Simply Dead

映画の感想文。

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『愛をもとめて 素顔の貴婦人』(1989)

『愛をもとめて 素顔の貴婦人』
原題:La Vie et rien d'autre(1989)

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 第一次大戦後のフランスで、身元不明の戦死者を捜索・統計する任務に奔走する仏軍将校デラプラン。そして、戦地から戻らない夫を探しにパリからやって来た上流階級の夫人イレーヌ。ふたりの出会いと束の間の交流を、ある村の群像劇の中に描いた秀作ドラマ。監督・共同脚本はベルトラン・タヴェルニエ。

 物語を数日間の出来事に凝縮し、片田舎の人間模様を連鎖形式でつぶさに描きながら、重苦しい状況下で惹かれ合っていく男女の葛藤、悲劇的な時代の空気を浮かび上がらせたシナリオが見事。今こういう熟達したドラマ運びをする映画って見当たらないのではないか。それぞれのキャラクター描写も魅力的で印象深い。台詞も痛烈にあけすけだったり、深みに富んでいたり、フランス映画の伝統と新しさが混在した独特のタッチが面白い。

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 ぶっきらぼうで変わり者、恋に無器用なベテラン将校デラプランを、名優フィリップ・ノワレが好演。タヴェルニエとは『サン=ポールの時計職人』(1973)以来の名コンビであり、本作で2度目のセザール主演男優賞を獲得している。気丈でひたむきな貴婦人イレーヌを演じるのは、アラン・レネ作品でおなじみの女優サヴィーヌ・アゼマ。イレーヌと同じく行方不明の恋人を探し続ける村の女性アリスを演じるパスカル・ヴィニャルがいい。その他の村人や軍人たちを演じる役者も全員キャラが立っていて、強い印象を残す。また、70年代のクロード・シャブロル作品で主役を演じたミシェル・デュショーソワが、デラプランの上官役で顔を見せている。

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 タヴェルニエという人は、日本ではわりとおとなしめの作品が多く輸入されているけど、実はその作品歴は幅広い。連続殺人鬼の刑事責任を問う裁判を描いた『判事と殺人者』(1976)、ジム・トンプスンのノワール小説『ポップ1280』を映画化した『Coup de Torchon』(1981)、父殺しの天使ベアトリスの物語を描いた『パッション・ベアトリス』(1987)など、血生臭い題材や、社会のタブーに切り込む気骨を持った監督でもある。本作では、戦死者の捜索・統計に精魂を傾ける男が主人公であり、大戦後の150万人にのぼる不明者の処理問題、灰と泥の中から死体や遺品を掘り出し続ける人々の日常が、リアルに淡々と描かれている。

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 しかし、ドラマの作りはいたって繊細で味わい深い。全編、死体の話しかしていないのに、人々の日常はユーモアとペーソスに溢れ、グロテスクな直接的描写も皆無だ。繊細すぎて、わずかな機微を見落とすと、荒っぽい作劇と見られてしまう危うさすら持っている(個人的にはそれを単なるヘタとは言いたくない)。ミステリー風の展開も後半に用意されているが、明確な答えは最後まで避けられる。作家としての主張と、描きすぎることへの抵抗感が常にせめぎ合っている人なのだろう。元シネフィルならではというか。

 134分をこういったかたちで見せきる監督も珍しいと思った。やっぱりしばらく追い掛けていきたい。


監督/ベルトラン・タヴェルニエ
原作・脚本/ベルトラン・タヴェルニエ、ジャン・コスモ
撮影/ブリュノ・ド・ケイゼル
音楽/オズワルド・ダンドレア
出演/フィリップ・ノワレ、サヴィーヌ・アゼマ、パスカル・ヴィニャル、フランソワ・ペロー、ミシェル・デュショーソワ
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