Simply Dead

映画の感想文。

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『完璧な鯛料理』(2005)

『完璧な鯛料理』
原題:완벽한 도미요리(2005)
英語題:The Perfect Fishplate (A.K.A. A Perfect Red Snapper Dish)

perfect-fishplate01.jpg

 『チェイサー』(2008)、『哀しき獣』(2010)のナ・ホンジン監督が2005年に撮り上げた約10分の短編映画。偏執狂的なまでの完璧主義に取り憑かれた若きシェフの悪戦苦闘を、『青春デンデケデケデケ』でおなじみザ・ベンチャーズの名曲「パイプライン」に乗せて、スピーディーかつコミカルに描く。デビュー作からしてすでに卓抜した演出力と完成度の高さを誇っているあたり、ナ・ホンジンという男の怪物ぶりが如実に見て取れるが、それ以上に、のちの監督の作風から考えると「こんなに若々しい映画を作っていた頃もあったのか!」と驚かずにいられない内容。ノリはとことん軽く、かなりブラックとはいえ明快なユーモアに溢れた「若気の至り感」が楽しい作品だ。

 主人公を演じるのは、オムニバス映画『隣りのゾンビ』(2008)のオ・ヨンドゥ監督編「逃げよう」にも主演していたペ・ヨングン。撮影・照明は『チェイサー』と『哀しき獣』でも組むイ・ソンジェが手がけ、ムーディーで艶のある映像を創り出している。

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〈おはなし〉
 厨房でグースカ居眠りしている、ひとりの若い料理人(ペ・ヨングン)。そこに「完璧な鯛料理」というオーダーが入る。やる気に燃える料理人は、緻密な調理の公式を書き出し、食材も手間も惜しまず、究極の美食作りにのめり込む。ところが、彼は大変な完璧主義者であるだけでなく、救いがたいドジでもあったのだ……。

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 台詞を一切排し、調理過程のアクションや予想外のトラブルを歯切れのいいカッティングでテンポよく見せる演出が心地好い。時折「繰り返し」の動作や構図を効果的に織り込みながら巧みに見せていく手法には、アニメ的なセンスも感じられる。細かなディテール描写も、いちいち巧い。ウェイトレスの女性が主人公にオーダーを伝える冒頭の場面で、小さな窓口から女の手がにゅっと伸びて呼び鈴をまさぐるという撮り方が、実に不気味かつヤラしくてイイ。短編映画の掴みとしては100点だ。

 途中で主人公が指を切り落としてしまったり、片目を失ってしまったりする暴力的かつ悪趣味なギャグには、今の僕らが知るナ・ホンジンらしさを分かりやすく感じることができる。どこかホラー映画めいたムードが漂う美術の過剰な作り込みにも、その「場」の空気感を醸成することにこだわる作風がすでに健在だ。ただ、肝心の料理がそれほど美味そうに見えないのがタマにキズ。その辺はアン・リーの『恋人たちの食卓』(1994)ぐらいのレベルを目指してほしかった(あれは見た目優先で実際は全然食えなかったらしいけど)。

 この作品は第4回ミジャンセン短編映画祭「絶対悪夢」部門グランプリという栄誉を勝ち取ったほか、ハワイ国際映画祭、RESFEST 2006、インターフィルム・ベルリン国際短編映画祭など、海外の映画祭でも頻繁に上映された。日本でもRESFESTの1プログラム「SHORTS ONE」で上映されている。続く2本目の短編『汗』(2007)も高く評価されたナ・ホンジンは、各映画会社の注目の的となり、間もなく衝撃作『チェイサー』で長編デビューを果たすことになる。ちなみに『完璧な鯛料理』本編の映像は原題でググれば意外と簡単に見つかる(たとえばココ)。台詞はなく無字幕でも楽しめるので、興味がある方は観てほしい。


監督・脚本/ナ・ホンジン
撮影・照明/イ・ソンジェ
編集/チョン・ユジン
美術/ユ・ジエ
出演/ペ・ヨングン、イ・ジェス、イ・スヨン
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