Simply Dead

映画の感想文。

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『ローズ・イン・タイドランド』(2005)

『ローズ・イン・タイドランド』
原題:Tideland(2005)

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 ヤク中の両親を相次いで亡くし、たった一人でテキサスの草原に放り出された少女ジェライザ=ローズが、持ち前の空想力(強靱な防衛機制)でサヴァイヴする物語。

 フィリップ・リドリーは初監督作『柔らかい殻』(1990)で、その空想力ゆえに狂気へと向かう少年の悲劇を端々しく描いたが、やはり齢65になって己の道を貫くギリアムは、若き夢想家の味方だ。世間から隔絶されたド田舎の明るい地獄を舞台に、ジャック・ケッチャム的な惨劇に流れそうな予感も孕みつつ、そうはならない。甘やかしすぎという気はするが、それが今のギリアムなのだと思う。少女の危険な遊戯を諭すでもなく、むしろ圧倒的な共感と共に、現実と幻想のスリリングな綱渡りを紡いでいく。

 とにかく、主人公ジェライザ=ローズを演じるジョデル・ファーランドへのベタ惚れぶりが圧倒的なのだ。カメラは活き活きと空想の世界を跳びはねる彼女の魅力を捉えることに腐心し、近年のギリアム作品にはなかった熱をも全体に取り戻している。

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 一方で、ついにテリー・ギリアムも夢想によって共闘する相手に「少女」を選んでしまったか、という感慨もあり、オタク監督らしい少女幻想や美意識が漂うのは否めない。どこまでもヒロインが傷付かないのは、単純に、監督自身が娘の親であるということも大きいだろう。本作では『未来世紀ブラジル』(1985)にも出演した実娘ホリーが制作助手として参加している。

 演出が三人称になったことで、逆にヒロインのみに視線が集中し(一人称であれば少女の視点からの客観性が加わったはずだ)、映画自体はやや冗漫になった感はある。が、あまりに凡庸だった前作『ブラザーズ・グリム』(2005)なんかよりは百倍面白いし、個人的には『ラスベガスをやっつけろ』(1998)よりも十倍くらい好きだ。つまり、ここ最近のギリアム作品の中ではいちばん面白い映画だった。

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 一瞬グレン・クローズとも見紛う片目の魔女デルを迫力たっぷりに演じたジャネット・マクティアは、『キング・イズ・アライヴ』(2000)以来の好演。ジェニファー・ティリー演じる母親がシーツにくるまれて死んでいる佇まいも素晴らしかった。ニコラ・ペコリーニの撮影、マイケル&ジェフ・ダンナ兄弟の音楽もいい。もしマイケル・ケイメンが生きていたら、どんなスコアをつけていただろう……と、観ながら思ったりした。


製作/ジェレミー・トーマス、ガブリエラ・マルティネリ
監督/テリー・ギリアム
脚本/テリー・ギリアム、トニー・グリゾーニ
撮影/ニコラ・ペコリーニ
編集/レスリー・ウォーカー
音楽/ジェフ・ダンナ、マイケル・ダンナ
出演/ジョデル・ファーランド、ジャネット・マクティア、ブレンダン・フレッチャー、ジェフ・ブリッジス、ジェニファー・ティリー

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『ローズ・イン・タイドランド』DVD
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