Simply Dead

映画の感想文。

『おばさんのポストモダン生活』(2006)

『おばさんのポストモダン生活』
原題:姨媽的后現代生活(2006)

myaunt01.jpg

 東京国際映画祭“アジアの風”部門出品作。『女人、四十。』(1995)のアン・ホイ監督が中国資本で撮り上げた最新作。上海で一人暮らしする中年女性を主人公に、様々な人々との出会いや生活の変化が映し出される。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
 近未来的な高層ビルと、昔ながらの町並みが混在する近代都市、上海。主人公のおばさん(スーチン・ガオワー)は定年退職後、マンションで独り暮らしをしている。彼女の周りには、いつも少し変わった人物が現れる。

 隣に住む金持ちのマダムは、カラオケ好きでペットの猫を溺愛。生意気な12歳の甥クァンクァンは、街で知り合った少女と一緒にニセの誘拐事件をでっち上げ、おばさんの肝を冷やさせる。ある日、おばさんは公園で元京劇役者の男(チョウ・ユンファ)と出会い、やがていい仲に。しかし彼は怪しい取引に手を出してカモられ、ついでにおばさんも貯金を失ってしまう。

 不運が重なり、とうとう大怪我をして入院してしまうおばさん。見舞いに訪れたのは、かつて田舎に夫ともども置き去りにしてきた娘(ヴィッキー・チャオ)だった。彼女は自分たちを捨てたことを責めながら、都会で暮らせなくなった母親を実家へと連れ戻す。遠く離れた地へと向かう車の中で、おばさんの目に映るのは……。

myaunt02.jpg

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

 少年が列車で上海にやってくるオープニングから、てっきり少年の目から見た話なのかと思ったら、実は語り部のいないドライな映画だった。次々に出てくる登場人物が、いつの間にか物語から姿を消していくパターンが続くので、映画のスタイルが掴みづらく、初見ではやや戸惑った。

 語り口はコミカルで、映像のトーンも明るく鮮やかだが、内容は一筋縄ではいかない。気楽なようでいて実はくつろがないおばさんの都会生活は、いろいろあって下降線を辿り、あれよあれよと終焉を迎える。都市部と地方の生活ギャップを冷徹に映し出す終盤、黙して現実を受け入れる主人公の姿は、過去の罪をあがなうようでもあり、急変する社会のツケを一身に支払わされているようにも見える。監督にとっては、その上昇と下降も全てひっくるめて、それが今の中国の「現代生活」なのだろうか。かなり辛辣な映画だと思う。

 スーチン・ガオワーが主人公をリアリティをもって力演。その周りを彩るキャストも魅力的だ。ひょうきんな好人物だが、どことなくうさんくさい中年男を演じるのは、あのチョウ・ユンファ。北京語の台詞回しも新鮮で、これまでのイメージを覆す役柄を好演している。地方に暮らす一人娘を演じたヴィッキー・チャオのやさぐれた感じも素晴らしかった。個人的には、少年クァンクァンと仲良くなる顔に火傷のある少女役の王子文が印象的だった。チャウ・シンチーの新作にもキャスティングされているとかいないとか。

▼王子文
myaunt03.jpg

 音楽を担当したのは久石譲。いつも通りの大げさなオーケストラスコアで、何か作品の主題を見誤っているような感じがした。


製作/ユアン・メイ、チャン・ワン
監督/アン・ホイ(許鞍華)
原作/ヤン・ヤン
脚本/リー・チアン、アン・ホイ
撮影/クワン・プンリョン、ユー・リクワイ
美術/ウー・リーチョン
音楽/久石譲
出演/スーチン・ガオワー、チョウ・ユンファ、ヴィッキー・チャオ、リサ・ルー、クァン・ウェンシュオ
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://simplydead.blog66.fc2.com/tb.php/76-0ab41352
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad