい。監督業から退いていた間は、学校の講師を務めたり、ウォン・カーウァイやジョニー・トー作品の編集者として働いてきたのだとか。これまで監督として映画を撮らなかった理由については「芸術的自由が許される環境がなかったから」と語っている。マレーシアの学校で教えていた生徒と共にシナリオを練り上げ、昨年1年間かけて制作した本作『父子』は、全てにおいて芸術的な欲求を満たした作品だそうだ。

 ちなみに英語題は「After This Our Exile」、流浪の果てに。ラストシーンのいわく言い難い後味は、ベルトルッチの映画にも似ている気がした。


監督・撮影監督・編集/パトリック・タム(譚家明)
プロデューサー/チウ・リークァン
脚本/ティエン・コイレォン、パトリック・タム
美術監督/パトリック・タム、シラス・ホー
出演/アーロン・クォク、チャーリー・ヤン、ン・キントー、ヴァレン・シュー、ケリー・リン

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