Simply Dead

映画の感想文。

『パブリック・エナミー・ナンバー1』(2008)

『パブリック・エナミー・ナンバー1』
原題:Mesrine: L'instinct de mort[Part1]、
Mesrine: L'ennemi public n° 1[Part2](2008)

mesrine-cassel.jpg

 東京国際映画祭2008コンペティション出品作品。パリのクリシーに生まれ、1960?70年代にかけて強盗・誘拐・殺人・脱獄とあらゆる犯罪を重ねた実在のギャングスター、ジャック・メリーヌの半生を描いた実録犯罪映画。“公共の敵ナンバーワン”と呼ばれ、権力を敵に回して破天荒な生きざまを貫いた男を、ヴァンサン・カッセルが熱演している。2部構成・全4時間6分という力作だ。

 ただ、つまらない。4時間もの尺をどう見せていくかという工夫もなく、単に長いだけで普通のギャング映画にしかなってない。たとえば『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ《完全版》』(1984)『ゴッドファーザーPartII』(1974)のように、長尺作品ならではのじっくりしたシーン演出とか、思いきった時間構成をしてやろうとかいう大胆な試みがあれば、もっと面白くなったと思う。あるいは『裏切りの闇で眠れ(暗黒街の男たち)』(2007)みたいに、イヤガラセまがいの残虐描写をガンガン入れたり、何かしら目の覚めるような特色があればよかったのだけど、それも見当たらず。まあ、ヘタしたらR指定になりそうなセックス&バイオレンス描写も散りばめられてはいるけど、総じてパンチに欠ける。TVのドラマスペシャルか、ギャング映画2本立てと大して印象が変わらず、ちょっと映画的な意欲に乏しい気がした。

 「とにかくジャック・メリーヌという男の人生がそのままでも充分に面白すぎるから、快調に見せていけば観客も4時間ついてくるよ」という作り手の思い上がり、題材への依存が、傑作に化ける可能性を本作から奪ってしまった。だから、それなりにテンポよくは作ってあるものの、演出が一本調子なのでだんだん飽きてくる。後半はもう、錚々たる助演陣がどこでどんな役で出てくるか、という興味でしか付き合っていられない。同じような時代背景で、作りも似たような映画だけど、イタリアのミケーレ・プラチド監督の『野良犬たちの掟(犯罪小説)』(2005)の方が、ずっと好感が持てた。というか、かなり影響されてるような気がする。

mesrine-bandits.jpg

 どちらかというと、ずさんな暗黒街ものでしかない第1部『L'instinct de mort』よりも、メリーヌが一匹狼の反体制主義者と化していく第2部『L'ennemi public n° 1』の方が面白かった。『ジェヴォーダンの獣』(2001)でもカッセルと共演していたサミュエル・ル・ビアンが強盗仲間のアルドワン役で登場し、『フロンティア』(2007)での度肝を抜く変貌ぶりから元の姿に戻っていて、ひと安心。売れっ子マチュー・アマルリックは、ストイックで神経質な脱獄のプロ、フランソワ・ベスを異様な眼力で妙演。作品に効果的なアクセントを添えている(だから彼が途中退場してしまうと、映画がどんどんもたなくなっていく)。

 ハッキリ言って、出ている俳優のファン以外は、観ても観なくてもどうでもいい作品。スタッフが誰とか全然チェックせず観に行ってしまったのだけど、監督はあの凡作『アサルト13/要塞警察』(2005)のジャン=フランソワ・リシェだった。くそう、知ってたら観なかったのに……。


監督/ジャン=フランソワ・リシェ
脚本/アブデル・ラウーフ・ダフリ
台詞/ジャン=フランソワ・リシェ、アブデル・ラウーフ・ダフリ
撮影/ロバート・ガンツ
編集/ビル・パンコウ
音楽/マルコ・ベルトラミ、マーカス・トランプ
出演/ヴァンサン・カッセル、セシル・ド・フランス、リュディヴィーヌ・サニエ、ジェラール・ドパルデュー、ジル・ルルーシュ、エレナ・アナヤ、フランソワ・トマッサン、ロイ・デュプイ、サミュエル・ル・ビアン、マチュー・アマルリック、ジェラール・ランヴァン、オリヴィエ・グルメ、ミシェル・デュショーソワ


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