Simply Dead

映画の感想文。

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『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』(1972)

『ジャン=ポール・ベルモンドの交換結婚』
原題:Docteur Popaul(1972)

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 製作者アンドレ・ジェノーヴェと組んだ『女鹿』(1968)から『汚れた手をした無実の人々』(1975)までをクロード・シャブロルの絶頂期と考えたとして、いちばんヘンテコな1本を挙げるとするなら、やはりこの映画しかないだろう。フランス映画界を代表する大スター、ジャン=ポール・ベルモンドが人でなしの女たらしを演じるシニカル&アモラルな艶笑喜劇であり、心底ぞっとするスリラーでもある。もちろん絶頂期の作品だからすっごく面白いんだけど、ホントに性格が悪いにもほどがあるギャグが続出するため、特に女性の方は気をつけてご覧いただきたい作品ではある。

 原作はユベール・モンテイエの小説『殺しは時間をかけて』。脚色と台詞は、『いとこ同志』(1959)から『Les Magiciens』(1976)まで、シャブロルの初期?中期を支えた盟友ポール・ジェゴフが手がけた。

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〈おはなし〉
 付き合うならブスがいいと決めているプレイボーイのポール医師(ベルモンド)は、友人たちと「誰がいちばんのブスと付き合ったか」という賭けをし、見事に優勝。賞金でチュニジア旅行に出かけた彼は、そこで理想の不美人クリスティーヌ(ミア・ファロー)と出会い、巧みに口説き落とす。1年後、ポールはクリスティーヌと結婚。彼女の父親のおかげで郊外の病院の院長にまで収まり、まんまと最高の生活を手に入れた。が、そんな時にポールは今までまったく興味がなかったはずの「美女」に惚れてしまう。それはクリスティーヌの妹マルティーヌ(ラウラ・アントネッリ)であった。

 セクシーだが少し頭のキレが悪いマルティーヌは、男選びのセンスもなかった。彼女と付き合うイモ野郎どもに嫉妬したポールは、彼女が婚約するたびに相手を亡き者にすることに血道を上げる。そして、邪魔者があらかた姿を消した頃、とうとう直接アプローチ。愛しのマルティーヌを我が物にするため、ポールは医者の特権を活かして細工を施し、彼女を妊娠・出産させてしまった。それからあっという間に4年の歳月が経過。真相を知ったクリスティーヌは、恐ろしい制裁をポールに用意していた……。

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 ジャン=ポール・ベルモンドは『二重の鍵』(1959)から13年ぶりにシャブロル作品に出演し、世の女性ファンにドン引きされそうなキャラクターを嬉々として快演。ブス専プレイボーイという設定は一部に夢を与えるからいいとして(?)、途中であっさり美女に乗り換えるわ、自分の身勝手で不倫相手をだまして妊娠させるわ、ホントに最低。それでもどこか憎めない……とはやっぱり言えないくらいギリギリの人物像である。それが、映画だからこそ成立するコミカルなキャラクターとして見られるようになっているのは、ひとえにベベルの開けっ広げな諧謔精神と、スター性あればこそだろう。こういうファンを手放しかねない挑発的なお遊びは、本人も大好きだったに違いない。

 ダサい眼鏡と出っ歯のメイクで、ブサイクな妻を説得力十分に演じきったミア・ファローの女優根性にも恐れ入る。ラウラ・アントネッリは景気よくヌードを披露しているが、ちょっと不憫なくらい監督に興味を持たれていない感じがビンビンに伝わってくる。ぼくも個人的にさほど思い入れがないので、別にどうでもいいっていうか……(ファンの皆さん、ごめんなさい)。

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 オープニングはシャブロル作品ではおなじみの交通事故シーンで幕を開け、そこから時間がさかのぼっていくという趣向。前半はお遊び満載のユルーいお色気コメディとして展開するが、後半で主人公が交通事故に遭い(つまりファーストシーンに戻る構造)、骨折して自分の病院にこもりきりになってからの展開は、鬼気迫る不安感が充満してくる。

 ちなみに、主人公が事故に遭った瞬間に見る幻想シーンも秀逸だ。ベルモンド自身が裁判官や警官や司祭に扮し、主人公の不実を裁くというコミカルかつ悪夢的なイメージが展開する(ややモンティ・パイソン的、というかテリー・ギリアムっぽい)。ちょうど映画のテイストが劇的に変化する分岐点としても、効果的だ。

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 クライマックス、病院のベッドで身動きがとれないままの主人公が、復讐鬼と化した妻から音声モニター越しに驚愕の事実を聞かされるシーンは、戦慄の極み。「助けてくれ! 殺される!」と叫んでのた打つベルモンドの姿とカットバックされる、暗い廊下で床を磨いている黒づくめの掃除婦の姿がもたらす恐怖感といったらない。アラン・パーカー監督の『エンゼル・ハート』(1987)にも影響を与えているのではないだろうか。その直後に訪れる、観る者すべてをズッコケさせる強引なハッピーエンドも、この映画をなおさら忘れがたいものにしている。

 日本ではバップからVHSが発売されていたが、置いてあるレンタル店はムチャクチャ少ない。ぼくが知っているのは目白の「ヴイ・レックス」と、大泉学園の「サンセット」だけだ。現在はドイツ盤・スペイン盤DVDしかリリースされていない模様。

1972_docteur-popaul_horror.jpg


監督/クロード・シャブロル
脚本・台詞/ポール・ジェゴフ
原作/ユベール・モンテイエ
撮影/ジャン・ラビエ
音楽/ピエール・ジャンセン
出演/ジャン=ポール・ベルモンド、ミア・ファロー、ラウラ・アントネッリ
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