Simply Dead

映画の感想文。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『凶悪犯』(1966)

『凶悪犯』
原題:Brigade Anti-Gangs(1966)

brigade-antigangs_jpvhs.jpg

 フランス犯罪小説の大家、オーギュスト・ル・ブルトンが原作・脚色を手がけた犯罪アクションスリラー。監督は『情報は俺が貰った』(1959)や『アンジェリク』シリーズのベルナール・ボルドリー。パッケージに「男の美学を追究したフィルムノワールの傑作」みたいな事が書いてあったから、渋めの映画なのかと思ったら全然違った。オープニングでミシェル・マーニュ作曲のやけにアッパーなテーマが流れた時点で「ん?」と思ったけど、とにかくサービス満点の娯楽作で、それはそれで非常に面白かった。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
 白昼、パリ市内で銀行強盗事件が発生。かねてより強盗団をマークしていたル・ゴフ警部(ロベール・オッセン)率いる刑事たちは、激しい銃撃戦の末、犯人グループの逃走を許してしまう。数時間後、レストラン経営者サルテ(レイモン・ペルグラン)が重要参考人として連行される。その時、サルテは愛娘のマルティーヌ(キャロル・ルベル)に、銀行から奪った金の隠し場所をそっと耳打ちした。父親が本当にギャングだと知り、ショックを受けるマルティーヌ。その夜、彼女は元アイドルの恋人アップル(ピエール・クレマンティ)と共に、金の入ったスーツケースを取りに行く。そこには大量の銃も入っていた。

 アップルは大金と豊富な武器に目がくらみ、再び一花咲かせようと、仲間たちを引き連れて警察襲撃を企む。マルティーヌの父親を権力の犬どもから奪い返すのだ。若者たちはサルテが拘留されている警察署に乗り込み、壮絶な修羅場を繰り広げる。銃弾が雨と降り、おびただしい血が流れる。結局、サルテの奪還は失敗に終わり、アップル一味はなんとか逃げ出すが、警官殺しの現行犯という決定的な罪を背負ってしまう。サルテの正体もバレてしまった。が、アップルは次にサッカー場へ向かい、ル・ゴフ警部の弟で国民的サッカー選手のジョビック(ガブリエレ・ティンティ)を誘拐。サルテの釈放を要求するが……。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

brigade-antigangs_detectives.jpg

 ル・ブルトン、ボルドリー、そしてフランシス・コーヌが共作したシナリオは、ノワール的なストイシズムや硬質さとは正反対ながら、なかなかの逸品。犯罪スリラー、刑事アクション、ラブストーリー、ファミリードラマ、さらにヌーヴェル・ヴァーグ調の無軌道な青春群像劇など、さまざまな要素がごった煮状態で詰め込まれ、あの手この手で次から次へと新展開がたたみかけられるので、観ている間まったく退屈しない。ピンボール的に連鎖していく人間関係も面白く、ご都合主義的なところもスピーディーな語り口で乗り切ってしまう。

 犯罪アクション映画としての視覚的な見せ場も多い。特に、呆気にとられるほど無鉄砲な警察署襲撃シーンは、ちょっと昔の映画とは思えないくらいアナーキーな興奮に満ちている。クライマックスの人質交換シーンにおけるスリルも相当なものだ。警察ものとしては『七人の刑事』風というか、日本の古き良き刑事ドラマにも通じるムードもある。昔気質の冷酷なギャングと若いチンピラ集団との対比、両者が交錯するところに流れる緊張感は、『いつかギラギラする日』(1992)も思い出させた。

brigade-antigangs_hostage.jpg

 登場人物もそれぞれ魅力的。特に、元イエイエのアイドルで、かつての栄光が忘れられず、ふとしたきっかけで凶行に走っていく青年アップルの無軌道ぶりと安っぽい悲哀がいい。こういう現代的なキャラクターを、クラシカルな犯罪映画の枠の中に突っ込んで、お手軽に新味を加えてみようという非常に分かりやすい魂胆ながら、本作の場合はそれがうまくいっている。

 主演は『傷だらけの用心棒』(1968)のロベール・オッセン。いわゆる「デカ長」的な役柄で、ひたすら渋い存在感を醸し出しているが、『夜の放蕩者』(1969)とか変な映画にもよく出ている人である。アップル役に扮したピエール・クレマンティの個性と好演も印象に残る。娘思いの父親と非情なギャングという二面性を持つレイモン・ペルグランの酷薄な感じもナイス。キャロル・ルベルをはじめ女優陣も綺麗どころが揃っていて、目に楽しい。また、おとぼけキャラ的な刑事役で、ルイ・ド・フュネス主演の喜劇映画や『サブウェイ』(1985)などでおなじみのミシェル・ガラブリューが登場するのだが、映画が始まって10分程度でいきなり殉職してしまう。ただの顔見せだったのか……。

brigade-antigangs_hossein.jpg

 ジャン=ピエール・メルヴィル作品みたいな、いぶし銀の魅力で迫るフィルムノワールを期待すると、あまりのゴラク味に胸焼けするかもしれない。でも、こういうなりふり構わないエンタテインメントが、フランス映画にも昔からちゃんとあったことは、年に一回ぐらい思い出しておきたい。なかなかの拾い物だった。


監督/ベルナール・ボルドリー
原作・台詞/オーギュスト・ル・ブルトン
脚本/オーギュスト・ル・ブルトン、ベルナール・ボルドリー、
撮影/アンリ・ペルサン
音楽/ミシェル・マーニュ
出演/ロベール・オッセン、レイモン・ペルグラン、ガブリエレ・ティンティ、ピエール・クレマンティ、キャロル・ルベル、シモーヌ・ヴァレール、ミシェル・ガラブリュー
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://simplydead.blog66.fc2.com/tb.php/399-efbf094d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。