Simply Dead

映画の感想文。

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『霜花店』(2008)

『霜花店』
原題:쌍화점(2008)
英語題:A Frozen Flower

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 昨年末に韓国で封切られ、観客動員380万人という大ヒットを記録した大作時代劇。高麗時代の宮廷を舞台に、国王と側近の兵士、王妃の3人が織り成す愛憎ドラマを描く。監督・脚本は『マルチュク青春通り』(2004)のユ・ハ。人気スターたちが見せる激しいセックスシーンが公開前から大きな話題を呼び、韓国国内では成人指定で上映された。

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 元国からの抑圧を受け、後継者が生まれないことには立場が危うい国王。だが、いつまで経っても妃との間には子供ができる気配がない。そこで王は最も信頼を寄せる護衛隊長(夜の相手でもある)に妻を抱かせることにする。最初は嫌々ながら王のため国のためと交わうふたりだったが、何度も床を共にするうちに愛情が芽生えていく。一方、夫婦よりも固い絆に結ばれていたはずの王と護衛隊長の関係はギクシャクし始め、ついには互いに剣を向けあうことに……というお話。特に目新しさはない内容だが、王と護衛隊長の同性愛関係を露骨なセックス描写込みでストレートに描いているところが新味だ。

 チョ・インソンとチュ・ジンモという第一線のスター男優が、全力でゲイセックスシーンを繰り広げる姿は、美しいというよりは思わずのけぞってしまうような激しさに満ちている。時代も変わったなあと思わせつつ、今の目で見ても充分にショッキングな光景だ。男同士の濡れ場は前半に1回あるだけだが、それ以降はソン・ジヒョ扮する王妃とチョ・インソンのベッドシーンが何度も繰り返される。これがまた激しい。

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 ただ、撮り方がちょっとつまらない。全部が全部スポーツセックス調というか、無軌道に体をぶつけ合ってるだけな感じ。構図も照明もフラットなので、ムードもヘッタクレもないというか、押し並べて即物的な印象。曾根中生やアン・リーのように、セックス自体がドラマ性を帯びてくるほどネットリコッテリとは撮ってくれないのだ。そこら辺は非常に韓国映画らしいとは言えるかもしれない(韓国映画に登場するセックスシーンは大概、露骨で激しく刹那的なものが多い)。しかし本作の場合、もう少しセックス描写に対するこだわりや繊細さがあれば、もっと面白い映画になったようにも思う。男同士の濡れ場も、あんな目を背けるほど激しい場面を1回だけ見せるのではなく、バリエーションを増やして様々なかたちで映した方がよかったのではないか。どうもそのあたり、考え抜いて撮ったというより、なんとなく大雑把な手つきでやってる気がしてならないのだ。

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 映画全体の演出にも同じことが言える。一言でいうと、大味。主人公の性的アイデンティティの揺らぎとか、三者の愛憎関係が政治抗争に利用されていくとか、いろいろ掘り下げられる要素はあったろうに、筋肉質な娯楽演出で上っ面だけなぞってる感がある。特にジェンダー問題のテーマに関しては、監督自身はきっちり描いていると言っているらしいけれども、はっきり言って突っ込み不足。単なる三角関係に揺れる話にしかなってない。例えばイ・ジュニク監督の『王の男』(2005)のデリケートな描写の巧みさなどに比べると、映画として明らかに見劣りしてしまうのは事実だ。

 技術的にも雑な感じは否めない。特に、画一的な室内の音響(妙にエコーのきいた台詞)、時代劇らしさの感じられない照明(現代劇のセット撮影みたいな明るさ)が気になった。メロドラマ的な盛り上がりが行きすぎてバカバカしくなる展開も多々あり、後半では主人公がどうなろうが結構どうでもよくなる。いくらセックスに夢中だからって間近に迫る危機にも全然気付かないなんて、普通に護衛隊長失格だろう。

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 護衛隊長役のチョ・インソン(見るたんび入江雅人に似てるなあ、と思うのは僕だけだろうか)は、ユ・ハ監督とは『卑劣な街』(2006)に続くコンビ作だが、今回はちょっと冴えない。熱演なのは分かるけど、このドラマの主人公としてはあまりに線が細すぎる気がした。後半ではかなり肉体的に悲惨な目にも遭うのだけど、激しく衰弱したり苦悶したりする描写はなく、妙にキレイキレイなままなので、ファンはともかく普通の観客の立場からすると非常に白ける。いちばん印象に残るのはやっぱりセックスシーンで見せる肉体美で、要するに濡れ場要員なのかな、と意地悪な感想さえ抱いてしまった。まあ、それだけ他のふたりが素晴らしすぎるのだ。

 悩める王を演じるチュ・ジンモは、男ぶりも貫禄も、繊細な演技力も、チョ・インソンを遥かに凌いでいる。何しろ“声”が素晴らしい。だから彼が家臣たちにせがまれて宴で歌を披露するシーンは、映画的なゴージャスさに満ちている。歳とったら本当にいい役者になるんだろうなあと、しみじみ思った。

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 そして、この映画のなかで最も迫力に満ちた演技を披露しているのが、王妃役のソン・ジヒョだ。こちらもドスのきいた声の貫禄が圧倒的。大胆なベッドシーンを体当たりで演じているのも凄いけど、それ以上に複雑な内面を持つ王妃のキャラクターを鬼迫たっぷりに演じていて、弱点の多いこの映画を一身で支えている。秀作ホラーシリーズ『女高怪談』の第3作『狐階段』(2003)で主演デビューを飾った彼女が、本作ではイケメンスターを圧倒する立派な大女優に成長していて、何やら感慨深かった。ちなみに『女高怪談』シリーズ第4作『ヴォイス』(2005)で主演デビューしたキム・オッピンは、今年公開の話題作『コウモリ』(2009)で「『霜花店』を凌ぐ大胆艶技」を披露しているとのことなので、早く観てみたい。

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 まあ、大ヒット作だけあって退屈はしない。護衛隊の面子が美男子ばかりだとか、やたら血糊が盛大に噴き出すバイオレンス描写が多いとか、いちいちサービス精神旺盛な映画なので、それなりの満足感は与えてくれる。とにかく、チュ・ジンモとソン・ジヒョの演技を見るだけでも、本作を観る価値はある。確かにこの2人に関しては、思わずウットリするほど素晴らしい。

・SCRIPTVIDEO
DVD『霜花店』(韓国盤・リージョン3)


監督・脚本/ユ・ハ
撮影/チェ・ヒョンギ
照明/ユン・ジウォン
出演/チョ・インソン、チュ・ジンモ、ソン・ジヒョ、シム・ジホ、イム・ジュファン

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