Simply Dead

映画の感想文。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『Fight Night』(2008)

『Fight Night』
別題:Rigged(2008)

fight-night_poster.jpg

 闇ボクシングの世界を題材にしたインディペンデント映画。美貌の女性ボクサーと、彼女を見初めたインチキプロモーターの道行きを描く、小規模なアングラ版『ミリオンダラー・ベイビー』(2004)といった感じのハードなドラマだ。デジタル撮りの低予算映画で、スタッフもキャストも無名の地味な作品だが、なかなか見どころのある佳作に仕上がっている。主には、ヒロインを演じたレベッカ・ニューエンスワンダーの魅力によるところが大きい。製作・監督・編集は新人のジョナサン・M・ディロン。原題は「仕組まれた」「八百長」という意味の“Rigged”だったが、さすがに地味だしイメージもよくないためか、今のベタなタイトルに変えられた模様。アメリカ本国でも劇場公開はされず、DVDで発売された。

fightnight-bigsky.jpg

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
 マイケル・ダブリン(チャド・オーティス)は賭けボクシングのやり手プロモーター。各地を転々としながら、警察の目を盗んで違法のベアナックル(=素手)・ファイトなどを密かに開催し、荒っぽいレッドネック連中から金を巻き上げている。八百長を仕組むこともザラで、もちろん敵も多い。

 その夜もダブリンはいかがわしい取引に手を出し、路地裏でヤクザ者たちに死ぬほどボコられていた。そこへ一人の女が現れ、鮮やかなボクシング技で全員をぶちのめす。「近所迷惑よ」。彼女の名はキャサリン・バーカー(レベッカ・ニューエンスワンダー)。その強さに惚れ込んだダブリンは、翌日からキャサリンにしつこくつきまとい、一緒に巡業しないかと口説き続ける。あまりの執拗さに呆れ果てつつ、闘争意欲を持て余していたキャサリンは渋々承諾。こうして2人は旅に出た。

 テキサス、カンザス、ケンタッキーと各地をめぐり、順調に勝ち進んでいくキャサリン。喧嘩ばかりの旅を続けながら、やがてお互いの過去に秘めた「傷」を知ったふたりは、パートナーとしての絆を深めていく。だがある時、ついにダブリンは彼女を裏切らなければならない局面を迎えてしまう……。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

fightnight-kath.jpg

 とにかくもう、ヒロインの魅力に尽きる。誰がどう見ても、これはレベッカ・ニューエンスワンダーありきの映画だ。写真を見て分かるとおり、とてつもない美人である上、本物のファイターでもある。実際はボクシングではなくテコンドーをやっていたそうで、2000年度の世界チャンピオン(!)だったとか。何しろパンチが速い。それを何度も畳み掛けるようにボディへ打ち込む。重たいワンパンチで攻めるタイプではないので、映画的な迫力には乏しいかもしれないが、その攻撃スタイルにはリアルな鋭さと怖さがある。リング上での動きも軽快で、ボクサーらしからぬダイナミックな動きも見せたりして面白い。この映画では題材上パンチしか見せないが、ぜひ脚技も見てみたいと思った。

fightnight-quickshot.jpg

 強くてかっこいい美人のお姉さんが大好きな諸氏(僕含む)にはたまらない作品だと思うが、その美貌が無傷なのは最初の20分だけ。あとは痛々しい痣が顔面を彩り、後半ではさらに悲惨な姿になる。さすがに『TOKYO FIST』(1995)みたいなスプラッター大会になるわけではないけど、観る人によっては結構キツイかもしれない。個人的には、闇ボクシングという裏稼業の醜い現実、女性がボクシングをするということの過酷さをリアルに描こうとする作り手の生真面目さが表れているようで、演出態度としては好感をもった。何よりも「どんなに悲惨なメイクを施しても美しさは失わない」などという綺麗事を自ら突っぱねるかのような、レベッカ嬢の女優魂にも尊敬の念を覚えた。実際、最終的にはその見た目以上に、彼女のタフな姿勢や態度の美しさが観客を魅了するのだ。

fightnight-ontheroad.jpg

 これが映画初出演らしいので、台詞回しなどには素人っぽいところもあるけど、ふてぶてしい表情や鬼迫に満ちた存在感は堂々たるものだ。複雑な内面を持ったキャラクターも完璧に自分のものにしている。映画も終盤になると芝居にどんどん味が出てきて、もはや立派な映画女優としか見えない。もっと他の映画にも出てないんだろうか……と思ったら、今は「HALO(Helping Art Liberate Orphans)」という孤児のための慈善団体を運営しているらしく、そっちの活動がメインになっているらしい。残念。とはいえ、本作以上のハマリ役に出会えるかというと、そんなに簡単ではないかも。

fightnight-dub.jpg

 相手役の、というか実質的な主人公であり語り部であるプロモーターを演じたチャド・オーティスの力演も印象的。口八丁手八丁でアングラ世界を渡り歩いてきた詐欺師まがいのダメ人間を、暑苦しいほどパワフルに演じきっている。悪く言えばあまりに役作りが類型的だが、よく言えばクールなヒロインとは好対照をなす熱のこもった演技で、映画を引っ張っている。見た目はトム・クルーズとジョン・サヴェージを足して3倍希釈したみたいな感じだが(ナルシスティックな芝居もクルーズっぽい)、安っぽいアウトローの悲哀を見事に体現しており、レベッカ嬢と同様にハマり役である。

fightnight-ring.jpg

 デジタル世代のインディーズ映画らしく、映像はすごくちゃんとしている。それでもやっぱり若手スタッフ中心のローバジェット作品なので、ところどころチープだったり、拙かったり、そのセンスどうなの? と思うような部分も幾つかある。中盤のハードなタッチに比べると、取って付けたような甘ったるいエンディングにも興を削がれる。作家性の強い自主映画とプログラムピクチャーの中間を狙ったような、ハンパな低予算映画にはよくありがちな欠点だ。それこそ『ミリオンダラー・ベイビー』や、アウトローの痛切な生を描いたインディーズ映画の傑作『Night at the Golden Eagle』(2002)の苛烈さなどに比べたら、甘ちゃんもいいところ。……と、こんな苦言から先に口をついて出てしまうのは、それらの弱点にも目をつぶれるくらいの魅力を備えた作品だからだ。ただのDVDスルー作品と切って捨てるにはもったいない美点が、この映画には確かにある。

fightnight-lastround.jpg

 まず何よりも役者の魅力。そして、ストイックに絞り込んだシンプルな物語。ハードボイルド気分満点の台詞。生き抜くこと自体が苛酷なアングラスポーツ界で、突破口を求めるアウトローたちのドラマを真摯に描こうとする作り手のクソマジメな姿勢。やたらアップの多い構図だけ見ていても、きっとこの監督はジョン・カサヴェテスとか大好きなんだろうなあ、というのが分かる。その上でプログラムピクチャーとしても通用する、血湧き肉踊る骨太のBムービーを作ろうと試みている。結果としては端々にアマチュアっぽさが残ってはいるが、狙い通りのものをしっかり作りきった感じがして、好感が持てた。こういう「線の細いものには絶対にしない!」という情熱は、やっぱり大事なのではないだろうか。ことに、今の低予算映画の現場では。

fightnight-nightfight.jpg

 技術面で特に頑張ってるなーと思えるのは、ハヌマン・ブラウン=イーグルによる撮影だ。彩度を落とした色調と、光と影のコントラストに富んだ照明で、ハードな気分を強調。ボクシングシーンでは『プライベート・ライアン』方式のストロボ効果撮影で、ベタながらも充分以上の迫力を生み出している。また、闇ボクシング会場のいかがわしい空気感もいちいちリアルで、アメリカ南部(いわゆるバイブルベルト)の閑散とした景色を捉えたカメラもいい。

▼オフィシャルサイト「Rebecca (Neuenswander) Welsh」より
rebecca-kansas-girl.jpg

 とにかく、レベッカ・ニューエンスワンダーという存在に出会えただけでも得をしたと思える作品。目の肥えた映画好きには「どうせ安物でしょー」と一蹴されるかもしれないが、個人的には応援したい気分にさせられる力作だった。

(追記:『ストリート・レジェンド』のタイトルで09年11月11日にDVD発売決定)

・Amazon.co.jp
DVD『ストリート・レジェンド(Fight Night)』


製作・監督・編集/ジョナサン・M・ディロン
脚本/イアン・ショー
撮影/ハヌマン・ブラウン=イーグル
プロダクションデザイン/サリー・カミングス
音楽/ライアン・アディソン・アーメン、パトリック・カースト
出演/レベッカ・ニューエンスワンダー、チャド・オーティス、カート・ハノーヴァー

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://simplydead.blog66.fc2.com/tb.php/371-330504ea
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。