Simply Dead

映画の感想文。

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『アメリカン・パロディ・シアター』(1987)

『アメリカン・パロディ・シアター』
原題:Amazon Women On The Moon(1987)

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 ジョン・ランディス監督のインタビュー本「JOHN LANDIS」があまりに面白いので、ここ最近はDVDなどで未見だった作品や、内容をすっかり忘れている作品を駆け足でチェック中。ランディスの作品歴の中ではかなり地味な印象の本作『アメリカン・パロディ・シアター』も、ついこないだ初めてDVDで観てみたら、予想以上に面白かった。

 「月のアマゾネス」という風変わりな原題を持つこの映画は、ランディスの出世作『ケンタッキー・フライド・ムービー』(1977)と同趣向のコメディスケッチ・アンソロジー。1950年代のB級SF映画『月のアマゾネス』のTV放映を観ながらチャンネルをガチャガチャ変えているという設定で、様々なパロディやコントが数珠繋ぎに映しだされる。製作当時、ランディスは別の企画を同時に抱えて多忙だったため、自分のほかに4人の監督を招いて演出を分担。『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983)でも組んだ盟友ジョー・ダンテ、『ジョーズ』(1975)の脚本家で『おかしなおかしな石器人』(1981)を監督したカール・ゴッドリーブ、演出業に進出したばかりの俳優ピーター・ホートン、本作のプロデューサーでもあるコメディ映画専門の製作者ロバート・K・ワイスが共同監督として名を連ねた。

 脚本を手がけたのは、人気番組「ジョニー・カースン・ショー」の構成作家だったマイケル・バリーとジム・マルホランド。スケッチの数が多いので当然ムラはあるが、『ケンタッキー?』よりは洗練されていて粒が揃っている印象。バリーとマルホランドのコンビは、のちにシルヴェスター・スタローン主演の『オスカー』(1991)でもランディスと組み、マイケル・ベイ監督のヒット作『バッド・ボーイズ』(1995)のリライトも手がけた。

 お遊び感覚の小品だが、ランディスのファンなら安心して楽しめる作品に仕上がっている。今観ると、クエンティン・タランティーノ監督が『グラインドハウス』(2007)で追求した、過去の低予算映画の質感を徹底的に再現するという試みがかなりのハイレベルで実現されているパートもあり、そういう意味でも面白い。撮影は『悪魔のいけにえ』(1974)のダニエル・パールが担当し、バラエティに富んだルックを見事に作り出している。多分、映画としての出来やスタッフ・キャストの顔ぶれのわりには、あまり省みられていない作品だと思うので、以下に内容をざっと紹介。(注:ネタバレが嫌な人はスルーしてください!)


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▲「Hospital」より

「Mondo Condo」(ジョン・ランディス監督)
高級マンションの自宅に帰ってきた男(アーセニオ・ホール)が、様々な災難に見舞われる。缶ビールを開けると猛烈な勢いで中身が飛び出し、ディスポーザーにネクタイを巻き込まれて死にかけ、本棚は倒れてくるし、ビデオデッキは故障し、ついには……。ある日突然、自分の部屋に殺されるという、これ以上ないくらいシンプルなスケッチ。サディスティックなスラップスティック・ギャグと軽薄な死をたたみかける、いかにもランディスらしい一編。『星の王子ニューヨークへ行く』(1988)で側近セミーを好演したアーセニオ・ホールの映画デビュー作。

「Pethouse Video」(カール・ゴットリーブ監督)
人気の男性向け雑誌「Pethouse」のトップモデル、タリン。彼女は日常生活でも常にフルヌードで生活している、まさに「Pethouse」モデルになるために生まれてきたような女性だった……。実際に「ペントハウス」誌の人気モデルで、80年代映画のヌード要員としても活躍した女優モニーク・ガブリエルが、全編スッポンポンでカリフォルニアの町中を闊歩するお色気コント。作り物かと思うようなプロポーションの裸体を惜しげもなく披露するガブリエルの演技にも痺れるが、まさしくノータリンなモノローグも秀逸。

「Murray in Videoland」(ロバート・K・ワイス監督)
新しいテレビを買って有頂天のオヤジ(ルー・ジャコビ)が、リモコンをいじっているうちにテレビ画面の中に転送されてしまう。『トワイライトゾーン』のジョー・ダンテ監督編を焼き直したかのようなエピソード。不幸なオヤジはニュース番組に現れたり、ヒューイ・ルイスのPVに紛れ込んだり、モニーク・ガブリエルと泡風呂に入ったり、その後のエピソードにも顔を出したりする。

「Hospital」(ジョン・ランディス監督)
待望の赤ちゃんを授かったミシェル・ファイファーとピーター・ホートン演じる夫婦が、頭のおかしい医者(グリフィン・ダン)の悪ふざけに延々と付き合わされ、しまいには赤ん坊を失くしたと言われて半狂乱に陥る……。ランディス流の悪意みなぎる病院スケッチ。患者をコケにしまくる狂った医者のキャラクターも凄まじいが、出産に際して神経質になっている夫婦のパニックまで容赦なく笑いのめすセンスがすごい。ミシェル・ファイファーは当時の夫だったホートンが監督できることを条件に、この映画に出演したのだとか。

「Hairlooming」(ジョー・ダンテ監督)
新型カツラ「ヘア絨毯」のCM。ハゲ頭の上に絨毯生地を乗っけて、真顔で商品解説をする男を演じるのは『マトリックス』(1999)のジョー・パントリアーノ。

「Amazon Women On The Moon」(ロバート・K・ワイス監督)
本作のタイトルにもなっている、50年代SF映画のパロディ。月へ向かった宇宙飛行士トリオを待ち受けていたのは、シビル・ダニング扮する月の女王が治める女性だけの王国だった! 科学考証無視の強引な設定、ぞんざいな特撮、ベタなキャラクター描写、適当なライブラリー音楽などを駆使し、見事にその時代のダメ映画の雰囲気を再現している。フィルムが傷みまくっているのでブチブチ話が途切れ、その間に別のスケッチが入るという仕組み。個人的には、フォレスト・J・アッカーマン演じるアメリカ大統領と宇宙船内のモニター越しに通信するシーンで、画面の向こう側に宇宙飛行士たちの影がバッチリ映り込んでいるという芸の細かさがツボだった。あと、バックロット(スタジオの裏山)を歩いてるだけの画にやたら大袈裟なBGMが被さるシーンも素敵。

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▲「Blacks Without Souls」より

「Blacks Without Souls」(ジョン・ランディス監督)
ブルースの巨人B・B・キングが「現在アメリカでは7分に1人、ソウルのない黒人が生まれています」と深刻な社会問題を訴える公共CM。共和党員の黒人カップルや、ボルボのステーションワゴンを買うピンプなどが登場し、極めつけは「幸せの黄色いリボン」や「チム・チム・チェリー」を熱唱する黒人青年ドン“ノー・ソウル”シモンズ! 演じるデイヴィッド・アラン・グリアーのあまりに活き活きとしたノー・ソウルぶりが素晴らしい。ここだけでも何度も見返したくなるくらい爆笑した。ジョン・ランディスの真骨頂といえる傑作スケッチ。

「Two I.D.'s」(ピーター・ホートン監督)
セクシーな美女ロザンナ・アークェットとデートできることになった主人公スティーヴ・グッテンバーグ。しかし、いざ出かけようとした時にクレジットカードと免許証の提示を要求され……。「Hospital」にも出演している俳優ピーター・ホートンが監督した、ドラマ色の濃い一編。あまりカメラを動かさないオーソドックスな演出には、ランディスの影響も感じられる。それにしてもムチャクチャいい女だなあ、この頃のロザンナ・アークェット。シチュエーション的になんとなく『アフター・アワーズ』(1986)を思い出さずにはいられない。

「Bullshit or Not」(ジョー・ダンテ監督)
怪優ヘンリー・シルヴァがホスト役を務める歴史検証番組「デタラメか否か」。今回は、謎の連続殺人犯ジャック・ザ・リッパーの正体が実はネッシーだったのでは? という仮説に基づき、事件当夜の模様が再現映像で描かれる。ハリボテの巨大紳士ネッシーのいやらしい目つきが最高。ジョー・ダンテの演出担当エピソードの中ではいちばんオーソドックスに楽しい。

「Critic's Corner」(ジョー・ダンテ監督)
シスケル&エバート風の評論家コンビが出演する映画批評番組を見ながら、「エラそーなことばっか言いやがって」と文句をつけている男ハーヴェイ(アーチー・ハーン)。ところが、評論家コンビはいきなりハーヴェイの人生を批評し始め、凡庸だの退屈だのとコキ下ろす。さらには彼の人生の“意外なラストシーン”まで告げてしまい……。ジョー・ダンテらしい突飛でファンタジック、かつブラックな一編。オチに新鮮味はないけど、この歯切れよさを『レディ・イン・ザ・ウォーター』のシャマランも学んでほしい。主人公の妻を演じるのは、ダンテ作品の常連女優べリンダ・バラスキ。

「Silly Pate」(ロバート・K・ワイス監督)
食べられるパーティーグッズ「シリー・パテ」のCM。内容的にはどうでもいいけど、『遊星からの物体X』(1982)のT・K・カーターや、『ブルース・ブラザーズ』(1980)の音楽を担当したアイラ・ニューボーンらが出演している。

「Roast Your Loved One」(ジョー・ダンテ監督)
先の「Critic's Corner」で死んでしまったハーヴェイの葬儀が教会で行われる。セレモニーのゲストとして人気コメディアンが次々と登場し、故人をネタにくだらないジョークを延々と披露。ついには悲嘆に暮れる夫人までがステージに上がることに……。これこそランディスに撮ってほしかった血も涙もない葬式スケッチだが、ジョー・ダンテはそれをエモーショナルな爽快感のあるイイ話に昇華させている。ダンテ演出の垢抜けなさがプラスに働いた好例。アメリカではそれなりに有名なベテラン芸人が本人役で大挙出演しているが、誰一人として名前が分からず、ひたすら時代錯誤なギャグにも唖然とするばかり……。それよりは、トリを飾るベリンダ・バラスキの芸達者ぶりが見どころ。

「Don 'No Soul' Simmons」(ジョン・ランディス監督)
本作最高のキャラクター、ドン“ノー・ソウル”シモンズが再び登場! 黒人なのにソウルがないというハンディキャップを乗り越え、ポップスシンガーとなった彼のラヴソング・アルバム「Down & Funky」のCM。毒にも薬にもならないポップソングの数々を朗々と歌い上げるドン青年の輝きっぷりときたら! プロモビデオ集とかあったら1時間ぐらい笑っていられると思う。ドン役のデイヴィッド・アラン・グリアーは、マシュー・ブライト監督の『トリックベイビー』(1999)で演じたドスケベ敏腕弁護士も最高だった。同作にはランディスも裁判長役で特別出演している。

「Video Pirates」(ロバート・K・ワイス監督)
海賊ビデオならぬビデオ海賊が登場する、ちょっとテリー・ギリアム風のダジャレスケッチ。大海原を往く海賊団の荒くれ船長が狙いを定めたのは、MCAホームビデオの輸送船。さっそく船を乗っ取ると、中にはVHSやレーザーディスクのお宝がザックザク!(それがどうした) 海賊の親玉を演じたのは『吸血鬼ブラキュラ』シリーズの主演でおなじみ、ウィリアム・マーシャル。

「Son of the Invisible Man」(カール・ゴットリーブ監督)
透明人間化の実験を成功させた父の後を継いだバカ息子(エド・べグリー・Jr.)。彼は自分も透明になったと思い込み、友人の制止も聞かず全裸で街に繰り出すのだった……。カール・ゴットリーブ監督が「Pethouse Video」とまったく同じネタを繰り返し、活き活きとした演出を見せる。『突撃バンパイアレポーター』(1985)のエド・べグリー・Jr.が、ほぼ全編フルチンで主人公を熱演。

「Art Sale」(カール・ゴットリーブ監督)
コスモポリタン美術館が売りに出されることになり、閉店セールを開催。「モナリザ」をはじめ、貴重な美術品の数々が叩き売られるというCMコント。

「First Lady of the Evening」(ロバート・K・ワイス監督)
大統領夫人は元コールガールだった、という内容の三文ベストセラー小説「夜のファーストレディ」のCM。文字サイズはでっかく、難しい言葉も出てきません! というトラッシュ感覚溢れる売り文句は、最近の日本でもあまり洒落になってないような。大人の色香たっぷりのヒロイン役は『ブラック・エース』(1972)などに出演したセクシー女優、エンジェル・トンプキンス。

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▲「Titan Man」より

「Titan Man」(ロバート・K・ワイス監督)
ハクいスケとはこのことだ! と叫びたくなるほど絶頂に可愛かった頃のケリー・プレストンが出ている、ベタベタな童貞コメディ。プレストン演じる目の覚めるような美女をゲットし、童貞喪失寸前にまで漕ぎ着けた17歳のジョージ君(マット・アドラー)。彼女を車に待たせて薬局でコンドームを買おうとするが、「銘柄はタイタンで」と念を押したおかげで、思わぬ災難に巻き込まれるのだった……。他愛ない話だけど、アドラーの健気な熱演のおかげで愛すべきエピソードに仕上がっている。薬局の店長役は『大逆転』(1982)で大富豪を演じたラルフ・ベラミー。

「Video Date」(ジョン・ランディス監督)
親切なレンタルビデオ屋のオッサン(ラス・メイヤー!)に「土曜の夜なのにひとりぼっちか」と言われ、お薦めビデオを借りた男(マーク・マックルーア)。その中身は、巨乳美女が自分の名前を語りかけてベッドに誘ってくれるバーチャル・ポルノだった。ところが……。セクスプロイテーション映画の偉人ラス・メイヤーにオマージュを捧げた一編。ちゃんとビデオ屋のショーウィンドウや店内に『スーパーヴィクセン』のポスターが貼ってあるところがエラい。極端に台詞を削ぎ落としたシンプルな語り口もクール。『フォード・フェアレーン』でおなじみのアンドリュー・ダイス・クレイも出演。

「Reckless Youth」(ジョー・ダンテ監督)
エンドロール後に始まる最後のエピソード。若者の堕落や退廃を阻止する教育映画の名目で作られたエクスプロイテーション・ムービーのパロディ。精神科医ポール・バーテルのもとを訪れた患者キャリー・フィッシャーは、自分が上京してから味わってきた悪徳の数々を、赤裸々に告白する……。『グラインドハウス』的な過去作品のニュアンス再現という意味では、このエピソードの完成度が最もすごい。特にカメラワーク、そしてキャリー・フィッシャーの棒読み台詞がもう完璧。筋金入りの映画オタク、ジョー・ダンテの底力に打ちのめされる強烈なフィルム。

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▲「Amazon Women On The Moon」より

 DVDには特典映像として、本編からカットされたエピソードやNGシーン集などが収録されている(日本語字幕がないのが困りもの)。ピーター・ホートン監督の未公開エピソード「The Unknown Soldier」は、ベトナム戦争時に上官たちの口車に乗せられて自ら死を選ぶことになる若い兵士の物語。ジョン・ランディスは「もっとテンポよく突き放した演出なら本編に残したかもしれないけど、ホートンは葬送歌のようにシリアスに演出してしまった。だからカットしたんだ」とインタビュー本で語っている。ホートンはその後、シリアス系の演出家に転向し、日本でもヒットした『マイ・フレンド・フォーエバー』(1995)の監督や、人気ドラマ『グレイズ・アナトミー』の製作総指揮・演出などを手がけている。

 もう1本の未公開エピソードは、ジョー・ダンテ監督の「French Ventiloquist's Dummy」。空港で人形を取り違えてしまった腹話術師の災難を描くスケッチで、主演はダンテ作品の常連俳優ディック・ミラー。彼は仕方なく自分の相棒ではない人形とステージに上がるのだが、人形はフランス語しか喋ってくれない……。どうしてカットしたのか分からないくらい、普通によくできたエピソードだった。

・Amazon.co.jp
DVD『アメリカン・パロディ・シアター』
洋書「John Landis」 by Giulia D'Agnolo Vallan

製作/ロバート・K・ワイス
製作総指揮/ジョージ・フォルシー・Jr.、ジョン・ランディス
監督/ジョン・ランディス、ジョー・ダンテ、カール・ゴットリーブ、ロバート・K・ワイス、ピーター・ホートン
脚本/ジム・マルホランド、マイケル・バリー
撮影/ダニエル・パール
編集/マルコム・キャンベル、マーシャル・ハーヴェイ、バート・ロヴィット
出演/たくさん

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