Simply Dead

映画の感想文。

『バックロード』(1977)

『バックロード』
原題:Backroads(1977)

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 フィルムセンターで開催中の「オーストラリア映画祭」で観賞。『デッド・カーム/戦慄の航海』(1989)で注目され、現在は主にハリウッドで活躍するフィリップ・ノイス監督の劇場デビュー作。56分の中編だが、非常に見ごたえがあって面白かった。はぐれ者の中年白人とアボリジニの青年が、ケチな犯罪を繰り返しながらあてどない放浪を続ける、ニューシネマ風のロードムービー。

 古典的なバディムービーというわけではなく、海を見たことがないアボリジニの中年男や、フランス人のヒッチハイカー、僻地のガレージで働く若い女など、どんどん道連れが増えていく。当時オーストラリアという国にどれほどアウトロー的な心情を抱えた人々がいたかという証明のようだ。よるべない人々の逃走をハードなタッチで活写していく、ノイスのパワフルな演出に目を見張る。

 主人公2人が出会った過程などは冒頭の字幕で示すだけで、余計な説明は一切なし。映画はただ彼らの道行きを追い続けることだけに終始し、ラストシーンまで勢いが途切れない。運転席と助手席にいる2人の会話に、後部座席の人々の話し声をわざわざ被せてくる凝った演出も、突き放したクールなリアリティを与えていて効果的だ。『ピクニックatハンギングロック』(1977)の名手ラッセル・ボイドによるカメラワークは、車の中の空間を見事にとらえており、場面によっては手持ちカメラのラフな映像で臨場感を伝える。

 オールロケ撮影で映し出される最も印象的な情景は、アボリジニたちの暮らす居留区の実態だ。入植者に差別され、生活力を奪われていく彼らの過酷な現実を、ノイスは粗暴な白人中年の目を通して突きつける。後にノイスがオーストラリアへ里帰りして撮った『裸足の1500マイル』(2002)に連なる社会派作品であり、また現代(70年代当時)のアボリジニたちの心情を謡ったプロテストソングをちりばめた音楽映画でもある。

 小利口で調子のいいアボリジニ青年を、ギャリー・フォリーが好演。彼は劇中の挿入曲をいくつか手掛けてもいる。口の悪いアウトロー中年をパワフルに演じるのはビル・ハンター。ノイス監督の『ニュースフロント/時代を撮り続けた男たち』(1978)や、最近では『プリシラ』『ミュリエルの結婚』(共に1994)などでもおなじみのオーストラリアを代表する名優だ。

 ざらついたアウトロー映画のタッチと、社会的なテーマが力強く結びついた快作。どこかで「フィリップ・ノイス初期作品特集」なんて組んでくれないものだろうか。


製作・監督/フィリップ・ノイス
脚本/ジョン・エメリー、フィリップ・ノイス
撮影/ラッセル・ボイド
編集/デイヴィッド・ハゲット
出演/ビル・ハンター、ギャリー・フォーリー、ザック・マーティン、テリー・カミレリ、ジュリー・マグレガー

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