Simply Dead

映画の感想文。

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『欲望の沼』(1982)

『欲望の沼』
原題:욕망의 늪(1982)
英語題:The Swamp of Desire

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 70~80年代の韓国映画界を牽引した職人監督イ・ドゥヨンが、メロドラマの女王の異名をもつ人気作家キム・スヒョンのシナリオを得て撮り上げたスリラータッチの愛憎劇。とにかくひたすら気が滅入るようなストーリーで、イ・ドゥヨン監督のフィルモグラフィーの中でも一、二を争うくらい陰々滅々とした作品。公開当時は大コケし、ソウルの劇場でしか上映されなかったという。「TRASH-UP!! vol.7」でイ・ドゥヨン監督の特集記事をやった時点では未見だったが、韓国でもかなりレア度の高い中古ビデオを最近見つけたので、結構な値段だったものの購入して観てみた(本編の途中、電化製品のCMが3回も入ってる凄いテープだった)。

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〈おはなし〉
 二度も夫に先立たれたオンニョ(チャン・ミヒ)は、舅に厄病神となじられ家を追い出され、一人息子のユンスを連れて親戚の暮らす炭鉱村を訪ねる。炭鉱で働き始めたオンニョは、貯炭場の責任者チョ(ユン・イルボン)に目をつけられ、無理やり体を奪われてしまう。それ以来、オンニョはチョにつきまとい、献身的に世話を焼こうとする。が、かつて妻の浮気を目撃してから女性に対して屈折した憎しみを抱くようになったチョは、オンニョを冷たくあしらうばかり。

 ある大雨の夜、オンニョとチョが橋の上にいるとき、チョに惚れている酒場の女チュンジャが食って掛かった。揉み合いの末、チュンジャは橋から落ちて死んでしまう。殺人罪に問われることを恐れたチョは、口封じのためにオンニョとの結婚に同意する。

 チョは、オンニョに対して日常的に暴力を振るい、ユンスを邪魔者扱いし、たびたび家を空けては賭場と酒場に入り浸る。誰にとっても幸福ではない悲惨な生活の中で、ユンスはこの村を出て行こうと母に懇願する。しかし、男に頼るしか女の生きる道はないと信じているオンニョは、聞く耳を持たない。ある夜、悪夢にうなされたオンニョは寝言でチュンジャの死の真相を口走ってしまう。チョはとうとう彼女を事故に見せかけて殺そうとするのだが……。

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 端的に言えば、屈折した異性観・愛情観を抱えた男と女が出会って起こる悲劇、愛情のないままに築かれてしまった家族関係の悲惨さを描いた物語。メロドラマというよりは、昔からあった不幸な家庭のパターンをそのまま見せられているようで、ただひたすら痛々しく暗い。筋立て自体の古くささも否めない。殺人という軸はあるがスリラー要素は薄めで、監督の得意なアクション演出も当然発揮されず。これを娯楽映画として封切った意図がよく分からない、というのが正直な感想である。

 確かに、規制の厳しかった当時の韓国映画としては大胆なベッドシーンや、主演女優チャン・ミヒが披露する美しいヌードなどを見どころにしたエロ映画としての売りは分かる。浮気現場を目撃されたチョの元妻が、全裸のまま草原を逃げるスローモーション映像など、結構力が入っているとも思う。が、何しろ話が陰鬱すぎて欲情するどころではない。ある意味、その徹底ぶりも韓国映画ならではのパワーを感じさせる。

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 主演のチャン・ミヒは、『生死の告白』(1978)のユ・ジイン、『最後の証人』(1980)のチョン・ユニと並んで、当時の韓国映画界を代表する「トロイカ女優」のひとりとして人気を博した。本作では薄幸のヒロインをあまりに見事に演じすぎていて、見ているうちにゲンナリしてくるほど。ハ・ギルジョン監督の『続・星たちの故郷』(1978)で演じた奔放なニンフェット役とは顔つきから何からまるで異なり、女優としての進化ぶりに驚かされる。とはいえ、本作と似た系統の役柄なら、キム・ギヨン監督と組んだ傑作『ヌミ』(1979)のヒロインのほうが断然凄かった。相手役のユン・イルボンは、『草墳』(1977)や『深夜に突然』(1981)でも印象深い演技を見せている名優。歪んだ男の性癖をこれまた見事に演じていて、胃もたれしそうになる。

 スリラーとしても女性ドラマとしても、同じイ・ドゥヨン作品なら『傘の中の三人の女』(1980)のほうに軍配が上がると思うが、何か本作に宿る暗いパッションが一部の人をとらえてやまないのも分かる気がする(実際、この映画を高く評価する人もいるらしい)。本物の炭鉱にロケした映像は雰囲気たっぷり。その土地のムードが、どんづまり感に溢れたドラマをしっかり盛り立てている。撮影を担当したイ・ソンチュンは、イ・ドゥヨン監督の『解決士』(1981)や『愛 ―L'Amour―』(1999)、キム・ギヨン監督の『殺人蝶を追う女』(1978)など数多くの作品を手がけているベテランだ。

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監督/イ・ドゥヨン
脚本/キム・スヒョン
撮影/イ・ソンチュン
音楽/キム・ヒガプ
出演/チャン・ミヒ、ユン・イルボン、パク・ウォンスク、イ・ミンチョル、イ・ヘリョン、チョ・スングァン、イム・ヘリム
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