Simply Dead

映画の感想文。

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『デトロイト・メタル・シティ』(2008)

『デトロイト・メタル・シティ』(2008)

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 まず実写版の話から……なんか、いろんな意味でしくじってる映画だと思った。何より主人公・根岸を演じる松山ケンイチの演技プランが完全に間違っている。「女々しい」のと「オカマっぽい」のとは違うだろう。いくらなんでもオーバーすぎるナヨナヨ芝居が気色悪すぎて、これではヒロインが主人公を憎からず思っているという設定に説得力が生まれない。それに、等身大の甘ちゃん系アウトサイダー=根岸くんの苦労多き日常と悲哀を描く青春ストーリーとしての共感性が、根こそぎなくなってしまった。今、普通にナヨナヨした男の子って現実にたくさんいるはずなのに、そのリアリティを掬い取れなかった失敗は大きい。

 それはコメディなんだから多少の誇張は必要だろう、という声もあるかもしれないが、この物語の場合は断じて違う。あくまで自然体のオシャレポップ大好き男子がふりまく間抜けなイタさ=リアリティがあればこそ、デスメタルバンドのフロントマンとして狂い咲く別人格ことクラウザーさんの存在=誇張の面白さが引き立つのだ。この映画では、どちらかというとクラウザーさんの方が最初から「本物」に見えてしまっている。

 そもそも喜劇の組み立てが全くできていない、李闘士男の演出も観るに堪えなかった。映画の笑いは芝居のニュアンスやカメラポジション、カッティングやリズムによって緻密に構成されるべきものだ。そして語り口と同様、映像の質感もできるだけシンプルに、フラットに削ぎ落としていかなければならない(とにかくこの映画は照明設計が適当すぎる)。本作では理知的に観客を笑いへ導こうとする演出的努力がほとんど感じられなかった。全てシナリオに書かれた状況と、役者の芝居に頼っている感がある。

 大森美香のシナリオにしても、決して良い出来とは言えない。映画独自の脚色によってストーリーをコンパクトにまとめようとしているが、ほとんど効果的な省略がなされていない。意味のない舞台変更やディテールの甘さは、後半の遊園地のシーンあたりで一気に噴出する。何、このズサンなまとめ方。かなり突貫で書き上げたシナリオなのではないかという印象を持った。

 あと、ヒロイン役の加藤ローサって、友達に誘われたらデスメタルバンドのライブとかにも面白がって行きそうじゃないか? サブカルに理解がありそうな印象なので、DMCへの拒絶反応にも今ひとつパンチが利いてない気がした。ここはやっぱりアニメ版と同様、長澤まさみとかのオボコい感じの若手女優をキャスティングしてほしかった。DMCの残りのメンバーが全然ストーリーに絡んでこなかったのも残念。

 ちなみにデスメタル的には欠かせないアナーキズムや反骨精神も、なきに等しい(そもそも演奏してる曲自体がさほどデスメタルではないものの)。そこはまあ期待するだけ無駄というか、予想通りの薄さだった。クラウザーさんが過って警官をギターでぶん殴ったり、根岸のアパートで社長がマリファナパーティーを開いたりするくだりも、全国公開の大衆向け商業映画では望むべくもない。代わりに大手CDショップに媚を売ったキャッチフレーズが感動ドラマの伏線として連呼されるだけ。原作に登場するDMCファミリーの一員、M男パフォーマー「資本主義の豚」のキャラクターは実写版ではオミットされたが、映画自体がそうなってしまった。

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 一方、STUDIO4℃制作・長濱博史監督のアニメ版『デトロイト・メタル・シティ』は、やっぱり面白かった。長濱監督が演出として参加した『ギャグマンガ日和』の手法(声優にマンガをそのまま読ませて、それを編集して間を詰めた素材をもとに作画するというプレスコ方式)をそのまま踏襲し、ひたすら原作に忠実に、コマ割りからコマの大きさまで再現して映像化しているので、オリジナルの面白さはほぼ損なわれていない。ただもうほとんどマンガと同じで、しかも1エピソード6分くらいのショートアニメとして作られているので、新たな演出でドラマとして再構築するという感じではなく、動くマンガという印象。そのあたりは好悪分かれるかもしれないが、しかし断然、長濱監督の方がギャグの何たるかを分かっているし、原作を「読めている」のも確かだ。普通そこは端折るだろ! というところでも平気で1コーラス歌わせたりする、意固地な忠実さも恐ろしい。

 アニメーションとしては基本的に派手な動きの少ない内容だが、さすが長濱監督+STUDIO4℃作品だけあって、大した動作でもないのに無駄に枚数が多かったり、ここぞというシーンでやたらカッコよく動かしたりと、作画パワーが有り余っているかのような映像になっていて面白かった。作画スタッフの中に木村圭市郎御大の名前が出てきてビビったりしつつ、「ああ合ってるかもしんない」とも思った。オープニングはそのままPVとして成立するほどの完成度。STUDIO4℃らしい制作力の高さが発揮されているのは、どちらかというと作画以降の撮影(CGI)処理の方だ。

 あと、長澤まさみの演技が意外によかったのも驚きだった。なんかちょっとだらしない喋り方がイイ。もちろんクラウザーII世=うえだゆうじの怪演も圧倒的。根岸役の岸尾だいすけも膨大なセリフ量をこなして作品を支えている。『蟲師』の主人公ギンコ役に続く長濱作品への登板となったジャギ役の中野裕斗も相変わらずよかった。小林愛のデスレコーズ社長も無茶苦茶ハマッていて、下品極まる次回予告のシャウトがいちいち楽しい。永嶋柊吾の見事な佐治君っぷり、K DUB SHINE渾身の木林君っぷりにも感動した。そして竹内力(と野村祐人)演じるジャック・イル・ダークは、説明不要の素晴らしさ。

 実写版のキャストが特別出演したクラウザーさんの映画出演エピソードでは、松山ケンイチがスカした若手男優を、李闘士男がダメ監督を演じており、今となってはものすごい悪意しか感じられない内容になっている。いや、2人とも声優としては非常にイイ味を出してるんだけど。それにしてもこの回で唐突に出てくる大平晋也風作画は誰の仕業なのか……。

 ……というわけで実写版『デトロイト・メタル・シティ』は、魅力的なギャグマンガの映画化としても、1本のコメディ映画としても、残念としか言いようのない出来だった。アニメ版は原作ファンも納得の仕上がりだし、映画にピンとこなかった人にも自信を持ってお薦めできる快作である。とはいえ、映画は大ヒットして続編制作の可能性も高そうなので、どうせならスタッフ・キャストを一新して再チャレンジしてもらいたい。アニメ版の続編はぜひそのままのメンバーで!

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DVD『デトロイト・メタル・シティ』 Vol.1
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『デトロイト・メタル・シティ』(実写版)
企画/川村元気
監督/李闘士男
原作/若松公徳
脚本/大森美香
音楽/服部隆之
出演/松山ケンイチ、加藤ローサ、秋山竜次、細田よしひこ、大倉孝二、岡田義徳、鈴木一真、宮崎美子、松雪泰子、ジーン・シモンズ


『デトロイト・メタル・シティ』(アニメ版)
企画/川村元気
監督/長濱博史
原作/若松公徳
総作画監督/島村秀一
美術監督/小林七郎
CGI監督/高瀬裕介、大山佳久
音響監督/たなかかずや
音楽プロデューサー/北原京子
音楽/山本はるきち
制作/STUDIO4℃
声の出演/うえだゆうじ、岸尾だいすけ、中野裕斗、保村真、松山タカシ、永嶋柊吾、名塚佳織、井関佳子、小林愛、李闘士男、松山ケンイチ、加藤ローサ、K DUB SHINE、山口祥行、野村祐人、竹内力、長澤まさみ

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コメント

アニメ版DMCはすごいですよね
関係ないですけど、映画版もケーダブがラップの歌詞を担当してるみたいですけど
ラジオにケーダブが出たときに、メール送ったらDMCのTシャツが当たっちゃいました^^

  • 2008/09/04(木) 01:31:05 |
  • URL |
  • かっぱ泥棒 #-
  • [ 編集]

コメントありがとうございます。アニメ版はストーリーが進むごとにちゃんと面白くなっていくのがいいですよね。
映画版のDJ鬼刃役はなぜかダイノジの人でした。案の定ぜんぜんラップできてなくて、どうしてK DUBさん使わないんだろう? と思いました。

  • 2008/09/06(土) 02:51:13 |
  • URL |
  • グランバダ #h1buydM2
  • [ 編集]

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