Simply Dead

映画の感想文。

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『Dan In Real Life』(2007)

『Dan In Real Life』(2007)

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 男手一つで3人の娘を育てているシングルファーザーが、帰省先でたまたま出会った女性と恋に落ちる。しかし、彼女は弟のガールフレンドだった……。『40歳の童貞男』(2005)でブレイクし、『ゲット・スマート』(2008)でドル箱スターの地位に上りつめた喜劇俳優、スティーヴ・カレル主演のハートウォーミング・コメディ。個人的に役者として大好きなカレルの主演作ということもあるけど、なかなかの拾い物だった。監督は『エイプリルの七面鳥』(2003)のピーター・ヘッジス。ヒロインをジュリエット・ビノシュが演じている。

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〈おはなし〉
 ニュージャージーの地方新聞で人生相談コラムを担当しているダン・バーンズ(スティーヴ・カレル)。妻に先立たれて以来、男手一つで3人の娘たちを育ててきた。が、いろいろと苦労は絶えず、彼の方こそ人生相談を受けた方がいいような毎日を送っている。そんなある日、ダンは毎年恒例のファミリー・リユニオンのため、娘たちを連れてロードアイランドの実家へ。父母や兄弟、その家族たちが再会に沸く中、やはり自分だけがどこか浮いている感の拭えないダン。

 ある時、地元の本屋へ出かけたダンは、そこで魅力的な女性マリー(ジュリエット・ビノシュ)と出会う。初対面とは思えないほど会話が弾み、互いに好感を抱いて別れたふたり。いつになく浮き足立って実家に戻ったダンを待っていたのは、なんとマリーその人だった。彼女はダンの弟ミッチ(デイン・クック)のガールフレンドとして招かれていたのだ。

 ダンもマリーも、すでに顔見知りであることをなんとなく言い出せないまま、にぎやかな家族団欒の時が流れていく。ダンは彼女への気持を隠そうとすればするほど挙動不審になり、そのうち家族に心配され始める始末。一方、マリーの心も同じように揺れていた。互いの想いを無理やりに隠し続けるふたりは、ついに……。

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 北東部の美しい海岸の町を舞台に、家族の再会の場で起きるドラマを描いているという点で、個人的にはノア・ボーンバッハ監督の秀作『マーゴット・ウェディング』(2007)と印象がダブった(あちらの舞台はニューヨーク州ロングアイランド)。もちろん、『Dan In Real Life』はディズニー傘下のタッチストーン製作なので、『マーゴット?』ほどビターに寒々しく、リアルな家族間の痛みをえぐりだす映画ではない。基本的には善良な人しか登場しないファミリーコメディであり、映画的なラブ・ロマンスの要素をしっかり携えた大衆向けの娯楽映画である。ただ、そこには男やもめの生活の苦労や、家族の団欒の中にどうしても溶け込めない人間の孤立感などが、真実味をもってデリケートに描かれている。その普遍的なリアリティとフィクショナルな物語性を、この映画はとてもバランスよく、いい具合に折衷させているように思えて、好感が持てた。“家族の空気”を描くのが巧いピーター・ヘッジス監督ならではの味だろう。

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 そして、そのリアリティを支えているのが、スティーヴ・カレルの表情と佇まいだ。元々が深刻な顔つきのカレルは、ハイテンションなコメディ演技よりも、シリアスな芝居の方が向いている。実際、抜群にうまい。ウィル・フェレルやジム・キャリーなどと比べても、役者としてのポテンシャルは段違いに高いと思う。だから『エヴァン・オールマイティ』(2007)は、前半のギャグ芝居から後半の「使命に憑かれた表情」へと一転するカレルの顔だけで泣かせる、前作とは比べ物にならない秀作になった。その辺を分かってないと『ゲット・スマート』みたいに単純な飛び道具扱いになってしまうのだけど……。逆に、メーターの振っ切れた方向でのカレルの最高作は、リメイク版『奥さまは魔女』(2005)のアーサーおじさん役だと思う。あれは本当にすごかった。

 話がずれたが、『Dan In Real Life』のスティーヴ・カレルは本当に素晴らしい。父親としての立場と、道ならぬ恋に狂う衝動の間で揺れる主人公を、絶妙なバランスで演じている。シリアスな表情とコミカルな芝居との配分が、本作ではちょうどいい。何より「途方に暮れる中年男」をこんなに愛らしく演じられる俳優はいないと思うし、出世作となった『40歳の童貞男』でも発揮された独特のピュアネスが、この映画でも見事に活かされている。中でも、家族がそれぞれ一芸を披露していくお楽しみ会のシーンは、落涙必至の名場面。弟がガールフレンドのためにラブソングを歌うというので、カレル扮する主人公が渋々ギターで伴奏を務めることになる。が、やがて彼の演奏は熱を帯びていき、我知らず彼女への真情を吐露してしまう……というシーン。演出も非常に巧くて、感心してしまった。

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 主人公を取り巻く家族たちの人物造形もしっかり描かれていて、それも作品を豊かにしている。3人の娘たちのキャラもそれぞれ立っていて、各々の性格がストーリー展開にちゃんと関わってくるあたりも巧い。クレバーな長女役のアリソン・ピル、反抗期の次女役のブリタニー・ロバートソン、可愛らしい三女役のマーリーン・ローストンと、演じる子役もみんな芸達者。ちなみにマーリーンちゃんは『フライトプラン』(2005)でジョディ・フォスターの娘役を演じていた女の子である。主人公の恋敵となってしまう弟ミッチを演じるデイン・クックも「こいつを裏切ったら可哀想だろー」というイイやつ感を見事に醸し出していて好印象。

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 そして、ジュリエット・ビノシュが意外なくらいロマコメのヒロイン役にハマっていたのも驚きだった。全く重苦しい印象にならず、自然体で都会的女性を演じていて、カレルとのカップリングにも違和感がない。例のイルカみたいな笑い声もいっぱい聞けるので楽しい。さらに、後半で登場する第2のヒロイン(?)、エミリー・ブラントが、出番は少ないながらも鮮やかな印象を残す。さすが『プラダを着た悪魔』(2006)直後で乗りに乗っているだけある。

 実際にロードアイランドで撮影された美しいロケーションも本作の見どころ。こんなところに住んでみたいなあと思わせる景観がいっぱいだ。また、ノルウェー生まれのシンガーソングライター、ソンドレ・ラルケによる温かな音楽も忘れ難い(エンディングでは出演も)。

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 ちょっと褒めすぎな感じになってしまったが、欠点がないわけではない。特に、主人公とヒロインが最初に本屋で出逢うシーンは、もうちょっと上手に見せられたんじゃないだろうか? とは思う。見ず知らずのふたりが瞬時に心を通わせ合う場面にしては、ちょっと説得力に欠けるのだ。この監督は家族を描くのは上手でも、ラブシーンは不得手なのかもしれないと思った(後半はしっかり挽回するけど)。他にも、ちょっと「それは言わねーだろー」と思ってしまうような大袈裟な台詞とか、やや御都合主義すぎる展開もなくはない。まあ、あくまで愛すべき佳作としてみれば、それらの部分も許容範囲内だと思う。

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 内容は全然違うけど、印象的には『マーゴット?』のライト版みたいな感じ(こんなことを言ったらボーンバッハ好きに叱られるだろうか)。俳優スティーヴ・カレルのファンとしては、DVDスルーでもいいから日本でも紹介されてほしい。いい映画だと思うんだけどなー。

・DVD Fantasium
DVD『Dan In Real Life』(米国盤・リージョン1)
Blu-ray『Dan In Real Life』(米国盤)


監督/ピーター・ヘッジス
脚本/ピアース・ガードナー、ピーター・ヘッジス
撮影/ローレンス・シャー
プロダクションデザイン/サラ・ノウルズ
音楽/ソンドレ・ラルケ
編集/サラ・フラック
出演/スティーヴ・カレル、ジュリエット・ビノシュ、デイン・クック、アリソン・ピル、ブリタニー・ロバートソン、マーリーン・ローストン、ジョン・マホニー、ダイアン・ウィースト、エミリー・ブラント

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