Simply Dead

映画の感想文。

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『デイ・ウォッチ』(2006)

『デイ・ウォッチ』
原題:Dnevnoy dozor(2006)

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 びっくりした。面白かった。

 ロシアのベストセラー小説を莫大な予算と最新VFX技術で映画化した、大風呂敷ホラーファンタジーアクション三部作の第2弾。前作『ナイト・ウォッチ』(2004)は予告編で期待を煽るだけ煽って、鳴り物入りでお目見えしたものの、やや期待が空回ったのか批評も興行もパッとしなかった。個人的にはハッタリだらけでわりと面白かったんだけど、欠点も多く、特に「舌っ足らずなくせに捻りすぎ」なところが目立った。

 今回の続編『デイ・ウォッチ』でも、その欠点が克服されたわけではない。が、それを補って余りある過剰なサービス精神がある。ここまで盛り込まれちゃあ参りましたって言うほかねえなあ、と思わせるだけの馬鹿力とボリュームが満載で、凄く楽しかった。

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 画面サイズは前作のビスタから横長のシネマスコープにグレードアップ。スポーツカーが高層ビルの壁を爆走し、窓を突き破って部屋の中に突っ込んでくる、といった破天荒かつ無意味なアクションも楽しいが、それはまだ序の口。主人公アントンとヒロイン・オリガの心と体が入れ替わってしまい、もうひとりのヒロイン・スヴェータとのラブシーンへなだれ込む『転校生』+『バウンド』な展開には、中学生の妄想か! と思いつつきゅんとした。そして『ブラック・サンデー』(1977)では予行演習しか描かれなかったピンボール散弾爆破を、モスクワ市街全破壊という大スケールで映像化したクライマックスにもきゅんとした。その他、ギュウ詰めにされた見せ場を数え出すとキリがない。

 さらに、単純な善悪の図式に回収されない人間ドラマも前作から引き継がれ、各キャラクターの複雑な愛憎関係もいよいよ沸点へと到達する。父親としての愛とヒロインへの恋に引き裂かれるアントンの葛藤や、父子の愛憎関係をふたつの異なる家族をダブらせながら描く作劇のこまやかさにも(明らかにそんなことやってる余裕ないのに、と呆れながら)感動した。

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 キャストも前作では思いっきり地味な役作りだったが、今回はそれぞれがいちばん魅力的な姿で登場してくれるのが嬉しい。特にスヴェータ役のマリア・ポロシナの変貌ぶりが凄まじく、しばらく「新キャラか?」と思っていたくらい。おでこの広いロシアン美人、オリガ役のガリーナ・チューニナの美貌も、前作よりずっとクールに際立っている(『転校生』芝居も見どころ)。アントンを演じるコンスタンチン・ハベンスキーも、今回はラストで血みどろの艶姿を見せてくれたりして、なかなかカッコイイ。ヴィクトル・ヴェルズビツキー扮する闇の帝王ザヴロンが、相変わらず安っぽいロシアンマフィアのボスそのものの格好で出てくるのにも笑った。前作では目立たなかった魔女アリサ役、ジャンナ・ブリスケの熱演とものすごいドレスも見ものだ。

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 あまりに色々と盛り込んでくるので、三部作の真ん中なのにこんだけネタ使っちゃっていいのかな? どこまで進めちゃう気なんだろ? とハラハラしていると、本当に××っちまいやがった! これには唖然とした。しかもなんなんだ、あのエンディングの音楽。爆笑したわ。

 お話的には特に斬新なことをやるわけではなく、どちらかというとお約束のようなネタをひたすら盛り込んで見せていく。そのパワフルさは中島かずき脚本のアニメ『天元突破グレンラガン』(2007)終盤のテンションを思い出させた。『ナイト・ウォッチ』が思わせぶりなストーリー展開や、カッコよさ優先のダークな絵柄中心でやや地味だったのに対し、『デイ・ウォッチ』では開き直ったかのようにベタな趣向と派手な見せ場で客を楽しませようという意気がみなぎっているのだ。こけおどし的なショックシーンは減り、過剰でヘヴィーなアクション・スペクタクルへとシフトしている。まさに夜と昼ぐらいの違いである。(でも大部分の撮影は同時期に行われたらしい)

 また、ロシア人のお祭り好き・騒ぎ好き気質も、本作の方がよりクレイジーに弾けていた。かつてニキータ・ミハルコフ監督が『黒い瞳』(1986)で描いた「イタリア人は陽気で情熱的なロマンティストだって? ロシア人の方が百倍スゴイぜ!」という主張に打たれた自分としては、そんな意味でも嬉しい作品だった。

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 辻褄が合わないとか、不要な段取りが多いとか、良識的な映画ファンなら憤慨する部分も少なくないだろう。ましてやハリウッド映画の見やすさに慣れた観客にはキツイかもしれない。正直、画面・シナリオ双方のコンティニュイティに関しては、赤点もいいところだと思う。でもそれが笑えるぐらいの領域に到達していれば、もはや作家性と呼んでいいのではないか(マイケル・ベイとか樋口真嗣の映画では決して思わないけど)。派手なアメリカ映画は大好きだけど、ハリウッド式のストーリーテリングは模倣しないでやりきったるんじゃい、とでも言いたげな馬鹿力と勢いがあり、ふざけたギャグも迷いなく突っ込んでくる茶目っ気にも好感が持てた。『サブウェイ』(1984)の頃のリュック・ベッソンの態度にも近いと思う。

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 本作の後、ティムール・ベクマンベトフ監督はアンジェリーナ・ジョリー出演のアクション映画『Wanted』を撮るためハリウッドへ。それで強引に二部作で終わらせたのか……と思いきや、その後すぐにシリーズ完結編『Twilight Watch』に着手する予定だという。あのラストからどうやって続くんだ? という疑問もあるが、まずは一安心。変に洗練などされず、さらにロシアン魂みなぎるガッチャガチャにクレイジーな映画を作ってほしい。

▼オリガ役のガリーナ・チューニナ。やっぱカッコイイ
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 ちなみに、このシリーズを劇場で観る楽しみのひとつが英語字幕。場面や台詞のトーンに合わせて、色を変えたり明滅させたりと細かくエフェクトを施している。字幕慣れしてないアメリカ人観客にも優しい配慮であって、前作で初めて見た時は「へえ、考えるもんだなあ」と思った。ハッキリ言ってウザイ時もあるが、これはこれでひとつの画面効果だと思えば、バカバカしくて楽しい。

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製作/コンスタンチン・エルンスト、アナトリー・マキシモフ
監督/ティムール・ベクマンベトフ
脚本/セルゲイ・ルキヤネンコ、ティムール・ベクマンベトフ、アレクサンダー・タラル
原作/セルゲイ・ルキヤネンコ、ウラジミール・ワシーリエフ
撮影監督/セルゲイ・トロフィモフ
美術/ワレーリー・ヴィクテロフ、ムクハタール・ミルザキエフ、ニコライ・リャブトセフ
編集/ドミトリー・キセレフ
音楽/ユーリ・ポテイェンコ
出演/コンスタンチン・ハベンスキー、マリア・ポロシナ、ガリーナ・チューニナ、ウラジミール・メニショフ、ヴィクトル・ヴェルズビツキー、ジャンナフリスケ、アレクセイ・チャドフ、ファレリー・ゾロツキン、ディマ・マルティノフ

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