Simply Dead

映画の感想文。

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『Futurama:Bender's Game』(2008)

『Futurama:Bender's Game』(2008)

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 31世紀の未来を舞台にしたSFコメディアニメ『Futurama』の長編OVAシリーズ第3弾。突然のTVシリーズ打ち切りから数年を経て、ファンの熱い要望に応えて再開された長編4部作も、ついに後半戦に突入。今回は世界最初のRPGであり、現在も数多くのファンを持つ卓上アドベンチャーゲームの古典『Dungeons and Dragons(以下、D&D)』にオマージュを捧げた内容で、主人公フライを始めおなじみの面々がファンタジー世界にトリップしてしまう。もちろん『Futurama』らしい本格SFのテイストも加味されたトリッキーなプロットが楽しい一編だ。タイトルはネビュラ賞・ヒューゴー賞をダブル受賞したオースン・スコット・カードのSF小説『エンダーのゲーム』のもじり。

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〈おはなし〉
 31世紀になってもポピュラーなゲーム『D&D』。夢中になって遊ぶ子供たちから「想像力がない」とバカにされたベンダーは、仲間に入れてもらってすっかり『D&D』にハマってしまう。しかし、初めてイマジネーションを酷使したせいでファンタジーと現実の区別がつかなくなり、普段に増して異常な言動を繰り返すように。ついには精神病院に送られてしまった……。

 一方、高純度燃料ダークマター(宇宙人ニブロニアンのフン)の価格が高騰し、プラネット・エクスプレス社は火の車状態。市場は実業家ママの率いる「マムビル(Mombil)」に牛耳られていた。実は、最初にダークマターからパワー増幅源となるクリスタルを生成し、その威力を引き出したのはPE社の社長であるファーンズワース教授だったのだ。同時に、その力を無効化するアンチクリスタルも生まれていたのだが、今では子供たちが『D&D』のサイコロとして使っていた。

 色々あってアンチクリスタルを見つけた教授たちは、ママの横暴を食い止めるべく、アラスカのダークマター生産工場に乗り込む。様々な妨害をくぐり抜け、厳重に管理されたクリスタルとアンチクリスタルを近付けた時、病院でロボトミー手術を受けていたベンダーが感応(腹にダークマターを溜め込んでいたのだ)。世界に亀裂が入り、気が付くとその場にいた全員がファンタジーゲームの世界にトリップしていた!

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 個人的にゲームは全くやらないので、予告編を観た時には正直「ノらないなあ……」と思っていたのだけど、予想以上に面白かった。この話とあの話がどう繋がってその展開になるんだ? という捻り方では、前作『Futurama:The Beast with A Billion Backs』(2008)よりも驚きがあり、流れもスムースだった気がする。今回はパートごとにシナリオライターを完全に分けているらしく、それが功を奏したのか(長編シリーズはのちに4エピソードに分けてTV放映することを念頭において作られている)。後半のファンタジーパートに入るまで時間をかけすぎている感はあるが、それだけに説得力が増し、ゲームに興味のない人にも楽しめる内容になっているのがいい。アニメーションとしても長編ならではの見応えがあり、特に3Dと2Dの巧みなミックスで描かれたアラスカでのアクションシーンは一見の価値あり。

 荒っぽい行動のせいで暴力衝動を抑えるため電撃首輪をされてしまうリーラ、ゲーム脳になってしまい現実を見失うベンダーの混乱を描くサイドストーリーでは、メンタル面でブレーキの利かない現代社会への風刺も匂わせる。相性の悪いリーラとゾイドバーグ、ファーンズワース教授とイグナー(ママのバカ息子たちの末弟)という、これまであまり絡まなかったキャラ同士の組み合わせでドラマが紡がれるのも、新鮮で魅力的。シリーズも結構な年月で続いているのに、ゾイドバーグの傍若無人なのにキュートなキャラが新作ごとにどんどん輝きを増していくのは何故?(笑) ジョン・ディマジオが演じる気弱な末っ子イグナーは、今まで影は薄いながらも何気にいい味を出していたので、今回やっとドラマが与えられたのが個人的には嬉しかった。

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 後半の見どころはやはり、ファンタジー世界の住人になったキャラクターたちの変身ぶり。ベンダーは中世の騎士に、リーラとハーミーズはケンタウロスに、ファーンズワース教授は魔法使いに、ゾイドバーグは巨大ロブスターのような怪物に、エイミーはセイレーンになってしまう。当然、本格的ファンタジーへのオマージュということで『ロード・オブ・ザ・リング』のパロディも満載。特にアンチクリスタルの魔力に魅入られ、ゴクリ化するフライが最高(笑)。ファンタジーが暴力と欲望に満ちたハードな世界であることもきっちり描かれている。やりすぎなくらいのバイオレンス描写がなかなか強烈だ(ちゃんと物語としての意味もある)。

 小ネタも随所にちりばめられ、マニアックなところではドキュメンタリー映画『悪魔とダニエル・ジョンストン』(2006)でも知られるテキサス在住のミュージシャン、ダニエル・ジョンストンの「Rocket Ship」がカバー・ヴァージョンで唐突にフィーチャーされたりする。オープニングの『ザ・ビートルズ/イエロー・サブマリン』(1968)へのオマージュも素晴らしい出来で、似たようなことをしていた『ウォーク・ハード/ロックへの階段』(2007)なんかとはパロディの質も完成度も大違い(こっちはプロの作品だから当たり前なんだけど)。地下に住むリーラの両親、狂人ロボットのロベルト、ロボット界のスター・カルキュロンなど、ファンにはおなじみのサブキャラクターたちの登場も楽しい。

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 何より、クリエイター陣の『D&D』に対する愛情がひしひしと伝わってくるのが微笑ましい。ちょっと衒いがなさ過ぎて鬱陶しいくらいだが、オタクなのでしょうがない。今回の『Bender’s Game』自体、2008年3月に逝去した『D&D』の作者の一人、ゲイリー・ガイギャックスに捧げられている。彼は『Futurama』第2シリーズのハロウィン・エピソード「Anthology of Interest I」に本人役でカメオ出演したこともある。DVDのオーディオコメンタリーでは、『D&D』プレイヤーの製作総指揮デイヴィッド・コーエン、ベンダー役の声優ジョン・ディマジオらが、他のメンバーそっちのけでゲーム談議に花を咲かせる一幕も。

 2009年2月リリース予定の第4弾『Futurama:Into the Wild Green Yonder』をもって、『Futurama』長編シリーズもひとまず終了。今回は登場しなかったザップ・ブラナガン艦長やキフも顔を揃えるオールスター総進撃な内容になりそうなので、終わってしまう寂しさはありつつも、発売が待ち遠しい。

・Amazon.co.jp
DVD『Futurama:Bender's Game』(米国盤・リージョン1)
Blu-ray『Futurama:Bender's Game』(米国盤)


製作総指揮/マット・グレーニング、デイヴィッド・X・コーエン
監督/ドウェイン・ケイリー=ヒル
原案/エリック・ホーステッド、デイヴィッド・X・コーエン
脚本/エリック・ホーステッド(パート1・2)、マイケル・ロウ&エリック・カプラン(パート3)、デイヴィッド・X・コーエン&パトリック・M・ヴェローネ(パート4)
アニメーション制作/ラフ・ドラフト・スタジオ
音楽/クリストファー・ティン
出演/ビリー・ウェスト、ケイティ・セガール、ジョン・ディマジオ、ローレン・トム、フィル・ラマー、モーリス・ラマーシュ、トレス・マクニール、デイヴィッド・ハーマン、フランク・ウェルカー
特別出演/リッチ・リトル、ジョージ・タケイ、ゲイリー・ガイギャックス

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