Simply Dead

映画の感想文。

『イントルーダーズ』(2011)

『イントルーダーズ』
原題:Intruders(2011)

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 『28週後…』(2007)のフアン・カルロス・フレスナディージョ監督による、一風変わったファンタジーホラー。スペインとイギリスを舞台に、子供のイマジネーションが生んだ「怪人」(劇中の台詞では“Hollow Face”、つまりカオナシ)が、遠く離れた別々の家庭に恐怖をもたらす。「あらゆる恐怖の正体は、人間の想像力の産物である」という概念を、空想としてでなく「それは実在する」というアプローチで描いた、なかなかの野心作だ。シナリオも凝っており、カメラワークも非常に神経が細かく、フレスナディージョ監督の演出力の高さに改めて感じ入った。

 が、映画としては残念ながら失敗している。やはり舞台をふたつに分け、双方のドラマが同時進行で描かれるという構成がよくない。観客の集中度を著しく殺いでしまうし、ただでさえ曖昧でミステリアスな恐怖の対象がさらにボンヤリしてしまう結果を招いている。作り手の意図は分かるし、オチも狙いどおりに着地できているのだろうが、観ている間はどうしてももどかしさを感じて仕方なかった。

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 いわゆるベッドの下のオバケに代表される「悪い想像」=恐怖の源泉が、時代や国境を越えたコモンセンスとして伝播し、受け継がれていく不思議さ、不気味さ。それが本作のアイディア源であり、ホラー映画としてのテーマでもあるだろう。ただ、シナリオ上のひねりを重視するあまり、もっとシンプルに描けたはずのストーリーが散漫になってしまった感は否めない。作品自体、スペインのスタッフを中心に欧州数カ国で撮ることを前提にしたプロジェクトだったようだが、もう少し別のバランスでも撮りようがあったと思う。

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 作品の善し悪しはともかく、前作とは異なりオリジナル要素の増した今回の映画は、グッとスパニッシュ・ホラー寄りになっていたのが面白かった。ホラーに限らずスペイン映画では、大人には見えない世界の真実、裏側を見ることができる存在として「子供」がフィーチャーされることが多い。『パンズ・ラビリンス』(2006)しかり、『永遠のこどもたち』(2008)しかり、『ブラック・ブレッド』(2010)しかり。「純粋な者」「能力者」である子供たちは、同時に「弱き者」「犠牲者」でもある。本作『イントルーダーズ』でも同様に、闇夜に潜む「悪」を抽象化・具現化する力を持ち、それゆえに闇へと引きずり込まれるものとしての子供が描かれる。さらに、その力に共鳴してしまう大人(親)が、神経症的恐怖に巻き込まれていくという趣向が新鮮だ。

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 キャスティングも含めた俳優への演出の巧さも、やはり『28週後…』同様に際立っている。この監督は、子供を描くのが本当に巧い。イギリス側のヒロイン、ミアを演じるエラ・パーネルの魅力的な表情は、本作最大の見どころと言っても過言ではない。クライヴ・オーウェンは、娘がインターネット詐欺レイプの犠牲者になる『Trust』(2010)に続き、今回も苦悩するパパを熱演。優しい父親役がすっかり板についている。しかし、バスケットボールを頭に見立てたカカシにオイルぶっかけて燃やして、それをあんな至近距離で娘と一緒に眺めるなんていう頭のおかしい行為(ていうか、ボール爆発するんじゃないの?)を平然とやるような親父なので、多分『宇宙戦争』のトム・クルーズぐらいダメな人な気がする。

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 作品としては惜しい仕上がりながら、今後も注目していきたい監督であるという評価は揺るがなかった。ホラー映画ファンならチェックしておきたい作品である。

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監督/フアン・カルロス・フレスナディージョ
脚本/ニコラス・カサリエゴ、ハイメ・マルケス
撮影/エンリケ・シャディアック
編集/ナチョ・ルイス・カピヤス
音楽/ロケ・バニョス
出演/クライヴ・オーウェン、エラ・パーネル、カリス・ファン・ハウテン、ダニエル・ブリュール、ピラール・ロペス・デ・アジャラ
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