Simply Dead

映画の感想文。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『Enfermes Dehors』(2006)

『Enfermes Dehors』(2006)
英題:Locked Out

enfermes_dehors_poster.jpg

 最高!! 涙が出るほど笑った。ここ最近観たコメディの中では断トツの傑作。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
〈おはなし〉
 昔々、あるところにシンナー中毒のホームレス(アルベール・デュポンテル)が暮らしていた。ある日、彼は警官が川に身投げする現場に居合わせ、制服一式と拳銃を拾う。さっそく警察署に届けに行ったものの、「暖房に当たりたいだけのくせにツマラン嘘をつくな!」と冷たく追い返されてしまう。

 その時、彼は素晴らしいアイディアを思いついた。この制服で警官になりすまして、署の食堂でタダメシを食らおう! まんまとカフェテリアに潜り込み、久々に腹を満たした彼は、署内で憧れのポルノショップ店員(クロード・ペロン)と出くわす。彼女は義父母に幼い娘を奪い取られ、苦情を申し立てに来たのだが、なかなか聞き入れてもらえない。……困った市民を救うのが警察の義務じゃないか!

 かくてホームレスの男は制服のまま町へ飛び出し、警官としての力をフルに活用して、社会の悪を正そうとするのだが……?

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

enfermes_dehors_01.jpg

 監督・脚本・主演は、個性派俳優として知られるアルベール・デュポンテル。本作『Enfermes Dehors』は、カルトムービーになったデビュー作『ベルニー』(1996)、書けない劇作家の狂気を描いた『Le Createur』(1999)に次いで7年ぶりに手がけた、待望の監督第3作である。個人的には今のフランス映画界でいちばん才能溢れるクリエイターだと思っている(とにかく『ベルニー』は必見の歴史的超傑作)。役者としても、ジャック・オディアールやギャスパー・ノエ、ジャン=ピエール・ジュネといった一筋縄ではいかない監督たちの作品によく出ている実力派だが、最近は『地上5センチの恋』(2006)とか『モンテーニュ通りのカフェ』(2006)とか、やけにオサレな出演作が相次いでいて、正直そんなんどうでもいいから自分の映画だけ作っててください! と土下座して頼みたいくらいの才人なのだ。

enfermes_dehors_jump.jpg

 話はとてつもなくシンプル。「警官の服を拾ったホームレスが、ニセ警官となってムチャをする」。このお膳立てだけで、全編にわたって抱腹絶倒のスラップスティック・ギャグをたたみかけ、息つく暇を与えない。ドライブ感溢れるスピーディーな演出は前2作を凌ぐほどだ。過激な反骨精神と、腹の底から真っ黒なギャグセンス、切れ味鋭いバイオレンス描写は本作でも健在。それでいて、ファンタジックな童話性や可愛らしさも忘れないところに好感が持てる。やっぱりどこかに可愛げがあってこそ、本当にかっこいいと思えるから。

enfermes_dehors_roof.jpg

 人間を徹底して即物的にとらえたギャグが何しろ痛快。主人公がバイクと衝突してオモチャのようにすっ飛んでいく画が、どうしてこんなに楽しいの? と、プリミティブな笑いの神髄を思い出させてくれる。もちろんそこにはデュポンテル独自の間合いとカッティング術があり、容易に真似できるものではない。病院の屋上で繰り広げられるクリフハンガー的展開から『太陽を盗んだ男』ばりのスタントへ雪崩れこむ、サービス精神旺盛なアクションも素晴らしい。

 突拍子もない幻覚シーンや、動物の主観映像など、映像的にも面白いエフェクトが随所にちりばめられている。3作目にしていまだに表現への貪欲さを持ち続けている態度が頼もしい。その若々しさは今見ると90年代っぽいセンスなのかもしれないが、引き算思想だけでかっこつける若手や、持ち駒を使いまわすだけで安定してしまった商業作家たちとは一線を画している。

enfermes_dehors_claude.jpg

 『ベルニー』以来ずっとヒロインを演じ続けているパートナー、クロード・ペロンを始めとする常連俳優たちのハジケた演技も楽しい。主人公の勘違いでひどい目に遭う悪徳社長デュヴァルに扮したニコラ・マリエの力演が素晴らしい。祖父母に軟禁されてしまう女の子、ローラ・アルノーが本当に可愛く撮られているのもさすが。また、デュポンテルが敬愛するテリー・ジョーンズとテリー・ギリアムの特別出演も見逃せない(唖然とするほどクッダラナイ役で登場)。ジョーンズは『Le Createur』の神様役に続く登板である。

enfermes_dehors_02.jpg

 『ベルニー』や『Le Createur』には、ある種マニアックと言われても仕方ない毒気の強さがあったが、『Enfermes Dehors』は過激でありつつ単純明快なエンタテインメントに仕上がっている(主人公は頭のおかしいホームレスだけど)。こんなに面白い映画が未公開のままなんて、世の中間違ってるとしか思えない。『ホット・ファズ』のあとに公開するべきはこの映画じゃないの?

・Amazon.fr
DVD『Enfermes Dehors』(PAL?FR)


監督・脚本/アルベール・デュポンテル
製作/リシャール・グランピエール
撮影/ブノワ・デビエ
美術/エルヴェ・ルブラン
編集/クリストフ・ピネル
音楽/アラン・ランヴァル、ハイエナズ
出演/アルベール・デュポンテル、クロード・ペロン、ニコラ・マリエ、エレーヌ・ヴァンサン、ロラン・ベルタン、ローラ・アルノー、ヨランド・モロー、テリー・ジョーンズ、テリー・ギリアム
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://simplydead.blog66.fc2.com/tb.php/267-d8aacd84
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

FC2Ad

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。