Simply Dead

映画の感想文。

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『カン・チョルジュン 公共の敵1-1』(2008)

『カン・チョルジュン 公共の敵1-1』
原題:강철중 공공의 적1-1(2008)
英語題:Public Enemy Returns

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 ソル・ギョング演じる狂犬アウトロー刑事、カン・チョルジュンが帰ってきた! 韓国で大ヒットを記録したカン・ウソク監督の快作コミカルアクション『公共の敵』(2001)の、同スタッフ&キャストによる待望の続編である。なぜタイトルが「1?1」なのかというと、前作『公共の敵2 ?あらたなる闘い?』(2005)では、主人公カン・チョルジュンが(役名も同じで、演じる役者も同じだが)スーツ姿の熱血検事という全くの別キャラクターになっており、いわばパラレルワールド的な姉妹編的作品になっていたからだ。確かにこちらもそれなりに見応えのある力作だったが、人間としてサイテーな主人公がハチャメチャに大暴れする1作目がすごく楽しかったファンにとっては、正直ちょっと物足りない感は否めなかった(個人的には「こんなのオレが好きな『公共の敵』じゃないやい!」とすら思ってしまった)。

▼第1作『公共の敵』ポスター
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 第1作の主人公カン・チョルジュンといえば、喧嘩上等・恐喝三昧・職務怠慢がモットーの“ひとり暴力団”刑事で、おまけに麻薬密売にまで手を染めかけるダメ人間。まさに「公共の敵」として観客の前に現れる彼は、一方で不公平な社会に苛立ち、安月給の貧乏暮らしに悶々とする庶民派であった。そんな彼が標的として追いかけるのは、金のために両親を殺した上、享楽的に犯行を重ねる裕福なヤンエグ。つまり、韓国社会ではタブーとされる親殺しの大罪も平気で犯す新世代の若者で、しかも鼻持ちならない金持ち野郎=真の「公共の敵」を、社会のどん底を這うはぐれ者がルール無用でぶちのめす。そのカタルシスだけで全編を引っ張る映画なのだ。あまりにも庶民感情に正直すぎるシンプルかつ乱暴な対立構図は、韓国国内の観客たちの心を鷲掴みにした。そして何より「俺は確かにろくでなしだけど、それでもあの野郎だけは許せねえんだ!」と怒りにうち震える一匹狼チョルジュンの姿は、すこぶる魅力的だったのだ。

▼第2作『公共の敵2 ?あらたなる闘い?』ポスター
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 第2作ではそうした不良性が意図的に排除され、「組織内で持て余されたアウトローが、上層階級にあぐらをかいた悪党を容赦なく追いつめる」という骨子は残しつつ、ハリウッド映画的な社会派エンターテインメントを作ろうとする意欲が濃厚に感じられた。主人公のキャラクターはある意味とても古典的な正義のヒーローとなり、ソル・ギョングは前作と打って変わって理知的な好人物を見事に演じ上げた。しかし、代わりに前作にあった痛快なカタルシスが失われたのもまた事実である。『公共の敵2』は第1作をしのぐ興行成績こそ記録したものの、不良刑事カン・チョルジュンの帰還を心の底で切に願ったファンも少なくなかったに違いない。そして、満を持して作られたのが第1作の直接的続編、シリーズの“初心に帰った”本作『カン・チョルジュン 公共の敵1-1』である。

 とはいえ、第1作から7年もの時を経て、さすがに主人公のハチャメチャぶりも薄まってしまったのではないか? という危惧を抱いている方には、自信をもって「心配無用!」と答えられる。なんせ開巻15分足らずで辞職してしまうのだから(笑)。

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 今回の『公共の敵1?1』は、とにかく楽しい映画だ。特に、第1作の破天荒で大人げなく、孤独な哀愁を背負ったカン・チョルジュンが大好きで、第2作の颯爽としたヒーロー像がイマイチだった(僕のような)観客にとっては、全編「これこれ、これだよ?!!」と膝ポンしまくりの快作である。シリーズとしては、ちょっと骨太さや深みに欠ける部分もあるが、ファンサービスを第一に考えてエンタテインメントに徹した姿勢は高く買いたい。

(注:ネタバレするかもしれないので、日本公開を楽しみにしている方は読み飛ばしてください!)


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〈おはなし〉
 江東署重犯罪課きっての問題児、カン・チョルジュン(ソル・ギョング)。15年も刑事稼業を続けてきて得たものといえば、大して広くもない借家が1軒だけ。金は儲からないし、銀行でも相手にされず、下手すりゃ職務中に殺されるかもしれない。やってられるか! と辞表を叩き付けたその翌日、ある高校で殺人事件が発生。今度のヤマが最後でいいからと上司に説得され、刑事だかなんだかよく分からない状態で事件捜査に乗り出したチョルジュン。やがて彼は、未成年の少年たちをヤクザ候補生として“教育”する大物実業家イ・ウォンスル(チョン・ジェヨン)の存在に辿り着く……。

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 ストーリー重視だった前作とは異なり、今回の『公共の敵1-1』はキャラクターの魅力を描くことに徹底して重点を置いている。韓国版ポパイ刑事ともいうべきソル・ギョング=カン・チョルジュンが、いろんな暴挙を繰り返す姿を観ているだけで楽しい! という観客のための映画であり、作品全体が巨大なファンサービスと言っていい。だからストーリーはあってなきがごとし。第2作の骨太さとシリアスさ、さらに第1作のヒリヒリと灼けつくような殺気や悲壮感もなく、主人公もほどほどの親しみやすさを身につけて大暴れする。その辺は前2作よりもトーンダウンしたと考える向きもあるだろう。ただし、コミカルな面白さや娯楽性においては、格段にパワーアップしている。

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 ソル・ギョングはなんの違和感もなく1作目のカン・チョルジュンになりきり、全くブランクを感じさせない。喧嘩っ早さと執念深さだけが取り柄のヤクザ刑事を、憎めない茶目っ気を忍ばせながら見事に快演。まさに当たり役だ。今回は娘連れという設定で、情けないユーモラスな芝居もふんだんにあり、大いに笑わせてくれる。だが、一方で狂犬としての獰猛な表情をむきだす瞬間もちゃんと用意されていて、相変わらず素晴らしい。特に「こいつは俺の敵」と心に決めた相手を上目遣いに見上げた時、その目に宿るアブナい眼光が絶品だ。

 何より嬉しいのは、主人公以外の脇役陣も揃って復活していること(それぞれ違う役柄で登場した『2』とは喜びの大きさが違う)。チョルジュンの暴走を叱りつつ、父のように彼を見守る上司オム班長役は、もちろんカン・シニル。前作の3倍ぐらいイイ味が出ていて、もはやなくてはならない存在と言えよう。そして、チョルジュンに頭の上がらないチンピラたち……ビジネスマンとして成功したサンス役のイ・ムンシク、相変わらず刃物が大好きなヨンマン役のユ・ヘジンなどの登場も嬉しい。若手のキム刑事を演じるキム・ジョンハクは、さすがにちょっと老けた。

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 本シリーズのもうひとつの見どころが「公共の敵」たる悪役のキャラクターである。つまり、我らがカン・チョルジュンが「こいつだけは絶対に俺が殺す!」という執念をもって追うに足る、大罪人としての説得力を持つか否か。1作目の罪は“親殺し”だったが、今回はある意味“子供殺し”がテーマとなる。行き場のない不良少年たちを集めて、命知らずの特攻ヤクザに仕立て上げる実業家ウォンスルを演じたのは、人気俳優のチョン・ジェヨン。同じカン・ウソク監督の『シルミド』(2003)ではソル・ギョングと兄弟分を演じた彼が、本作では宿敵として火花を散らす。

 元々が凶顔のチョン・ジェヨンだから、さぞや非情な悪役ぶりを見せてくれるのだろうと思いきや、今回はいつになく男前でスマートな大物ヤクザを演じている。といっても1作目のイ・ソンジェのように二面性があるというわけではなく、妙に男気があったり、家族想いだったり、ユーモラスな部分もあったりして、ほとんど「殺すには勿体ない男」といった描き方なのだ(チョン・ジェヨンが冷血な悪役をやりたがらなかったから、気を遣って花を持たせたのか? と疑ってしまうほど)。作り手の狙いとしては、ウォンスルがどれだけ男らしくカッコよく見えても──ろくでなしの主人公チョルジュンよりどれだけ人間的にマシな男に見えても──非道なヤクザであることに変わりはない、というギャップを盛り込みたかったのだろう。普段は悪事に邁進するウォンスルが、休日になると「よき父親気取り」で息子を郊外の菜園へ連れて行くシーンの滑稽さは、なかなか秀逸である。『エレクション』(2005)のサイモン・ヤムを思い出したりもした。

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(以下、ちょっとネタバレ)しかし、彼が血も涙もない「公共の敵」であると印象づける決定的な描写がないため、結果的にシリーズ中では最もインパクトが薄い悪役になってしまった。これが本作最大の弱点。『エレクション』とは大きく水をあけられてしまった部分でもある。チョン・ジェヨンの役者としての実力から考えると、やや意外な感じだ。

 とはいえ、ソル・ギョングとチョン・ジェヨンの共演シーンでは、無条件にワクワクしてしまうのも事実。一触即発の緊張感と、乱暴なユーモアのブレンド具合、そして痛覚を大いに刺激するバイオレンス描写の切れ味は、さすがカン・ウソク監督だ。双方の子供たちが見ている前でふたりが大乱闘を繰り広げるシーンには腹を抱えて笑ったし、クライマックスのガチンコ対決も見応えある格闘アクションに仕上がっている。

 その他、シリーズ初参戦で特に光っているのは、チョン・ジェヨンの若き右腕を演じるキム・ナムギル(イ・ハンから改名)。静かな凶暴性を湛えた佇まいが映画にピリッとした緊張感を与えている。『極道戦国志・不動』(1996)の谷原章介を想起させた。また、ヤクザに憧れながらその理不尽な掟に葛藤する高校生、テジュン役のヨン・ジェウクも好演。

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 脚本を手がけたのは、劇作家・映画監督としても活躍するチャン・ジン。シリーズ3作目のお気楽さとお祭り感を前面に押し出し、肩肘張らないエンタテインメントに仕上げた姿勢が、本作を観客動員数400万人という大成功に導いた要因だろう。多少ヌルい部分も、今の観客が求めるものを的確に掬い上げた計算の現れではないだろうか。とにかく、個人的にはソル・ギョング=カン・チョルジュンの復活が存分に楽しめただけでも、大満足の快作だった。ぜひまた彼が変わらぬ「大人げなさ」と「タチの悪さ」で暴走する続編を作っていただきたい。

・SCRIPTVIDEO
DVD『カン・チョルジュン 公共の敵1-1』(韓国盤・英語字幕付・リージョン3)

・Amazon.co.jp
DVD『公共の敵』(日本盤)


監督/カン・ウソク
脚本/チャン・ジン
撮影/キム・ソンボク
音楽/チョ・ヨンウク、KAYIP
出演/ソル・ギョング、チョン・ジェヨン、カン・シニル、イ・ムンシク、キム・ナムギル、ヨン・ジェウク、キム・ジョンハク、ユ・ヘジン、キム・ヨンオク、イ・ジヨン

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