Simply Dead

映画の感想文。

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『殺人魔』(1965)

『殺人魔』(1965)
原題:殺人魔(살인마)

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 韓国映画黄金期といわれる1960年代に作られた怪奇映画の1本。監督・脚本を務めたイ・ヨンミンは、60?70年代にかけて『血を吸う悪意の花』(1961)や『恐怖の二重人間』(1974)など、数多くのB級ホラーを手がけた人物。『殺人魔』は最近になってプリントが復元された彼の代表作で、イタリアのウディネ・ファー・イースト映画祭でも特別上映された。

 映画黄金期とはいっても、60年代韓国ホラーの大半はお化け屋敷感覚あふれる怪談ものだったり、テレビの特撮怪人ものに近い見世物映画だったりするので、今の映画ファンが観て楽しいものであるかどうかは微妙なところ。ただ、その時代の韓国における大衆娯楽のありようを考える上では、非常に興味深い。それに、かつての大蔵怪談的ないかがわしさやおどろおどろしさが好きな方なら、心地よい郷愁を覚えるかもしれない。本作『殺人魔』も、白黒・シネマスコープの映像がなかなかいいムードを醸し出している。映画としては傑作でも何でもないが、ある種の映画ファンのツボをぐいぐい押してくるタイプの作品なのではないだろうか。

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〈おはなし〉
 画廊を訪れた男シモクは、そこで今は亡き前妻エジャの肖像画を見つけ、愕然とする。彼女は15年前、自らの不貞を苦に自殺したはずだった。その絵を描いた画家チュンチョルの家へ向かうと、彼はひどく怯えた様子でシモクに肖像画を引き取ってくれと押しつける。すると、そこにエジャの亡霊が現れ、チュンチョルを殺してしまった!

 ほうほうの体で逃げだし、妻や子供たちの待つ自宅に帰ってきたシモク。だが、そこにもエジャの影がちらつき始める。一体なぜ? 実はエジャの死には、シモクの現在の妻ヘスクと、シモクの母が仕組んだ奸計が隠されていたのだ。やがて奇怪な現象の数々が、シモクの家族を襲う……。

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 冒頭のがらんとした画廊の撮り方からして、不気味でいい感じ。場面ごとに犯罪スリラー調、医療ホラー風味とコロコロ雰囲気を変えながら、結局は化け猫映画だったというオーソドックスすぎる内容も、ある意味では新鮮(?)。どこまで行っても「女の恨み」がメインテーマになるのは韓国怪奇映画のお約束である。基本的には古色蒼然とした内容ながら、中には本当に先鋭性を感じさせる趣向もあって、なかなかバカにできない。主人公の子供たちが幽霊によって異次元に連れ去られてしまい、声だけが聞こえるという場面は、まるっきり『ポルターガイスト』(1982)だ。

 恐怖演出や特撮のクオリティに関しては、当時ですらこれで怖がる人はいなかったであろうという稚拙さ。特に、老婆にとりついた化け猫が正体を現すところで、普通に猫ちゃんが衣服にくるまれている画を映してしまうテキトーな演出がおかしい。要するに、この頃の韓国におけるホラー映画の立場は、一般的には“子供だまし”扱いだったのではないか。一応「怖いもの」として演出するものの、結果的に大人が声をあげて笑うようなものになっても全然構わない、という感じなのである。

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 まあ、普通なら「こういう映画もあったんだねえ」と他愛もない感想を抱いて終わり、となるところだが……DVDを観ながらある事実に気付き、愕然とした。なんとキム・ヨンハン監督の『キラー・レディ/首なき殺人』(1985)は、本作の忠実なリメイクだったのだ! といっても、『首なき殺人』自体がおそろしくマイナーな映画なのでいまいち衝撃が伝わりづらいと思うが、その辺は近日発売の「TRASH-UP!! Vol.3」に詳しく書いたので、そちらをお読みください(こっそり宣伝)。あんな珍作にまったく同内容のオリジナル版が存在していたなんて思いもよらず、本当にびっくりした。もちろん『首なき殺人』のハチャメチャな仕上がりと違って、『殺人魔』は古き良き韓国怪奇映画のクラシックとして成立している、ような気がする。語り口もよっぽどタイトだし、ちゃんと納得できるオチもつくし。まあ、比べればの話だけど。

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 ちなみに主人公の母親の若い愛人を演じているのは、若き日のナムグン・ウォン。キム・ギヨン監督の『火女』(1971)や『殺人蝶を追う女』(1978)、イ・ドゥヨン監督の『避幕』(1980)などに出演し、「韓国のグレゴリー・ペック」とも呼ばれたスター男優である。本作ではいかにもマダムキラー的な野性味漂うハンサム青年として登場。当時でもそれなりに若手スターとして認められていたはずだが、なんでこんな映画に出たんだろう……?

・SCRIPTVIDEO
DVD『殺人魔』(韓国盤・英語字幕つき)


監督・脚本/イ・ヨンミン
撮影/ホン・ジョンムン
音楽/キム・ヨンファン
出演/イ・イェチュン、ト・クムボン、チョン・エラン、イ・ビナ、ナムグン・ウォン

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