Simply Dead

映画の感想文。

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『ブラッド・ブラザーズ ―天堂口―』(2007)

『ブラッド・ブラザーズ ―天堂口―』
原題:天堂口(2007)

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 1930年代の上海を舞台にした、中華版『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』。成功を夢みて田舎から出てきた3人の若者が、暗黒街に身を投じて血塗られた運命を辿るという古風なギャング映画だ。ジョン・ウーが製作に参加し、これが初長編となる新鋭アレクシ・タンが監督を務めた。主人公を演じるダニエル・ウーを始め、スー・チーやチャン・チェンといった美男美女スターの競演、ムードたっぷりの映像美も見どころ。2月から日本でも劇場公開されるのに気付かなくて、香港盤DVDで先に観てしまった。

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〈おはなし〉
 1930年代の中国。貧しい村に育ったフン(ダニエル・ウー)は、都会に出て一旗あげようという親友のカン(リウ・イエ)に誘われ、カンの弟フー(トニー・ヤン)と3人で村を出て大都市・上海へ。欲がなく真面目なフンは車夫として働くが、出世の糸口など見つからず、気弱なフーも同様に冴えない日々を送っていた。一方、野心満々のカンは高級ナイトクラブ「天堂口」のウェイターとして働きながら、オーナーである暗黒街の大物ホン(スン・ホンレイ)とのコネを得る。

 カンの勤めるクラブに招かれたフンは、ステージで歌う絶世の美女ルル(スー・チー)に一目惚れ。だが彼女はホンの愛人であり、ひそかに殺し屋マーク(チャン・チェン)とも関係を持っていた。マークはルルを愛するあまり、忠義を尽くしてきたホンを暗殺しようとするが、未遂に終わる。

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 フンとフーは、カンに強引に引っ張られるかたちでギャングに仲間入り。フンはその純朴さと実直さで、ルルやマークと親交を深めていく。だが、暗黒街の非情な掟は次第に彼らの心を蝕んでいき、フーは酒に溺れ始める。そんな中、凶犬ヤクザとして着実にトップの座へと上りつめていくカン。共に兄弟のように育ち、楽園での生活を夢みた3人の絆は、いつしか最悪のかたちで引き裂かれようとしていた……。

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 お話はもう本当に「ただセルジオ・レオーネがやってみたかっただけ」と言っていい内容で、ストーリー展開にもキャラクター造形にも新味はない。音楽もまるっきりエンニオ・モリコーネ調。ジョン・ウーならそこに過剰な思い入れとロマンティシズムを投入して(例えば『ディア・ハンター』を『ワイルド・ブリット』にしてしまったように)傑作に仕上げてしまうところだけど、アレクシ・タンの演出はやや平板で掘り下げが甘い。うねるような暗黒街のメロドラマを描くには粘りに欠け、上っ面をなぞるので精一杯な感があった。役者の演技と立派な美術に頼りすぎていて、独自性のある演出が感じられない。人物のエモーションを俳優の「顔」でしか伝えようとしない凡庸さも気になった。

 それに、どうやらガンアクションやバイオレンスにさほどこだわりがないらしく、見せ場は多いのに個々の描写がいまひとつ魅力的でなく、パンチ不足なのが残念。いちばん大事なクライマックスの銃撃戦でさえ、緊張感や迫力に乏しいのは大きなマイナスだ。ジョン・ウー製作という看板に惹かれて、そっち方面で期待すると肩透かしを食うかも。

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 その代わり、映像は非常に美しい。戦前の上海を再現したオープンセット、セクシーな美女たちが舞い踊るナイトクラブなど、ゴージャスなビジュアルの数々を眺めているだけで元は取れる。役者も全員ことごとく綺麗に撮られていて、特にファム・ファタールを演じるスー・チーの美しさは絶品だ。今までに観た彼女の出演作のなかで、いちばん綺麗なんじゃないかと思った。ダニエル・ウー、チャン・チェンの端正な美男子ぶりも、クラシカルな様式的作品世界の中でいっそう際立っている。ギャングのボス役、スン・ホンレイの存在感も光っていた。

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 95分というコンパクトな尺どおり、エピックと呼ぶには物足りない作品だけど、「気分」だけは十分に味わえるので、お好きな方にはお薦め。しかし、こういう映像美で見せる映画を、シネマート六本木でデジタル上映しかしないってのは……。


製作/ジョン・ウー、テレンス・チャン
監督/アレクシ・タン
脚本/アレクシ・タン、ジアン・ダン、トニー・チャン
撮影監督/ミシェル・タブリオー
プロダクションデザイン/ヤウ・ワイミン
衣装デザイン/ティム・イップ
アクション監督/フィリップ・コク
音楽/ダニエル・ベラルディネリ
出演/ダニエル・ウー、スー・チー、チャン・チェン、リウ・イエ、トニー・ヤン、リー・シャオルー、スン・ホンレイ
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