
シャープな演出、ハードボイルドな語り口に定評のある東宝娯楽映画の異端監督、鈴木英夫の初期作品。シネマアートン下北沢で開催中の特集「監督 鈴木英夫」で観てきました。
山奥から都会に出てきた野生児のような女の子・魔子が、東京で繰り広げる破天荒な活躍を描いたオフビートなドラマ。これがスラップスティック・コメディに展開していけば普通の映画ですが、時に人間の負のドラマがシリアスに描かれ、ダークで突き放した結末を迎えたりと、悲壮感とコミカルさが奇妙なバランスで同居する作品と化しています。全体的にはまとまりきれておらず、お世辞にもうまく出来た映画とは言えませんが。
この作品からすでに、夜の都会の空気が絶品。ちょろまかしがバレたスカウトの森繁が、夜の空き地でヤクザたちにぶちのめされるシーンのスタイリッシュさは、製作年を考えると驚きのクオリティです。的確なアングルとドリー移動、けぶった映像の質感は、完璧にノワールの気分。
前半のあるシーンでは、瞬間的なインサートによる素早いカッティングで、人物の感情を鮮烈に見せようとしてますが、失敗してます。というか、1954年当時でそんな手法に挑んでいること自体が破格。カメラマンとはだいぶ衝突したらしいですが……そういう孤高の姿勢が、なんとなくジャン=ピエール・メルヴィル(フランス映画界最強の映画オタク)を思わせたりしました。
もうひとつ特筆すべきは、役者のディレクションが徹底していること。奔放なヒロインをメカニカルに演じる根岸明美はすこぶる魅力的で、オカマ口調で相手の心の隙につけいる森繁の演技は、言わばスクリューボール・ハードボイルドのかっこよさ。
製作/佐藤一郎
監督/鈴木英夫
原作/宮本幹也
脚本/梅田晴夫
撮影/鈴木斌
美術/北猛夫、村木与四郎
音楽/松井八郎
出演/根岸明美、森繁久彌、加東大介、藤原釜足、藤木悠

