Simply Dead

映画の感想文。

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『僕らのミライへ逆回転』(2008)

『僕らのミライへ逆回転』
原題:Be Kind Rewind(2008)

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 期待外れ。アイディア100点・演出35点みたいなハンパな出来だった。ミシェル・ゴンドリー監督の喜劇センスのなさには、ほとほと呆れ果てた。

 VHSしか置いてない時代遅れのレンタルビデオ屋で、ある日テープが全てオシャカになってしまう。困った店員とその友人は、苦し紛れにビデオカメラを使って即席リメイク映画を作り始める……というストーリーの着想は素晴らしい。でも、それをコメディとして活かしきれていないのだ。とてつもなくバカバカしい話のはずなのに、語り口がたどたどしくて、どうにも弾けきらない。はなっから人情ものに寄りすぎているのもどうかと思った(序盤は軽い伏線程度にして、あとで方向転換したっていいのに)。ジャック・ブラックやモス・デフが演じるキャラクターの造形も、紋切り型でインパクトに欠ける。このキャストと筋書きなら、いくらでも面白くできるところでそうしない歯がゆさ、演出力不足が終始つきまとう映画だった。

 見どころがないわけではない。製作費10円レベルで、いかにして『ゴーストバスターズ』や『ラッシュアワー2』をリメイクするか? という無謀なトンチを描く部分は、この映画における最大の見どころ。ボンクラ2人組のひたむきな努力と奇想天外な発想によって再現されるのは、あらゆる特殊効果や映画語法の原点となったプリミティヴな映像トリックの数々だ。デジタル全盛時代の今、作り手も観客も忘れがちな映画の原初的な楽しさを、チープな素人ビデオ映像を通して観客に思い出させてくれる。それらのアイディアはとても秀逸だし、特に中盤、主人公たちがリメイクビデオを量産していく過程をワンカットの長回しで撮ったシーンは、ゴンドリーの本領発揮と言える名場面だ。

 ただ、そういった単発的な思いつき、奇抜な映像トリックを考える才能には秀でているものの、映画全体の流れ、シーンの繋がりなどに関しては、やっぱり未熟としか言いようがない。要するに「おもしろビデオ作家」なのである。だから映画っぽくない映画……キテレツな画の連なりで物語を成立させた『エターナル・サンシャイン』(2004)のような作品や、PVサイズの短編がいちばん向いているのだ。

 感動的であるはずのクライマックスも、思ったほどは盛り上がらない。ヘタだから。何を撮っても映画にならない人間が、映画愛を語ることの虚しさが、逆にひしひしと伝わるラストになってしまった。今回ばかりは原案とか特殊効果だけ担当して、演出や脚本は他の人に任せた方がよかったのではないか。

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 そもそもネタにする作品のセレクトがぬるい! まあ、映画オタクのために作ったわけではなく、日々娯楽を求めてビデオ屋にやってくる市井の人々を描いた映画だから、別にいいんだけど。ミシェル・ゴンドリーはオタクではないので、クエンティン・タランティーノやケヴィン・スミスのような熱い映画愛を期待して観に行くと、物足りなく感じるだろう。レンタルビデオ屋そのものに対する愛着や郷愁も希薄だ。

 ここ最近、日本のTSUTAYAなんかでもVHSが次々と排斥されていて、DVD化されていないマイナー作品や古典作品を観るのがおそろしく困難になっている。そんな状況で、この映画が大々的に宣伝されているのを見ると、やや複雑な気持ちになる。

 ちなみに、本作でいちばんマニアックなタイトルとして登場するのが、1940年代に活躍した黒人エンターテイナー総出演のミュージカル『ストーミー・ウェザー』(1943)。その題名が、大手レンタル店で働く店員の映画知識を測ろうとするダニー・グローヴァーの台詞として出てくるところは、なかなか気が利いている。この映画で見事なタップダンスを披露するニコラス兄弟の1人、ファヤード・ニコラスは、アダム・リフキン監督の傑作『Night at The Golden Eagle』(2002)にも出演していた。
 

監督・脚本/ミシェル・ゴンドリー
撮影/エレン・クラス
音楽/ジャン=ミシェル・ベルナール
出演/モス・デフ、ジャック・ブラック、ダニー・グローヴァー、メロニー・ディアス、ミア・ファーロー、キッド・クレオール
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