Simply Dead

映画の感想文。

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『君もまた星となって』(1975)

『君もまた星となって』
原題:너 또한 별이 되어(1975)
英語題:You become a star, too.

you-become-star_poster.jpg

 韓国の映画データベースサイト「kmdb」で、古典映画ライブラリーの動画配信サービスが行われていることは、前にも何度か書いた。ただし海外からのアクセスの場合、月替わりで無料配信される特集コーナーの作品しか観られないと聞いていたので、まあ観られるだけいいか……と思いつつ、毎月の特集だけを楽しみにしていた。ところが、ついこないだ弾みで有料配信タイトルの再生ボタンをクリックしてみたところ、ちゃんと国外からでもクレジット決済を受け付けてくれることが判明。今までの無駄な時間は一体なんだったんだ! とアタマをかきむしりつつ、さっそく何本か観てみた。ちなみに有料動画配信の利用料金は14日間で5000ウォン、1ヶ月で1万ウォン。そこに、1本観るごとに500ウォンが加算されていく。現在の日本円に換算すると、14日間に1本ずつ観たとしても、全部で1000円くらいにしかならない。つまり、アホみたいに安い。

 そんなわけでまず最初に紹介する『君もまた星となって』は、80年代韓国ニューウェーヴの代表格として名を馳せたイ・ジャンホ監督の長編第3作。ロマンティックな響きを持つ題名ながら、中身はなんと『エクソシスト』(1973)の亜流である。さらに、韓国映画お得意の青春メロドラマ的要素を盛り込み、キム・ギヨン監督作品の向こうを張ったような奇抜な演出が随所にスパークする、カルトムービーの資格十分の怪作であった。

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〈おはなし〉
 山から飛んできた1匹の蝶が、郊外のとある一軒家に入ってくる。そこに、宝くじを当てて大金を得た会社員のサンギュ(シン・ソンイル)が、妻と娘を連れて引っ越してきた。念願のマイホームを手に入れ、新生活のスタートに胸躍らせるサンギュ一家。

 ある夜、残業していたサンギュはタクシーに乗りそびれ、外出禁止令下のソウルを彷徨う羽目に。そこで彼は、ひとりの少女ミウ(イ・ヨンオク)と出会う。彼女は人気歌手ソン・チョルホの大ファンだった。偵察車の目をかいくぐりながらホテルにたどり着いたふたりは、共に夜明けまで過ごし、そして別れる。

 一方、新居に引っ越して以来、サンギュの娘ユンジョン(ユン・ユソン)は奇妙な幻覚を見るようになる。やがて彼女自身も異常な言動をとり始め、病院で精密検査をすることに。だが、原因は医師たちにも分からずじまい。彼女はより専門的な治療を受けるため、ロンドンの病院へと向かった。

 ひとり残されたサンギュの前に、再びミウが現れる。憧れの相手だったチョルホに拒絶された彼女は、あてどなく現世を彷徨い続けていたのだ。互いの孤独を補い合うかのように、結ばれるサンギュとミウ。その頃、巷では謎の連続怪死事件が頻発しており、その中にはチョルホの姿もあった。

 帰国したユンジョンはすっかり回復したかに見えたが、自宅に戻った途端、さらに症状は悪化。そこで彼女の主治医は、イギリスの教会から心霊学者を招き、悪霊祓いの儀式を決行しようとする。そこに、連続怪死事件を捜査していた刑事が訪ねてきて……。

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 簡単に言うと、幽霊モノと悪魔憑きモノを合体させたような内容だが、最初はどういう方向へ映画が進んでいくのか皆目分からなかった。もちろん自分に語学力がないせいもあったけど、とにかく話があちこちに飛びまくるし、解説ページのあらすじを読んでもよく理解できない。なんとなく、現代人の抱える神経症的な不安を、群像劇スタイルで描いた不条理スリラーなのかな……でも場面によっては撮り方が完全にホラー映画だし……キム・ギヨンっぽいことをやろうとしているのかな……とか思いながら観ていると、だんだん「ああ、やっぱり『エクソシスト』の二番煎じでよかったのか!」と分かってくるが、それでもメロドラマ的な色彩や青春残酷物語的な展開は、終盤に至っても節操なく投入され続ける。

 そう易々とは観客にジャンルを見定めることを許さない映画作りというか、違う言い方をすれば「盛り込みすぎな上に、迷走を恐れない語り口」というのは、韓国映画の大きな特徴のひとつでもある。本作の場合も、あとから思えば一応ちゃんと考えてシナリオを設計していたような気がしないでもない構成にはなっているが、デタラメぶりも同じくらい確信犯的だ。さすがは『馬鹿宣言』(1983)のイ・ジャンホ監督。

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 イ・ジャンホは『エクソシスト』にはないオリジナル要素をふんだんに加え、それらを綺麗に過不足なくまとめようとはせず、意図的にとっ散らかった風変わりなドラマとして仕上げている。現代人のマイホーム願望、アイドル歌手に恋をした少女の悲劇、奇怪な連続殺人事件とそれを追う刑事、オープニングとエンディングを結ぶ蝶(=魂の化身)の存在などなど……。お世辞にも全てがうまく機能しているとは言えないものの、いくつかの要素は非常に魅力的。そのイビツさも含め、トラッシュ映画ファンには捨てがたい輝きを放つ作品となっていることは確かだ。

 個人的に印象深かったのは、映画の前半、シン・ソンイル演じる主人公とヒロインの少女が、外出禁止令下の真夜中のソウルを彷徨うシーン。軍事政権下の70年代韓国ならではの場面であり、暗闇に包まれた無人の街というシチュエーションは、どこかシュールでロマンティックでもある。こんな夜なら幽霊に出会っても不思議ではない、と思わせるのだ。(当時の韓国ではそれが日常だったのだけれども)

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 もちろんプロデューサーからは「『エクソシスト』っぽいやつ頼むよ! 似たようなシーンもバンバン入れてさ!」みたいな注文が最優先事項としてあったと思われ、イ・ジャンホはそこにもきっちり職人的に応えている。異常をきたした少女がドロドロの液体(というか、お粥)を吐くシーンや、病院で精密検査を受けるシーンなどは、まるっきり原典のまんま。ちゃんと「お前は宇宙で死ぬ」的な台詞を言うシーンもあるし、せっかく焼き直すならもっと強烈にいてまえ! というヤケクソなバージョンアップもいろいろと施されている。例えば少女が失禁する場面は、本作では股間から噴水のごとく血が噴き出すという描写になっており、数段ショッキングかつえげつない。男が首をねじ切られるという残酷シーンもあり(ちょっとカットされてるっぽいが)。『低きところに臨みたまえ』(1981)なんて真面目な宗教映画も作ってるくせに……。

 最終的に、事件の原因をハードコアな「女の悲劇」に落ち着かせてしまう筋立ては、いかにも男性優位社会の古典的な女性観に基づいたもので、若干うんざりする部分はある。とはいえ、男尊女卑思想がまるだしの一般的な韓国怪談映画群に比べれば、この映画のヒロイン描写は一線を画しているとも言える。

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 主演のシン・ソンイルは、60?70年代の韓国映画界を代表するハンサム男優。ギターを抱えた可憐な少女ミウを演じるのは、『馬鹿たちの行進』(1975)『ピョンテとヨンジャ』(1979)のヒロイン役も印象的だったイ・ヨンオク。宙を飛んだり血尿を出したり大変な熱演を披露している娘ユンジョン役のユン・ユソンは、その後も女優業を続け、最近では『宮?Love in Palace?』『善徳女王』などに出演し、TVドラマを中心に活躍中だ。どこか頼りないコメディリリーフ的な刑事に扮する名脇役のシングも、いい味を出している。


監督/イ・ジャンホ
脚本/イム・チュンヒ
撮影/チャン・ソクジュン
照明/キム・ジンド
出演/シン・ソンイル、イ・ヨンオク、ユン・ユソン、オ・ヨンジョン、シング、イ・ヨンホ、イ・スンジェ
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