原題:The Ice Harvest(2005)

〈おはなし〉
凍てつく寒さのほかには何もない、田舎町のクリスマス・イヴ。ギャングのお抱え弁護士チャーリー(ジョン・キューザック)は、ストリップバーの経営者ヴィク(ビリー・ボブ・ソーントン)と共謀し、雇い主から大金を盗み出す。チャーリーはヴィクと同業のクールな美女レナータ(コニー・ニールセン)と共に、町を脱出しようと画策するが、金を預けたはずのヴィクが姿を消した……。そして、イヴの長い夜が幕を開ける。
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寒風吹き荒ぶカンザス州ウィチタを舞台に描く、アメリカン・ノワール(またはノエル・ノワール?)の小品。原作はスコット・フィリップスの小説『氷の収穫』。ハードボイルド・ドラマの秀作『トワイライト』(1998)を生んだロバート・ベントンとリチャード・ルッソが共同でシナリオを書き上げ、『アナライズ・ミー』(1999)などコメディ作品を得意とするハロルド・ライミスが監督を務めた。
辛辣な裏切りのドラマと、コミカルなタッチが微妙な振幅を守り続ける。そのソツのない演出は、原作者も納得のアプローチだそうだが、映画としてはパンチに欠ける仕上がり。でも、人生の苦渋をペーソス豊かに描いた部分には味がある。ひと捻りある楽天的な結末も、とぼけた感じでいい。案の定、ノワール法則に忠実な別エンディングも撮られていて、DVDには特典として2タイプのラストを収録。しかし、やっぱりロバート・ベントンの渋い演出で観たかった気もする。
原作は「あまりにも冷たく野蛮なサスペンス」という冠のつく内容らしいが、映画自体はいたってマイルドな印象。基本的に品のない台詞のやりとりも、字幕で観る分には大したことない。小説だと赤裸々な心象語りやら過激な台詞回しやらが強烈な印象を残すのだろうけど、映画にしてみるとそうでもない、という典型的な例だろう。登場人物が行く先々で目にする落書きの一文が効果的に使われていて、いかにもノワール小説らしくていいな、と思ったら映画オリジナルのアイデアと聞いて驚いた。
ジョン・キューザックが浅はかで情けない主人公を好演。足の甲をナイフで刺される激痛芝居がリアルで素晴らしかった。オリヴァー・プラットが友人で元妻の夫という儲け役をコミカルに演じ、とりわけ光っている。やっぱり監督が喜劇畑寄りだからか。
アラー・キヴィロによる撮影がとても美しい。深みのある青は、カラーノワールとしては最高水準。

監督/ハロルド・ライミス
原作/スコット・フィリップス
脚本/リチャード・ルッソ、ロバート・ベントン
撮影/アラー・キヴィロ
出演/ジョン・キューザック、ビリー・ボブ・ソーントン、コニー・ニールセン、オリヴァー・プラット、マイク・スター、ランディ・クエイド

