Simply Dead

映画の感想文。

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『500万ドルの男』(2012)

『500万ドルの男』(2012)
原題:5백만불의 사나이
英語題:A Millionaire on the Run

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 韓国の大手音楽プロダクション「JYPエンタテインメント」の創立者にして代表であり、歌手としても活動する人気プロデューサー、J.Y. Parkことパク・ジニョンの初主演映画。ふとしたことから500万ドルもの大金を手に入れたエリート会社員が、自分を裏切った上司や暴力団、さらに警察からも追われる羽目になるという典型的な巻き込まれ型アクションコメディだ。日本で言えば、ひと昔前の小室哲哉がスーツ姿でアクション映画に主演したようなもの。こういうイロモノ企画をいまだに結構な予算をかけて作ってしまうあたり、韓国映画界には余裕があるんだなあと思わされる(ごく一部の話だろうけど)。

 監督はこれがデビュー作となるキム・イクロ。脚本は『7級公務員』(2009)のチョン・ソンイルが手がけた。初めからパク・ジニョンを主役に想定して書いたとのことだが、内容を少しいじればイ・ボムスでもカン・ジファンでもRAIN(ピ)でも主演できたような筋立てである。正直もっとアレな出来なんだろうとタカをくくっていたが、思ったほど悪くはなかった。まあ、話には穴があるし、演出にも無理が目立つ(特に上司と対峙するガソリンスタンドのくだりが本当にヒドイ)のだけど、ベタな娯楽作としてはそこそこ楽しめた。

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〈おはなし〉
 大企業の有能なロビイストとして活躍するチェ・ヨンイン(パク・ジニョン)は、上司であるハン常務(チョ・ソンハ)の命令で、取引先に500万ドルの現金を送り届けることになる。その途上、車泥棒に襲われた彼は、現金の入ったカバンごと車を奪われてしまう。が、犯人は直後に事故死。世間ではヨンインが死んだことになってしまった。

 ヨンインはなんとか車とカバンを見つけ出すが、同時に衝撃的な事実も知ることになる。実は、ハン常務は暴力団のボスにヨンインの殺害を依頼し、金を奪おうと画策していたのだ。図らずも、500万ドルの現金を抱えて逃げ回る羽目になったヨンイン。なぜか途中から別のヤクザに追われる不良少女ミリ(ミン・ヒョリン)と行動を共にすることになり、ふたりのハチャメチャな逃避行が幕を開ける。

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 映画はロードムービー形式になっていて、クライマックスは野球フィーバーに沸く釜山が舞台になる。気性の荒いことで知られるロッテ・ジャイアンツの熱狂的ファンがネタになっているのが、なんともおかしかった。釜山にはついこないだ映画祭参加のために行ってきたばかりだし、先日の東京国際映画祭では同じく釜山を舞台にした野球映画の傑作『パーフェクト・ゲーム』(2012)に大感動したばかりだったので、妙なシンクロニシティを感じてしまった。

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 パク・ジニョンといえば、彼がプロデュースする男性アイドルユニット、2PMと2AMのドキュメンタリー『Beyond the ONEDAY 〜Story of 2PM&2AM〜』(2012)にも登場し、強烈なインパクトを放っていたので覚えている方も多いだろう。とにかく顔はでかいし、造作はカンペキに鬼瓦だし、およそハンサムとは言い難い(逆に言えば、それこそ東映とか大映の大部屋俳優に1人はいたようなグッドデザイン賞モノの素敵な顔立ちである)。本人もそのハンデは重々承知のことで、むしろ開き直って有効活用しているようにも見える。実際、映画の中でも「本当に韓国人か?」とか「あの移民野郎」とか言われまくる始末。

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 メディアへの露出も多く、ぺ・ヨンジュンとともに企画・プロデュースしたTVドラマ『ドリームハイ』(2011)にも役者として出演しているので、演技に関してはまるっきり初心者というわけではない。本作でも、目も当てられないような素人芸に苦しめられるおそれはなく、むしろ余計なことをしないよう、つとめて抑えた芝居を貫いている(もっと羽目を外してもよかったのでは? と思うくらい)。日頃のアクの強さを封じているせいか、その朴訥そうな佇まいと、ルックスに似合わぬ美声からは、純真な人柄さえ感じさせる。

 ただ、やっぱり主役としての華には圧倒的に欠ける。たぶん脇役でうまく使えば俄然輝くタイプの人なのだろうけど、顔のインパクトだけで2時間もメインどころとして引っ張るには、まだ素材の味も演技力も熟しきっていない。また、アクションの見せ場がほとんどないのも残念。大体やられ役に甘んじているか、全力で逃げているかのどちらかで、乱闘シーンはスタントまかせで誤魔化しており、能動的な立ち回りをあまり見せてくれない(終盤にちょっとだけあるけど)。しかも、スケジュールが詰まっていたせいか全編出ずっぱりではないので、それこそ成り上がり社長のワンマン映画的なナルシシズムを期待したとしても裏切られてしまう。

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 その代わり、何で補完しているかというと、社長の一声で集まった(?)実力派バイプレイヤーたちのサポートである。『サニー 永遠の仲間たち』の美少女スジことミン・ヒョリンが小悪魔的なヒロインを演じているほか、『火車 HELPLESS』のチョ・ソンハ、『ラブ・フィクション』のチョ・ヒボン、『Hana 〜奇跡の46日間〜』のオ・ジョンセ、『高地戦』のチョ・ジヌン、『黒く濁る村』のキム・ジュンベ、『折れた矢』のイ・ギョンヨンといった錚々たる面子が脇を固めている。新人俳優の主演デビュー作にしては恵まれすぎた顔ぶれだ。

 最大の収穫は、ミン・ヒョリンの堂に入ったコメディエンヌぶりだろう。世のスケベ野郎どもをだまくらかしては金を巻き上げる一方、ジャンベの演奏に情熱を傾けているというスクリューボール系ヒロインが実によく似合っている。『サニー』ではクールな美少女キャラに徹していたが、声のキーが意外に高いので、コミカルな演技もなかなかイケる(ちょっと仲里依紗も思い出させた)。その力量をしっかり証明してみせたという点だけでも、この映画の存在意義は大きい。

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 もちろん、何よりもこれはパク・ジニョンの映画である。ぼくの周りには『Beyond the ONEDAY』を観て、あの鬼瓦フェイスの虜になってしまった人も少なくない。そういう人にとってはたまらない御馳走と言えるだろう。後頭部に一撃食らって景気よくぶっ倒れるJYP、屋台のおばちゃんに恵んでもらったフランクフルトを口いっぱい頬張るJYP、必死の形相でヤクザたちから逃げ回るJYP、ミン・ヒョリンと顔を並べると明らかに遠近感が狂うJYP、バイクにまたがり颯爽と風を切るJYP……見どころは尽きない。「俺、昔は歌手だったんだ」という台詞でも爆笑させてくれる。

 今のところ日本公開の予定はなく、劇場ではさすがにやらないと思うが、DVDリリースぐらいはしてほしいものである。

【2013/11 追記】と、思ったら『ミリオネア・オン・ザ・ラン』という題名で、いつの間にか劇場公開されていた(「K-Movieフェスティバル」の1本)。DVDは2014年2月4日発売。

・Amazon.co.jp
日本版DVD『ミリオネア・オン・ザ・ラン』

・scriptvideo
韓国版DVD『500万ドルの男』(リージョン3・英語字幕つき)

監督/キム・イクロ
脚本/チョン・ソンイル
撮影/イ・イヌォン
音楽/チェ・ミニョン
出演/パク・ジニョン、ミン・ヒョリン、チョ・ソンハ、チョ・ヒボン、オ・ジョンセ、チョ・ジヌン、キム・ジュンベ、イ・ギョンヨン
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