Simply Dead

映画の感想文。

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『武装解除』(1975)

『武装解除』
原題:무장해제(1975)
英語題:Kill The Shogun / disarmament

disarmament_poster.jpg

 『桑の葉』シリーズや『避幕』(1980)などの作品で知られる韓国の職人監督イ・ドゥヨンが、70年代に数多く手がけたテコンドー映画の1本。多彩かつ膨大なフィルモグラフィーを誇るイ・ドゥヨンは、韓国にテコンドー映画ブームを巻き起こしたパイオニア的存在でもある。1974年には初の本格的テコンドー映画『龍虎対錬』を皮切りに『帰って来たウェダリ』『憤怒の左脚』『続・帰って来たウェダリ』など、1年間で6本もの監督作品を世に送り出した。のちに手がけたミステリー大作『最後の証人』(1980)やアクションコメディ『クレイジー・ボーイ』(1985)などで、格闘シーンの切れ味がやたら鋭かったのは、この頃に培ったアクション演出の賜物なのだ。

 本作『武装解除』は、イ・ドゥヨンが新たに発掘した新人俳優カン・デヒを主演に迎えた反日アクション映画。『ドラゴン怒りの鉄拳』(1972)や『テコンドーが炸裂する時』(1973)など、この時期にアジア諸国で量産されたアクション映画には抗日運動を背景にした作品が多く、旧日本軍は悪役の定番だった。また、当時の韓国映画界は軍事政権による審査・検閲が厳しく、こうしたプロパガンダ映画的な筋立ての方が企画も通りやすかったのではないだろうか。

disarmament_betrayed.jpg

 映画は日本政府による大韓帝国軍の強制解散命令から始まる(英語版の字幕では1904年となっているけど、1907年の間違い?)。屈辱的な仕打ちに耐えかねて自決する者や、反抗を試みて逮捕される者が続出する中、カン・デヒ扮する兵士イニョンは日本軍の包囲網から逃走。かつて武道家の父親をサムライに殺された過去のある(!)彼は、韓民族の誇りにかけて最後まで抵抗を続けることを誓う。そして、同じく逃亡してきた元兵士ジョー・リーと共に、イニョンは抵抗運動を開始。といっても、日本軍の兵士がいると見ればいきなり襲いかかってギッタギタにぶちのめし、身ぐるみカッ剥いでいくというバーバリズム全開の直接行動。どう考えても長生きできない感バリバリだが、そんな清々しいまでに何も考えていないヤケッパチな活躍ぶりが見ていて楽しい。

 反日義兵コンビはついに日本軍司令官の宴席に殴り込み、全員をボコボコにした挙げ句、司令官の勲章を奪い取ってしまう。激怒した司令官は勲章を取り返すために大規模な捜索を開始。逮捕されたジョー・リーは拷問の末に日本軍側に寝返り、単身彼を救い出しに来たイニョンを裏切ってしまう。いろいろあって、ついに敵の手に落ちたイニョンは道場へ連行され、日本軍が誇る強者たちとノンストップで対戦する羽目になる……という話。

disarmament_fighting.jpg

 主演のカン・デヒは、デイヴィッド・チャンとジミー・ウォングとオードリー若林を混ぜたようなハンサム・ガイ。往復ビンタのごとく繰り出される切れ味鋭い足技が素晴らしい。終盤、主人公が道場で次々に敵と対戦していくシークエンスは本作最大の見せ場であり、圧巻のクライマックスだ(最後にはなぜかサムライも登場)。イ・ドゥヨン監督のアクション演出はとにかく1カットの中での段取りが非常に多く、なおかつスピーディ。コマ落としで速く見えるよう処理されているとはいえ、役者にとってはかなり難易度の高い演出だろう。カメラ自体はほとんど動かさず(早撮りするためのテクニックでもあるのだろうが)、引きの1カット内で様々な動作を繰り広げ、キメ技や連続技のアップへと巧みに導いていく。マジカルなカッティングで超人的アクションを成立させる手腕は、香港クンフー映画の巨匠たちの演出ともひと味違う、硬質かつ流麗な職人技と言えよう。

 また、この映画のもうひとつの見どころが、おかしな日本軍人の描写。ぺ・スチュンが怪演する司令官がいきなり金魚を踊り食いするシーンは特にすごい(ホントに意味がない)。試合で主人公に負けた部下たちを次々と銃殺してしまうあたりもやりすぎ(優秀な兵士の数がどんどん減っていくだけじゃないのか……)。そんな異常で残忍な性格を描きつつ、日本人は全員悪役というスタンスでもないところが面白い。間抜けで情けないコミカルな表情や、あるいは義に厚い人間性を感じさせる部分も同時に描いていて、それがまた独特である。

 ラストは『ドラゴン怒りの鉄拳』を思わせる悲劇的な結末だが、ここでもイ・ドゥヨンの巧みな演出が光る。教練場を横切って仲間たちの待つ門へと走る主人公と、彼を殺すか否かで議論する将校たちの姿をカットバックで見せ、サスペンスを盛り上げていく。そして、背後からの一斉射撃に倒れた主人公に駆け寄る恋人が「このろくでなし!」と叫んだところでストップモーションとなり、再び銃声が轟く。このエモーショナルな苦い余韻が韓国映画らしい。

disarmament_japs.jpg

 この映画は韓国映像資料院にもフィルムが所蔵されていないらしく、韓国国内ではレアな作品と化しているようだが、アメリカでは『Kill The Shogun』のタイトルでDVDが発売されている。B級映画の製作・配給を手がけていたジャック・H・ハリスによって買い付けられ、英語に吹き替えられたバージョンである。しかも、ぼくが買ったDVDはドイツ語だかオランダ語だかの字幕が焼き付けられたビデオのコピーだった(一応、ノーカット版らしいけど)。大韓トラッシュの深奥に迫る道は、まだまだ長く険しい……。

 先日発売された「TRASH-UP!! vol.3」で韓国特集を担当させていただいた際、編集長と一緒にちょっと悩んだのが、イ・ドゥヨンの作品をどこまで紹介できるかということだった。結局『避幕』や『最後の証人』などは紹介できたものの、アクション派としてのイ・ドゥヨンについてまでは触れられず、それはちょっと心残りだった(ちなみに「TRASH-UP!! vol.3」の付録DVDには『クレイジー・ボーイ』の予告編がこっそり収録されている)。次号ではひょっとしたら……?

・HKFLIX
DVD『Kill The Shogun(武装解除)』(リージョンオール・英語版)


製作/クァク・ジョンファン
監督/イ・ドゥヨン
脚本/キム・ハリム
撮影/アン・チャンボク
出演/カン・デヒ、チェ・ジョンミン、ぺ・スチュン、ファン・ジョンニ
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