Simply Dead

映画の感想文。

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『明洞に流れた歳月』(1971)

『明洞に流れた歳月』
原題:명동에 흐르는 세월(1971)
英語題:Time on Myungdong

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 60~70年代の韓国で数多く作られた「明洞もの」は、ソウルの繁華街・明洞(ミョンドン)を舞台にタフガイたちの活躍を描いた犯罪活劇ジャンルのひとつ。前回書いた『八道の男』(1969)のキム・ヒョチョンが監督・脚本をつとめ、チャン・ドンフィとパク・ノシクがW主演した本作も、その流れを汲む1本だ。これもKMDB(韓国映画データベース)の月替わり無料動画配信コーナーの特集「ギャングスター映画の情熱的な男たち」で観た。基本的にKMDBはノートリミング版で配信してくれるが、本作は素材がないせいかTVサイズのトリミング版だった(画質は良好)。

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〈おはなし〉
 解放後の動乱期、義兄弟の契りを結んだカンニョン(チャン・ドンフィ)たちは、国防部警備隊の特攻隊に加わってパルチザン(共産ゲリラ)との死闘に身を投じる。8人いた仲間のうち、最後まで生き延びたのはカンニョンとチョンダル(パク・ノシク)だけであった。ふたりはカンニョンの恋人(ユン・ジョンヒ)が働く明洞のバーで苦い祝杯をあげたあと、それぞれの道を歩むことに。チョンダルは新妻(キム・ナニョン)を連れて全羅南道・和順へ里帰りし、カンニョンは恋人と明洞に残る。

 ある日、チョンダルは魅力的なマダム(キム・ジミ)が営む地元のナイトクラブで、無礼なチンピラどもを叩きのめす。それがきっかけで、彼は炭鉱町に小学校を建設しようとする青年教師(チェ・ムリョン)たちと暴力団とのいざこざに巻き込まれることに。その裏には、かつてカンニョンたちが取り逃がしたパルチザンの頭目、ダクプリ(ファン・ヘ)が関わっていた。チョンダルは青年教師と手を組み、陰険な暴力団に真っ向から立ち向かう。ことの顛末を手紙で知ったカンニョンも和順に駆けつけ、力を合わせて敵を見事に撃退するのだった。

 勝利の美酒に酔うカンニョンとチョンダル、そして彼らの妻たち。そこへ、チョンダルの老母と妹がダクプリに惨殺されたという報せが。ふたりの怒りは頂点に達し、木浦港から済州行きの船で逃げようとするタクブリ一味をすぐさま追跡。そして、海上で血で血を洗う死闘が繰り広げられ、ついに彼らは暴力団を壊滅させるに至った。

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 映画は現在(1971年当時)の活気に溢れた明洞の街並みを映すところから始まる。そこに「すっかり様変わりしよったのう」的なモノローグが被さり、年老いた主人公たちが登場。それぞれに穏やかな生活を送っている彼らが過去を振り返るというかたちで、物語が幕を開ける。キム・ヒョチョン監督は、日帝時代や解放後の動乱期など、朝鮮人民にとっては決して幸福ではなかった時代においても、そこにノスタルジックな要素を見いだし、大衆の郷愁をさそう術を心得ていたように思える。そのなかで男たちの友情や、家族の絆のドラマを情感豊かに描くのが、得意でもあり好みだったようだ。

 タイトルには「明洞」とついているものの、主軸となるのはパク・ノシク演じるコメディリリーフ的キャラクターのチョンダルが、全羅南道の地元でいざこざに巻き込まれるというストーリー(だから、実のところ明洞はあまり関係ない)。本作はチャン・ドンフィとパク・ノシクのW主演という体裁になっているが、出番は明らかに後者のほうが多い。大衆に愛される茶目っ気に溢れ、物語をパワフルに牽引する力があるのは、やはりパク・ノシクのほうだろう。アクションの見栄えも断然いい。一方で、チャン・ドンフィは少ない出番でも大スターとしての貫禄を示し、観客に強い印象を残すことができる。その配分がなかなかに絶妙だ。

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 豪華女優陣の共演も見どころだ。ナイトクラブのマダムを艶やかに演じる大女優キム・ジミと、カンニョンの妻役のユン・ジョンヒが、ふたりで映画のテーマソングを歌う場面はなかなかゴージャス。ただしデュエットではなく、ふたりが1番と2番を交互に歌うだけなので、片方が歌っている間にもうひとりが所在なさげに傍らで笑っているしかない姿が何とも言えずおかしい(もうちょっと工夫のしようがあるだろ!)。しかし、いちばん魅力的なのはチョンダルの妻をコミカルに演じたキム・ナニョン。表情豊かでのびのびとした芝居が素晴らしく、パク・ノシクとの掛け合いも楽しい。夫の帰りが遅いため、キム・ジミの店へ怒鳴り込む場面のおかしさも絶品だ。

 主人公たちのかつての戦友役として、アクション俳優のトッコ・ソンらが一瞬だけ回想シーンに特別出演している。あとで再登場するのかと思ったら、本当に一瞬だけだった。暴力団と戦う運動家を演じるのは、50年代から活躍する人気男優チェ・ムリョン。また、『長雨』(1979)や『避幕』(1980)など、数多くの名作に出演している名脇役女優ファン・ジョンスンも、チョンダルの母親役で顔を見せている。

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 見せ場となるアクションシーンは、集団戦がメイン。中盤、白昼の鉱山で行われる数十人の暴力団とのバトルでは、竹の棒を使ったアクションが展開(とはいっても華麗な棒術とかを使うわけではなく、単なるドツキ合いだけど)。そして、終盤では船上を舞台に、長ドスやらロープやらを振り回しての大乱戦が繰り広げられる。パク・ノシクが怒りに満ちた表情で刀を構える姿は、任侠映画のヒーローそのもので実にカッコいい。ちなみに、悪の親玉ファン・ヘが乗っている船の名前が「黄海号」という、脱力必至のお遊びもあり(ファン・ヘの漢字表記は「黄海」)。

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 パク・ノシクがナイトクラブで坊主頭のチンピラ3人組を叩きのめすシーンも面白い。テーブルの上に椅子を置き、気絶寸前のチンピラたちを殴り飛ばしてその上に座らせてしまうという、荒唐無稽かつダイナミックなアクションが特に印象的だ。こういうケレン味に溢れた描写は『八道の男』には見られなかったものだ。

 映画の結末を飾るのは、年老いたカンニョンとチョンダル夫妻が再会し、今は小学校の校長先生になった青年教師と、その妻になったマダムを祝う会に列席するという、味わい深いエピローグ。韓国映画黄金期を支えた味のある名優たちは、いつでも簡単なメイクで自然に老け役になりきることができた。いい時代である。

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監督・脚本/キム・ヒョチョン
撮影/ピョン・インジプ
照明/キム・テソン
音楽/チョン・ジョンクン
編集/チャン・ヒョンス
出演/チャン・ドンフィ、パク・ノシク、チェ・ムリョン、キム・ジミ、ユン・ジョンヒ、キム・ナニョン、ファン・ジョンスン、ファン・ヘ
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