Simply Dead

映画の感想文。

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『Nada』(1974)

『Nada』(1974)

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 最近、クロード・シャブロル監督の研究本『Claude Chabrol (French Film Directors) 』を読んでいて、改めて作品本数の多さに愕然。この本が出た時点での最新作『Rien ne va plus』(1997/英語題:Swindle)が50本目ですから、2006年現在ではもう55本撮ってることになります。恐ろしい……。

 日本ではもう発展しない感じですが、欧米ではいまだにシャブロルの人気は現在形で、本人が精力的に新作を撮り続ける一方、旧作のリリースも盛んです。やはり転機となったのは、アメリカのPathfinder社から発売された70年代作品を集めたDVD-BOX「The Claude Chabrol Collection」でしょうね。僕も買いました(まだ全部は観てませんけど)。

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・DVD Fantasium
「クロード・シャブロル コレクション」DVD-BOX(US盤・8枚組)

 収録タイトルは、『女鹿』『不貞の女』『肉屋』『野獣死すべし』『破局』『十日間の不思議』『汚れた手をした無実の人々』『ナーダ』の8本。一応、日本でもかつて特集上映されたらしく邦題はついていますが、正式には『女鹿』を除いて全て劇場未公開です。

 さて『Nada』は1974年の作品で、駐仏アメリカ大使を誘拐した右翼テロ組織「ナーダ」と、警察の非情な追撃を描いたポリティカル・スリラー。原作はロマン・ノワールの代表格、J=P・マンシェットの『地下組織ナーダ』。ハヤカワポケミスで邦訳が出ていましたが、今は絶版。

 『肉屋』や『破局』といった作品で漲っていたシャブロル特有の“悪意”は、この映画でも健在。特に、手柄を立てるためには手段を選ばない警部ゴエモン(本当にこういう名前)のキャラクターが最高です。彼自身、犯罪者たちを人間とも思っていないロクデナシなので、その対立劇には単純な善悪観など存在しません。演じるミシェル・オーモンの孤立した中間職っぽさがまた絶妙(笑)。犯人達のアジトに突入するクライマックスも、単に「虐殺」以外の何ものでもなく、シャブロルの非情な視線が冴え渡っています。

nada_police.jpg

 逆に、テロリストたちの方はといえば、常に内部崩壊の危機をはらんだ脆弱な連帯として描かれます。その名が“Nada”(=Nothing)というのは分かり易すぎるネーミング。リーダー役ファビオ・テスティを筆頭に、メンバーがルー・カステルやマリアンジェラ・メラートといった顔ぶれなので、もう破綻は約束されたようなもの。途中で組織を抜けたがために警部に利用される気弱な教師を、シャブロル作品常連のミシェル・デュショーソワが演じていて、いい味だしてます。

 葛藤を抱えたテロリスト集団に、その皆殺しをもくろむ悪辣な警察。シャブロルはもちろん、実際に政治運動家でもあったマンシェットさえも、心から描きたかったのは政治的主張より“人道から外れた者たち同士の繰り広げる対立”でしょう。物語の結末で描かれるのは、主人公が政治的意図とは関係なく「落とし前」をつける姿であり、まさにここで観客は溜飲を下げます。

 そうした精神的にフリーキーな対立構図は、当時のロマン・ノワール作家たちが好んで描いています。マンシェットの『狼が来た、城へ逃げろ』など、わりと戯画的でファンタジックな感覚の作品が多い中、題材のアクチュアリティとスキャンダラスな設定を持った『地下組織ナーダ』を原作に選んだのは、シャブロルの計算高いところかもしれません。

 高級娼館での大使誘拐シーンのサスペンス、テロリストたちの微妙な人間関係のタペストリー、田舎を舞台にした警察との攻防など、シンプルな語り口で小気味よく描いていく巧さは、さすがシャブロル。疑心と悪意と暴力に満ちた、紛うかたなきシャブロル作品でありながら、骨太のエンターテインメントとしても成立しています。

・DVD Fantasium
『Nada』DVD(US盤)

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 ちなみに、こちらは今年4月にイギリス・Arrow Films社からリリースされたDVD-BOX。

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 収録本数は変わりませんが、こっちは『女鹿』『不貞の女』『肉屋』『野獣死すべし』『ナーダ』の他、『Juste Avant Le Nuit』『Les Noces Rouges』『ボヴァリー夫人』が入ってます。

・DVD Fantasium
「The Claude Chabrol Collection」DVD-BOX(UK盤・8枚組)


製作/アンドレ・ジェノーヴェ
監督/クロード・シャブロル
脚本/クロード・シャブロル、アントニエッタ・マルチエリ、ジャン=パトリック・マンシェット
原作/ジャン=パトリック・マンシェット
撮影/ジャン・ラビエ
編集/ジャック・ゲイラール
音楽/ピエール・ヤンセン
出演/ファビオ・テスティ、ルー・カステル、マリアンジェラ・メラート、ミシェル・オーモン、ミシェル・ドゥショーソワ、モーリス・ガレル
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