Simply Dead

映画の感想文。

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『ハッスル&フロウ』(2005)

『ハッスル&フロウ』
原題:Hustle & Flow(2005)

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 堂々たる傑作。涙腺ぶっ壊された。

 ストーリーはまさに「ラッパー慕情inメンフィス」(嘘)。メンフィスのストリートでしがないピンプ(ポン引き)として生きる男、Dジェイ。ある日、彼はふとしたきっかけから音楽への情熱を呼び覚まされ、稼業を捨ててラッパーになる決意を固める。無謀な賭けにのめり込み、全身全霊を投じて曲を創り上げていくDジェイと仲間たち。果たして彼らは未来を掴むことができるのか……。

 観ているだけで汗のにじみ出すような熱気ただよう映像と、俳優たちのリアリティ溢れる演技が圧倒的。どん底暮らしから這い上がろうと、がむしゃらに突き進む人々のドラマが、有無を言わさぬ本気のボルテージで刻まれる。「バカだこいつら」と一笑に付すこともできようが、画面の放つ力がそれを許さない。その愚かしさ故のひたむきな力強さが、胸を打つのだ。

 綺麗事でない、いたたまれない場面も多い中で、地を這う者たちが自力で何かを生み出していく喜びが、高揚感と共に描かれる。キマったフレーズを思いついた時のはしゃぎっぷり、自分の声がトラックと一緒にスピーカーから聞こえてきた時の喜び、仲間たちとの連帯意識。ひとつひとつの感動は普遍的なものだ。それらが蓄積され、やがて爽快なラストで爆発する。

 たぶんここ5年ほどの間に作られた映画の中で、最も胸揺さぶるキス・シーンもある。

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 ピンプならではの口の上手さを活かして見事なライムを生み出す主人公・Dジェイを演じるテレンス・ハワードが最高。激情的で、考えるより先に口が動くような愚か者の危なっかしさも巧みに演じている。そして愛憎半ばしつつ彼を支える女たち――健気な妻シャグ役のタラジ・P・ヘンソン、共に変わろうとする娼婦ノラを演じるタリン・マニングの熱演が感動的。コメディリリーフ的な役の多いアンソニー・アンダーソンとD・J・クォルズが、ヘヴィな物語を軽量化しながら、これまでにない名演を披露しているのも見どころ。地元出身の人気ラッパーを演じたリュダクリスのバカで怖い感じも良かった。

 Dジェイによる曲の数々は、アカデミー主題歌賞まで受賞しただけあり、強烈なインパクトを残す。限られた機材で作るという設定の元、適度に完成度を落としつつ、キャッチーな力強さを優先し、ラップに疎くても十分心に響く。

 流行の音楽映画と、社会の底辺を舞台にした濃密な人間ドラマが、スポ根ものの精神で融合を果たした傑作。どうしようもない男の再生の物語を、112分間まったくテンションを下げることなく見せきった監督・脚本のクレイグ・ブリューワー(白人)の力量が凄い。70年代映画のフレーバーを完璧に再現したオープニング・タイトルも必見!


 上映前、ヒップホップをBGMに映画館のお兄ちゃんが立て板に水みたいな調子でぼそぼそアナウンスしてて、それはそれでチルアウト系のライムみたいに聞こえて可笑しかったです。

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製作/ステファニー・アレン、ジョン・シングルトン
監督・脚本/クレイグ・ブリューワー
撮影/エイミー・ヴィンセント
編集/ビリー・フォックス
音楽/スコット・ボマー、セドリック・コールマン"It's Hard Out Here for a Pimp"
出演/テレンス・ハワード、タリン・マニング、タラジ・P・ヘンソン、アンソニー・アンダーソン、D・J・クォルズ、リュダクリス、ポーラ・ジェイ・パーカー、エリース・ニール、アイザック・ヘイズ

・Amazon.co.jp
『ハッスル&フロウ』DVD
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