Simply Dead

映画の感想文。

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『明洞卒業生』(1971)

『明洞卒業生』
原題:명동 졸업생(1971)
英語題:The Graduation from Myeongdong

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 流行の最先端を行くソウルいちの繁華街・明洞にやってきた田舎者コンビが、ヤクザ相手に大立ち回りを繰り広げる痛快アクションコメディ。パク・ノシクとイ・デヨプのコミカルな掛け合いが楽しい、いわゆる「明洞もの」の1本だ。監督は、重厚な文芸作からホステス映画まで、ありとあらゆるジャンルにわたって撮りまくった職人、コ・ヨンナム。

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〈おはなし〉
 全羅南道の港町・木浦に暮らす恐妻家のチョンドル(パク・ノシク)は、口うるさい妻の小言や子供の世話から逃れるため、釜山に住む友人キョンテク(イ・デヨプ)の家を訪ねる。が、そこにもやたらと厳しい姑が君臨していて、くつろげる雰囲気ではなかった。そこでふたりは兄貴分のミョンナム(ナムグン・ウォン)に会いに、ソウルの明洞へ向かうことにする。

 ミョンナムの妻ジョンヒ(サ・ミジャ)は明洞でバーを営んでいたが、ここ最近、店では暴力団のヨン・ドクチョン一味が好き放題に振る舞っていた。怒ったミョンナムはドクチョンの事務所へ直談判に向かうが、逆に目をつけられ、鉄砲玉のチンピラに刺されてしまう。奇しくも、そのチンピラは日頃からミョンナムが親切にしていた病弱なおばあさんの息子だった。チンピラは倉庫に身を隠すよう組に命じられるが、口封じのため仲間に嬲り殺されそうになる。

 怒り心頭のチョンドルとキョンテクは、ふたりでドクチョン一味の縄張りに殴り込んで大暴れ。そして倉庫に幽閉されていた瀕死のチンピラを助け出す。病に臥せっていたおばあさんは息子と再会し、息を引き取るのだった。一方、ドクチョンは流れ者のチュンボク(オ・ジミョン)を用心棒に雇い、チョンドルとキョンテを始末するよう依頼。そして、ジョンヒを誘拐してしまう。チョンドルとキョンテクは彼女を救い出すため敵の巣窟に忍び込むが、あえなく捕らえられてしまう……。

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 見どころはやはりパク・ノシクの乗りに乗った芝居に尽きる。大衆に愛される茶目っ気=スター性を全身から発している彼の姿を見ているだけで、とにかく楽しい。といっても別に昔からこういう役ばかり演っていたわけではなく、本来は他の韓国映画黄金期のスター男優たちと同じく、幅広い役柄をこなす実力派俳優である。そんなにたくさん観ているわけではないけれど、シン・サンオク監督の傑作『内侍』(1968)で演じた内侍官役は非常にかっこよくて印象的だった(イ・ドゥヨンが監督した86年のリメイク版では、ナムグン・ウォンが演じた)。いちど当たり役に出会うと、似たような役ばかり演じる羽目になるのが世の常だが、パク・ノシクもそれを憂鬱に感じたことがあったのだろうか? 少なくとも本作の彼はそういった気配をみじんも感じさせない。迷いなく、嬉々としてコミカルな役柄を楽しんでいる。

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 もはや完全に吉幾三にしか見えないパク・ノシクと、イ・デヨプのおのぼりさんコンビが街中で大乱闘、というシチュエーションを観ているだけで、えもいわれぬ安心感と幸福感に包まれてしまう。土産に持ってきた魚の干物と味噌瓶と生卵を武器にしてチンピラと戦ったり、カバンを盗んだ泥棒と安宿でバッタリ出くわして大喧嘩になったり、ナイトクラブに行って「テーブルチャージってなんだ?」「椅子に座らなきゃ金払わんでもよかんべ」とかいって立ったまま飲み始めたり、いちいちベタだけど面白い。

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 それにしても相変わらずKMDBに記載されているあらすじと、実際のストーリーが全然違うのには驚かされる。が、内容自体は特に目新しくもない王道のアクションコメディなので、なんの予備知識なく観てもまったく差し支えない。字幕なしで漫然と眺めているだけでも大筋は頭のなかに入ってくる。とはいえ、芸の細かい部分もちゃんとある。ナムグン・ウォンを刺してしまう鉄砲玉のチンピラに、露天商をしている病弱な母親がいて、実は彼女が普段からナムグン・ウォンの世話になっていた……という設定は、ドラマとしてなかなかよくできている。オ・ジミョン扮する流れ者のミステリアスな存在感もいい。

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 コ・ヨンナムという監督は多作なだけあって映画の出来にムラがあるのだが、この映画はどちらかというと「当たり」の部類(無字幕で観たので、なんとなくだけど)。テンポもよく、最初から最後まで飽きさせない良質の娯楽作だ。『八道の男』(1969)などのキム・ヒョチョン監督が、良く言えばクラシックで端正なドラマ作りで活劇を料理しているのとは違い、こちらは職人的演出の中にもドライな遊び心が滲んでいて快い。荒っぽい手持ちの斜めアングルなど、洗練はないがケレン味のあるカメラワークや、クラブの場面での原色照明を大胆に配した色遣いにも、若々しい才気が感じられる。若手女優陣のキャスティングにも、作り手のスケベ心が伝わる感じがしてナイス(特に、チンピラの恋人を演じるチェ・インスクの美しさが際立っている)。

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 デビュー時には才気溢れる俊英として注目を集めながら、いつしか量産型の娯楽職人に徹するようになり、結果的に「巨匠」になりそこね、忘れ去られてしまった監督というイメージがあるコ・ヨンナム。やる気のないアクション活劇『毒蛇』(1975)とか気取りすぎのメロドラマスリラー『罠の女』(1985)に関しては「うーん」だけど、異色のエロティックホラー『深夜に突然』(1981)や、骨太の社会派ポリスアクション『処刑警察/コリアン・コネクション』(1990)など、快作・秀作も少なくない。代表作といわれる『夕立』(1978)も、近年、韓国映像資料院からDVDが発売された。いつか掘り下げてみたい監督ではある。

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 これもKMDB(韓国映画データベース)の月替わり無料動画配信コーナーの特集「ギャングスター映画の情熱的な男たち」で観たのだけど、なんとラスト1巻分(約8分ほど)にわたって、いきなり音声のみ・黒味画面だけになってしまう。おそらく映像部分の損傷が激しすぎて音声トラックしかマトモなかたちで残っていないということなのだろうけど、どんなに状態が酷くても画は映してほしかった(そんなに正視に耐えない状態ってこと?)。まあ、たぶん「ボカスカ殴り合って、一件落着して、めでたしめでたしのエピローグがあって、でもやっぱり女房は恐い!」みたいな展開だとは容易に想像できる。ただ、ろくに台詞も分からぬままに画だけで内容を類推している身としては、ややつらいものがあった。


監督/コ・ヨンナム
脚本/カン・チョウォン
撮影/イ・ソッキ
音楽/イ・ボンジョ
出演/パク・ノシク、イ・デヨプ、ナムグン・ウォン、オ・ジミョン、サ・ミジャ、チョン・ヘソン、チャン・ヒョク、パク・ヨンデ、チェ・インスク、オ・キュンア
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