Simply Dead

映画の感想文。

『ロング・ウィークエンド』(1978)

『ロング・ウィークエンド』
原題:Long Weekend(1978)

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 1978年にオーストラリアで製作された、一風変わったスリラー映画。アヴォリアッツ国際ファンタスティック映画祭では「黄金のアンテナ賞」を受賞。フィルムセンターの「オーストラリア映画祭」で講演を聴いた際、参考作品として抜粋上映されたので、ビデオで観てみました。

 人里離れた海辺へキャンプに訪れた夫婦が、得体の知れない恐怖にとらわれ、極限状況に追いつめられていくという物語。海外ではカルトムービー化していて、最近アメリカでスペシャルエディション版DVDが発売されました。日本でもかつて大陸書房からビデオが出ていましたが(有り難いことにシネマスコープサイズ収録)、現在は廃盤。

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〈おはなし〉
 倦怠期を迎えたピーターとマルシアの夫婦は、週末の3連休を利用して、海岸に面した森へキャンプに出掛ける。夫は雄大な自然を前にして大はしゃぎだが、アウトドア嫌いの妻は早く帰りたくて仕方がない。そんな状況で、ふたりは異様な気配に気づき始める。海から聞こえる奇妙な鳴き声、静寂とはほど遠い夜……やがて恐怖に駆られた妻は、車を奪って逃げ出してしまう。置き去りにされた夫は、たったひとりで夜を明かす羽目に……。

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 題名になっている「ロング・ウィークエンド」とは、オーストラリアに暮らす現代人特有の強迫観念をさす言葉でもあるとか。大まかに言うと、“都市部で働く社会人たちは、大自然に触れることでリフレッシュしたいという願望(というか固定観念)にとらわれている。「少し足をのばせば雄大な世界が広がっているのだから、そうやってアウトドアライフを満喫してこそ、この国に生まれた意味があるってもんだ」と。しかし、たまの連休に海や平原などへ出かけてみても、自然は思ったほど心を癒すものではなく、逆にストレスを抱えて帰ってくる”……そうしたシニカルな構図を、この映画では徹底的に、それこそ死に至るまで描いています。

 喜び勇んでキャンプにやってきた主人公が、実は自然に対して全く何の理解もなかった、という描写がいちいち痛烈。「意味はないけど木を切ってみる」「何か動いたら撃ってみる」といった一方的な行動を繰り返し、そのくせヘタに野生の動物に手を出して怪我をしたり、夜の暗闇に死ぬほど怯えたり。観客の方は、彼らが勝手な行動をとるたび、いつか酷い目に遭うのではないかとハラハラし続けます。そして最後には、とてつもなく皮肉な結末が……。

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 人間が自然に手痛いしっぺ返しを受けるという物語には、有名なところでアルフレッド・ヒッチコック監督の映画『鳥』(1963)があります。しかし、明らかに敵意をもって人間が攻撃される『鳥』と違って、この作品に出てくる自然は基本的に何もしません。ただ、人間という“異物”が生態系に入り込むことで生じる奇妙な緊迫、不穏なムードばかりが執拗に描かれるだけ。そこが凄い。それだけで、ふたりの登場人物は精神的に追いつめられ、残酷な末路へと導かれていきます。言ってしまえば単に自滅してるだけとも言えるので、映画の内容を説明する時、ちょっと困るんですが(笑)。

 そうした自然に対するオブセッションは、オーストラリアという国では一般的なもののようです。『ピクニック at ハンギングロック』(1976)や『ザ・ラスト・ウェーブ』(1977)といったピーター・ウィアー監督の諸作品群は、その代表例。本作もその系譜に連なる作品ですが、より痛烈で、自嘲的なムードに満ちています。

 神経症、人間関係の溝、自然との対立……「この映画にはオーストラリア映画に特徴的な要素がほとんど全て含まれており、なおかつそれをひっくり返したような構造になっている」と、先述の講演では語られていました。シンプルでありながら、とても奇妙で、なおかつ強烈な作品です。


製作・監督/コリン・エグルストン
脚本/エヴェレット・デ・ロッシュ
撮影/ヴィンセント・モントン
音楽/マイケル・カーロス
出演/ジョン・ハーグリーヴス、ブリオニー・ビーツ

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