Simply Dead

映画の感想文。

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『Chez Maupassant/La Parure』(2007)

『Chez Maupassant/La Parure』(2007)

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 「Chez Maupassant」(2007?2008)は、19世紀の文豪ギィ・ド・モーパッサンの中短編小説を映像化したTVドラマシリーズ。クロード・シャブロル監督は、その第1シリーズで本作『La parure(首飾り)』を、そして第2シリーズでは『Le petit fût(酒樽)』を演出。どちらも30分の短編である。第1シリーズは日本でもBS日テレ、シネフィルイマジカなどで放映されたらしいが、「モーパッサン・ブラン」とか「モーパッサン劇場」とか番組表記がいろいろあるので、とりあえず本稿のタイトルは原題に合わせた。

 冷徹な観察眼をもって、時にユーモラスに、時に鬼気迫る筆致で人生の悲喜劇を描いたモーパッサンの世界は、シャブロルの作風ともぴったり合致する。『首飾り』は、ある女性の虚栄心が取り返しのつかない事態を招く、悲しくもおかしい物語である。主演は『モンテーニュ通りのカフェ』(2006)や『ヒアアフター』(2010)のセシル・ド・フランス。

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〈おはなし〉
 花の都・パリ。若く美しい人妻マティルド(セシル・ド・フランス)は、上流階級の豪華で贅沢な暮らしに憧れながら、地味で冴えない日常を送っていた。下級官吏の夫シャルル(トーマス・シャブロル)の稼ぎでは、そんな生活は夢のまた夢である。ある時、シャルルは愛する妻を喜ばせようと、舞踏会の招待状を手に入れる。しかし、マティルドは華やかな場所に着ていくドレスも、美しいアクセサリーも持っていなかった。そこで夫妻は奮発して高価なドレスを購入。裕福な友人ジャンヌ(シャルリ・フーケ)からダイヤの首飾りを借り、念願の舞踏会へと出かける。周囲の視線を一身に集め、夢のようなひと時を過ごすマティルド。

 その帰り道、ふたりは首飾りをどこかでなくしたことに気付く。慌てて探しまわるものの、まったく見つからずじまい。夫婦は悩んだ挙げ句、同じ首飾りを買い直し、こっそり持ち主に返すことを決める。思いがけず大変な借金を背負ってしまった彼らは、女中に暇を出し、昼も夜も内職に明け暮れる極貧生活に突入。苦しい毎日の中で、マティルドはだんだんとやつれていき、いつしか老婆のような姿になってしまった。そして10年後、ようやく借金も返し終わるかという時、マティルドはかつて首飾りを借りた友人ジャンヌと再会。そこで彼女は驚愕の事実を知るのだった……。

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 深刻に描こうと思えばどこまでも悲惨になる話を、シャブロルは原作の筆致そのままに、小気味良く軽妙なタッチで描いていく。辛辣なシニシズムと、キャラクターへの愛情との間で、適度な距離感を保ちながら、不幸のどん底へ転げ落ちていく対象とダンスを踊るような態度が魅力的だ。それは監督と原作者が共有するセンスそのものだろう。

 カメラも若々しく動くが、あくまで人物の動きを効率よくフレームに収めるための映像設計であり、余計なことはしない。人物がフレームインする際の歯切れよさも印象的だ。かと思えば、舞踏会のシーンでは、喜びに満ちたヒロインの顔を真正面からのアップで捉えた大胆な構図から、そのまま踊り始める彼女の姿をミディアムサイズで追っていくという「スパイク・リーかよ!」と思うようなショットもあったりして、その茶目っ気に驚かされる。劇場作品ではあまりやらないような演出も、TVではやっていたんだなあ、と思った(でも、そんな瑞々しいショットの直後に、片脚を失った傷痍軍人らしき男の姿をわざわざ映すあたりがシャブロルらしい)。そして、この真正面からのヒロインのアップショットが、後半でちゃんと活きてくるのである。

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 この話で特にネックとなるのが、借金を背負って生活がどんどん苦しくなり、ヒロインがやがて老婆のように変わり果ててしまうというくだり。文章なら簡単に書けるかもしれないが、映像では何年もの時間経過を表現しなければならないシークェンスである。それをシャブロルは、ヒロインが1本の路地を行ったり来たりするうちに容姿が変わっていくというモンタージュによって、見事に表現している。巧みなメイクアップによって、凄まじい勢いで老け込むセシル・ド・フランスの変貌ぶりも凄い。

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 主演のセシル・ド・フランスは、少女っぽい純真さとわがままさを滲ませるキャラクターとして、愚かだが愛らしいヒロイン・マティルドを好演。泣きわめいたり驚いたりする感情的な芝居も、余分なものを削ぎ落とすシャブロル流の演出を感じさせるもので、彼女もそれにうまく応えている(特に、中盤で首飾りをなくした時に見せる驚きの芝居がキュートで素晴らしい)。先述したように後半の老けメイクも手加減なしの作り込みよう。強烈なインパクトをもたらすラストカットでは、巨匠シャブロルの悪意に応えようとする誠実な女優魂を見る思いがした。どこかイザベル・ユペールとも面影が重なる彼女の主演で、1本ぐらい長編映画を撮ってほしかった気もする。

 また、夫シャルルに扮するのは監督の息子トーマス・シャブロル。父の好みを熟知しているかのような、感情表現を最小限に抑えつつもユーモラスな芝居で、実直だが面白みのない男を妙演。なんとなく『青髭』(1962)の主人公シャルル・デネルに似てる?

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DVD「Chez Maupassant Vol.1」(フランス盤・PAL)

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本「モーパッサン短編集 II」(新潮文庫) ※原作短編「首飾り」収録


監督/クロード・シャブロル
原作/ギィ・ド・モーパッサン
脚本・台詞/ジェラール・ジュールドゥイ、ジャック・サンタマリア
撮影/ロベルト・ベンチュリ
出演/セシル・ド・フランス、トーマス・シャブロル、シャルリ・フーケ、ジャック・ブデ
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