Simply Dead

映画の感想文。

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『Les Magiciens』(1976)

『Les Magiciens』(1976)
英語題:Death Rite

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 ロミー・シュナイダーとロッド・スタイガーが共演した愛憎スリラーの秀作『汚れた手をした無実の人々』(1975)を最後に、クロード・シャブロル監督と製作者アンドレ・ジェノーヴェは、そのコラボレーションに終止符を打つ。その後、シャブロルは間髪入れず、フレデリック・ダール原作の『Les Magiciens』の映画化に参加。彼のフィルモグラフィーのなかでも特に無視されがちな1本で、本人も出来に満足していないらしく、実際どこか雑な作りが目立つ作品だ。とはいえ、「予知能力」をモチーフにした風変わりな愛憎スリラーという内容は、それだけでなかなか興味深いものではある。

 伊・仏・西独の合作で、オール・チュニジア・ロケ、しかも各国の有名俳優を無理やり集結させた企画先行型の作品だけあって、あまり自由が利かなかったのかもしれない(あるいはバカンス気分に呑まれて集中力がもたなかったのか)。いつもの緊密な編集スタイルが活かされていない感は否めないが、もしかしたら各国公開用にバージョン違いがあり、バージョンによっては監督自身が編集作業にタッチしていない可能性もある。ちなみに、ぼくが観たのは英語吹き替え版だった。そのあたりの詳しいことは、近日発売されるインタビュー本「不完全さの醍醐味――クロード・シャブロルとの対話」(清流出版)で語られているかもしれない。凄く楽しみ。

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〈おはなし〉
 チュニジアの高級ホテルにやってきた、サドリーとシルヴィア夫妻(フランコ・ネロ、ステファニア・サンドレッリ)。妻への愛情が完全に冷めきっているサドリーは、そこで偶然かつての恋人マルティーヌ(ギラ・フォン・ヴァイターシュハウゼン)と再会し、ふたりの仲は再燃する。一方、同じホテルに泊まっている老マジシャン(ゲルト・フレーべ)は、実は予知能力者でもあった。彼は砂浜で何者かに殺される女性の姿を幻視する。その話を聞いた旅行者エドゥアルド(ジャン・ロシュフォール)は、彼の予知したイメージを実現に導くため、サドリー夫妻に接近。言葉巧みに彼らの未来に待ち受ける「運命」に向けて、周到にセッティングを整えていく。そして、ついに夫の不貞を知った妻シルヴィアのとった行動とは……?

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 フェイタルな三角関係の愛憎劇と、その結末を予見する男、それを自ら操作しようとする男。主観と客観がひとつのドラマ内でトリッキーに交錯しながら、物語は「予見された結末」へと突き進む。実にシャブロル的な主題であり、実際には予想を覆すエンディングが待ち受けながらも、その余韻は紛れもないシャブロルらしさに溢れている。

 ゲームを楽しむように夫婦関係に介入し、血塗られた破局に向かって彼らを操ろうとする謎の男エドゥアルドを、ジャン・ロシュフォールがのびのびと快演。その飄々とした悪意は、まさにシャブロルの好むところだろう。彼の演じるマニピュレーター(操作者)とはつまり監督自身の姿でもある。嬉々として他人の破滅の段取りをセッティングしていくエドゥアルドの存在には、これまで様々な「愛の悲劇」を作ってきたシャブロル本人の悦びがそのまま投影されているのではないか。ちなみに、シャブロルを敬愛するマイク・ホッジス監督も、そのものズバリ『The Manipulators』(1972)というTV作品を撮っている。

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 しかし、この映画の最大の欠点は、他の登場人物に対する作り手の興味のなさが、あまりにあからさま過ぎることだ。フランコ・ネロは終始、居心地が悪そうなオーラを発していて、笑ってしまうくらいである。ちょっとバカっぽい妻を演じるステファニア・サンドレッリは、まあ頑張ってるとは言える(彼女がホテルの部屋で、夫にもらった土産物の陶器を化粧台から落とすか、落とさないかのバランスで弄び続けるシーンが印象的だ)。明るい陽光に溢れ、広大な砂地と白壁の建物に囲まれた、異国情緒たっぷりの情景をバックにした画面にも、緊張感がまるで感じられない。常連カメラマンのジャン・ラビエも、このロケーションをどうしたものか頭を抱えてしまったのではないだろうか。

 シャブロル作品の中では上出来とは言いがたい作品だが、最後まで観ればそれなりの満足感は与えてくれる。エンディングで『破局』(1970)を思い出す人もいるのではないだろうか。翌年に撮り上げた怪作『ブルース・ダーンのザ・ツイスト』(1977)にも通じる、奇妙な味わいのブラックコメディとして観るのが正しい。

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 脚色を手がけたのは、ポール・ジェゴフ。シャブロルとのコラボレーションは『いとこ同志』(1959)に始まり、『殺意』(1967)、『女鹿』(1968)、『野獣死すべし』(1969)、『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』(1972)と、そのキャリアの初期から絶頂期まで彼の作品を支え続けた。ジェゴフ自ら主演俳優を務め、当時の妻や実の娘とも共演した『Une Partie de Plaisir』(1975)は、ふたりの共犯関係が生んだ究極の傑作である。そして、本作『Les Magiciens』を最後に、彼らはコンビを解消。ジェゴフは1983年にノルウェーで2人目の妻に刺殺され、61歳で世を去った。

 また、プロデューサーのひとりとして名を連ねているフランス系チュニジア人のタラク・ベン・アマールは、その後『モンティ・パイソン/ライフ・オブ・ブライアン』(1979)や『レイダース/失われた聖櫃〈アーク〉』(1981)などのチュニジア・ロケをコーディネート。プロデューサーとしては『ポランスキーのパイレーツ』(1986)や、『ファム・ファタール』(2002)、『ハンニバル・ライジング』(2007)といった作品を手がけている。近年はワインスタイン・カンパニーで働いているらしい。


監督/クロード・シャブロル
原作/フレデリック・ダール
脚本/クロード・シャブロル、ポール・ジェゴフ
撮影/ジャン・ラビエ
出演/フランコ・ネロ、ステファニア・サンドレッリ、ジャン・ロシュフォール、ゲルト・フレーべ、ギラ・フォン・ヴァイターシュハウゼン
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コメント

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はじめまして。ツイッターもフォローさせていただいたHKといいます。『キラー・インサイド・ミー』の記事読んでコチラにコメントさせてください。
岡本さんのレア映画の記事が大好きで、いつも参考にさせて貰っています。マイク・ホッジスは元より『秘密組織』や『男の傷』など取り上げる映画がツボ過ぎる(笑)。
シャブロルのマイナー作も全貌知れてよかったです。
今後もいろいろ教えてください。
『ゼロ年代日本映画』はまだアマゾンから届きませんが、楽しみにしています

  • 2011/04/23(土) 11:20:55 |
  • URL |
  • HK #-
  • [ 編集]

はじめまして。コメントありがとうございます。
もう、読んでいただいてるだけで恐縮です……。
HKさんも相当な数の映画をご覧になられてますよね。しかもセレクトがことごとく渋いというか、狙いが正確というか。ぼくも参考にさせていただきます。ルメットの旧作もいつか掘っていきたいんですよね。
次の「TRASH-UP!!」でもシャブロルについて書く予定です。ご期待ください!

  • 2011/04/24(日) 15:45:54 |
  • URL |
  • グランバダ #h1buydM2
  • [ 編集]

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