Simply Dead

映画の感想文。

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『セックス・カウントダウン』(2007)

『セックス・カウントダウン』
原題:Sex and Death 101(2007)

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 『ヘザース』(1989)や『バットマン・リターンズ』(1992)の脚本家として知られるダニエル・ウォーターズが、自ら監督・脚本を手がけた艶笑喜劇の秀作。「自分が一生のうちにセックスする相手全員のリスト」を手に入れてしまうという奇抜な設定で、軽佻浮薄な主人公のセックス遍歴をきわどいギャグ満載で描きつつ、愛と性をめぐる味わい深いドラマも盛り込んで泣かせるあたり、さすがの腕前だと思った。近年は表立った活躍が見られなかったが、本作を見る限りその力は衰えていない。むしろ円熟味を感じさせる逸品だった。ウォーターズの出世作『ヘザース』に主演したウィノナ・ライダーが、重要な役どころで出演しているのも感動的。

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〈おはなし〉
 ハンサムな青年実業家ロデリック(サイモン・ベイカー)は、数日後に結婚を控え、ビジネスも軌道にのって順風満帆の生活を送っていた。だが、ある日パソコンに届いた一通のメールが、彼の運命を一変させてしまう。“万物を司る大いなる意思”の些細なエラーで弾き出されたその文面には、ロデリックが一生のうちにセックスする相手の名前と人数が記されていたのだ。その数なんと101人! しかも婚約者の名前があったのは、まだリストの半分もいかない箇所だった。

 最初は誰かのいたずらかと思っていたロデリックだったが、バチェラーパーティーで起きた“偶然の事故”をきっかけに、そのリストが本物ではないかと信じ始める。いろいろ考えた末、彼は潔く婚約を破棄。そこへ次々と女性たちが吸い寄せられるように現れ、ロデリックの夢のプレイボーイ生活が幕を開ける。その先に悪夢が待ち受けているとも知らず……。リストの最後に記されていたのは、セックスした相手を永遠の眠りにつかせる“死の天使”デス・ネル(ウィノナ・ライダー)の名前だった!

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 何しろ、シナリオが本当に面白い。基本的にはもちろん、主人公が様々な女性たちと情事を重ねていくバリエーションの面白さで見せていく話になるのだけど、その作りがやっぱり巧い。それぞれのシチュエーションにも必ず何かしらツイストやドラマ性が加えてあって、細かいギャグも洒落がきいている。もちろんウォーターズ持ち前のシニカルで攻撃的なセンスも健在(とびきりの美人と出会っても、リストに名前がないと知ったとたんに興味が失せる、とか)。次の相手は誰か、あと何人で終わりなのか(つまり殺されてしまうのか)? という部分でも秀逸なアイディアをふんだんに盛り込み、ハラハラさせつつ笑いに導く手腕が見事だ。後半、カウントが終わりに近づいていってノイローゼに陥る主人公の描写もたまらなくおかしい。ちょっと時事ネタも入った(?)スクールバスのくだりは最高。

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 キャラクターも端役に至るまでしっかり魅力的に描き込まれ、その他大勢の描写にも愛を感じた(たまにちょっとクドイくらいだけど)。一方で、肩肘張らないコメディ映画らしく力を抜くところはテキトーに抜いて、そのさじ加減もいい。まあ、演出的にはユルイところも少なくないが、確かなコメディセンスとストーリーテラーとしての才能は誰が見ても明らかなので、安心して見ていられる。

 中盤、女漁りに飽き始めた主人公が理想の女性ミランダと出会い、彼女こそ運命のパートナーだと信じて一度はリストを捨てるのだが……というエピソードが、やはり素晴らしい。ちゃんとリアリティをもって恋愛の真実を描ける作家の強みが表れていると思うし、身近な相手に片思いしたことのある人なら誰でも深く共感してしまうであろう痛みを、切なくもおかしく真実味をもって描いている。そのオチも秀逸だ。まさか××(未遂)シーンがこんなにも胸に迫る、人間のどうしようもない性を見つめた、爆笑必至のギャグシーンになるとは! ユルグ・ブットゲライトもびっくりだろう。

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 そして、なんといってもこれはサイモン・ベイカーの映画である。この藤子不二雄マンガのごとくヘニャけた顔の色男の魅力を、本作は初めて最大限に引き出したのではないだろうか。今まで『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005)の主人公や、『プラダを着た悪魔』(2006)のヒロインの相手役を演じてもイマイチ影が薄い感じだったけど、映画ファンは本作を観て「ああ、意外に芝居の幅が広い、いい役者なんだなあ」と気付いてほしい。ギャグ一歩手前のハンサムぶりも、コミカルな顔芸も、見かけによらない演技力も、全て惜しげなく披露している。

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 味のあるバイプレイヤー陣の好演、そして脱ぎっぷりのいい美女たちの登場も見どころ。中でも、本作の実質的メインヒロインといえるミランダ役のレスリー・ビブが飛び抜けて素晴らしい。聡明でユーモアがあって底抜けに明るくてセクシーで、主人公が“運命の相手”だと確信するキャラクターを説得力十分に演じている。こういう“知性とユーモアセンスを兼ね備えた人物”という芝居は、役者本人の中にそういう資質がないと嘘っぽくなると思うのだけど、レスリー・ビブはそれをとても自然に演じてのけている。美人ジャーナリスト役で出演していた『アイアンマン』(2008)でも、それほど大きな役ではないにもかかわらず、少ない出番で鮮やかな印象を残していたから、ファンになった人も多いのではないだろうか。公開待機中の出演作『Midnight Meat Train』が楽しみである(でも北村龍平の演出じゃなあ……)。

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 ポスターに大きく写っているウィノナ・ライダーは、実は特別出演扱い。出番も少ないし、妖艶なセックスキラーというまるで似合わない役を、半ば自虐的ギャグとしてお遊び感覚で演じている雰囲気も漂う。だから後半では彼女の登場シーンに全然期待しなくなるのだが、ウォーターズはそこで最大の見せ場を仕掛けるのだ。女優ウィノナ・ライダーの魅力なしには、その演技力なしには成立しないような、素晴らしい「会話シーン」を。今まで荒唐無稽なセックス喜劇として快調に進行してきたのに、クライマックスが地味な会話シーン? という驚きとともに、やっぱりウォーターズにとって彼女は特別な存在なんだと実感できる、素敵なシークェンスだった。この場面のウィノナ・ライダーは、本当に美しい。ハリウッドの一時代を築いたミューズでありながら、現在は諸般の事情で不遇をかこっている天性の女優に、最後の最後でちゃんと花を持たせるその愛情に、思わず涙が滲んだ。

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 セックスコメディとしては、最近ではよく頑張っていた部類の『噂のアゲメンに恋をした!』(2007)なんかとは比較にならないくらい、あるいはロブ・シュナイダー主演の名作『デュース・ビガロウ、激安ジゴロ!?』(1999)にも勝るほど、上出来の作品。ウォーターズ作品が好きな人なら絶対にチェックしなければならない秀作だし、何も知らずにレンタル店で手にとっても拾い物だと思える、良質の映画だと思う。

・Amazon.co.jp
DVD『セックス・カウントダウン』


製作/ケーリー・ブロコウ、リジー・フリードマン、グレッグ・リトル
監督・脚本/ダニエル・ウォーターズ
撮影/ダリン・オカダ
プロダクションデザイン/ジョン・ラレナ
編集/トルーディ・シップ
音楽/ロルフ・ケント
出演/サイモン・ベイカー、レスリー・ビブ、ウィノナ・ライダー、ミンディ・コーン、タンク・セイド、パットン・オズワルト、ロバート・ウィズダム、フランセス・フィッシャー、ソフィー・モンク、ジェシカ・カイパー、マーシャル・ベル

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