Simply Dead

映画の感想文。

『3人組』(1997)

『3人組』
原題:3인조(1997)

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 パク・チャヌク監督がデビュー作『月は…太陽の見る夢』(1992)から5年後に撮り上げた長編第2作。社会に居場所のない3人の男女がひょんなことから結託し、警察や暴力団を敵に回して逃避行を展開するロードムービー風アクションコメディ。数年前に東京国際映画祭で初めて観た時は、とても次に『JSA』(2000)を撮る人とは思えないフラットな画作り、臆面もないB級志向、『復讐者に憐れみを』(2002)のタイトで計算された物語構成とは真逆の行き当たりばったりなストーリーテリングに、えらく驚かされた覚えがある。まあ、はっきり言って「こんなにつまらない映画も撮っていたんだ!」という印象だった(ちょっと寝たし)。

 しかし、そのうちに本作が様々な面で「過渡期」の作品であることも分かってきた。スタイリッシュな映像演出を追求して失敗した前作『月は…太陽の見る夢』の反動として撮られた作品であること、アベル・フェラーラに心酔する映画狂の友人イ・フンからの多大な影響を受けた後に作られた作品であること、何より画作りにまったく金のかけられない低予算映画であったこと、などなど……。今ならまた違った視点で観ることができると思い、韓国版VHSで数年ぶりに再見してみた。

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〈おはなし〉
 三流ナイトクラブでサックスを吹いている男アン(イ・ギョンヨン)は、金銭的事情から楽器を質屋に入れてしまい、家に帰れば妻が娘をほったらかして浮気の真っ最中。絶望したアンは衝動的にガソリンをぶちまけ、家に火を放って逃亡。手首を切ろうとしたり、ビニール袋を被ってみたりして何度も自殺を試みるが、いつも失敗してしまう。

 やっと首吊りに成功しかけた時、アンはヤクザ時代の後輩ムン(キム・ミンジョン)に呼び出され、カフェで落ち合う。軽薄で癇癪持ちで後先考えない男であるムンは、チンピラ稼業に嫌気が差し、組織から大量の銃器類を奪って逃げてきたところだった。ウエイトレスの態度にキレた彼は突然マシンガンを乱射し始め、アンに強盗を手伝わせる。瞬く間に警察と暴力団の双方に追われる身となるふたり。

 逃げる途中、カフェにいたウェイトレスのマリア(チョン・ソンギョン)も彼らに合流する。彼女はかつて修道女になろうとしていたが、養父に犯され、その子を産んだために夢を閉ざされてしまった。施設に引き取られた娘を取り返そうと、アンとムンに協力を請うマリア。こうして危険な3人組の旅が始まった……。

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 久しぶりに観てみると、意外に面白く思える部分も多かったものの、やっぱり失敗作という印象は拭えなかった。テンポよくドライな語り口、作品全体を貫く底意地の悪さ、すっとぼけたユーモア、キリスト教のモチーフなど、その後のパク・チャヌク作品に通じる要素はかなり色濃く出ている。しかし、それとは真逆の、パク・チャヌク作品とは思えないような荒削り感や乱暴な構成のおかげで、まるで別人が撮ったような印象を受けるのだ。

 映像的には「常に簡素であれ」というBムービー精神にのっとるかのように、素っ気なく乾いた質感が保たれており、前作『月は…太陽の見る夢』の方向性とは真逆の「スタイルの模索」が感じられる。とはいえ、部分的には凝った映像テクニックで遊ぶ余裕も見せていて、銃弾で撃ち抜かれた掌の穴から主役3人の顔にズームしていくサム・ライミ風のカットまである。が、どこか心にもなく無理やりハシャいでるように感じてしまうのは気のせいだろうか。

 本作では全ての事件が矢継ぎ早に、ものすごいスピードで起こっていく。妻の浮気に絶望した男が家に火をつける突発的行為、喫茶店で突然に始まる無軌道な銃撃戦、ほとんど感情的な前置きなしに始まる3人のロードムービー、唐突に連れ去られる赤ん坊の奪還劇……。それらは、パク監督の友人で映画監督でもあるイ・フン(デビューして間もなく、カフェで起きた火事に巻き込まれて世を去った)が好んだ「暴力もアクションも、とにかく“さっ”とやるべし」というセオリーの実践にも見える。だから前半はとても面白い。ただ、そういったB級映画的に無駄を省いた演出は、ともすれば「無感情」に見えてしまうこともあり、そんな調子で劇的な急展開がたびたび続くと、観客としてはだんだん「どうでもいいなあ」と思ってしまうものだ。しかも本作の場合、終盤になると「3人組」のドラマすらも解体され、視点が拡散してしまい、ダメ押し的に観客の集中力を奪っていってしまう。結局、ビデオで観ていてもやっぱり途中で寝てしまった。

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 一見するとオフビートなB級アクションコメディのようでありながら、その根底には自殺願望、近親相姦、家庭崩壊、暴力の連鎖、罪と救済といったヘヴィーなテーマが散りばめられ、前作よりは監督の好みがダイレクトに反映されていると言えるだろう。しかし、それらがスピーディーな犯罪ドラマのストーリー上で活きてくるかといえば、残念ながら消化不良に終わっていくのみ。小粋なアクションコメディとして観るには深刻すぎるし、ダークな人間ドラマとして観るには掘り下げが浅く、総体的に見てバランスが悪い。アウトサイダーたちの繰り広げる「おもしろうてやがてかなしき」逃走=闘争のドラマに熱中しようとしても、登場人物たちの魅力があまりに乏しく、終始何を考えているのか分からないため、感情移入を阻まれてしまう。全ての映画に感情移入が必要だとは思わないが、この物語には必要だったのではないだろうか。(イ・ギョンヨン演じる自殺願望を持った主人公アンは、たびたび監督そっくりに見える瞬間がある)

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 本作が異色なのは、劇中のバイオレンス描写のほとんどが、銃によるものであること。パク・チャヌク作品のトレードマークとなっていく肉体的暴力へのこだわりは、無邪気なB級趣味の陰に隠れて、まだ発現していない。とはいえ、通奏低音として全体に流れる暴力的なムードは、コメディとしての体裁をおびやかすほどの不穏さで観客に迫ってくる。

 ラストシーンに漂う死の気配の濃密さはただごとではない。『復讐者に憐れみを』の劇中、ソン・ガンホ扮する父親がずぶぬれになった娘と対面するシーンの原点とも言える、冷たい戦慄と温かいユーモアの同居した演出がすでにここで実現されている。いかにもパク・チャヌクらしい場面といえるのだが、それが映画全体の締めくくりとしてバランスよく機能しているかというと、首をひねらざるを得ない。軽い後味で終わるべきBムービーとしてはあまりに陰惨で、その場面だけ取り出せばうまくまとまっているかもしれないが、全体の中では見事に浮いてしまっている。

 言ってしまうと、この映画はそういう場面の連続だ。「こういう乱暴で変テコな映画があってもいいんじゃないか」という若者の主張みたいなものはハッキリと伝わるのだけど、作り手に全体像が見えていない感じがモロバレというか、悪い意味でヌーヴェルヴァーグ的というか……。作り手の「資質」と「憧れ」の激しい乖離によって、ことごとくバランスが崩壊しているのである。

 それでも、こういう荒削りな映画が好きな人もいるんじゃないだろうか、という感じも受ける作品ではある。パク・チャヌク監督のファンとしては、映画自体の中身と同様、やや優柔不断な態度をとらざるを得ない「問題作」だ。ちなみに、本作には『相棒/シティ・オブ・バイオレンス』(2005)や『タチマワ・リー/悪人よ、地獄行き急行列車に乗れ!』(2008)などのリュ・スンワン監督が、助監督として参加している。彼にとってはこれが初の商業映画の現場経験となり、そういう意味で記念すべき作品ではある。


監督/パク・チャヌク
脚本/イ・ムヨン、パク・チャヌク
撮影/イ・ウンギル、パク・ヒョンチョル
照明/シン・ジュナ
編集/パク・ゴクジ、ナム・ナヨン
音楽/チョン・サンユン、キム・ドヨン、チェ・マンシク、パク・キュヨン
助監督/リュ・スンワン
出演/イ・ギョンヨン、キム・ミンジョン、チョン・ソンギョン
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