原題:The Golden Compass(2007)

度し難い愚作。やめちまえよ馬鹿野郎、と観ながら何度も思った。
話もつまらないし、演出もひどい。最初から最後まで、ひたすら展開また展開ばっかり。数珠繋ぎにめまぐるしく事件が起こっていくのだが、そこでドラマ的あるいは設定的に説得力を持たせようとする努力がミジンも払われていない。「なんでこんな展開になるの?」とか「そのシークェンス必要だったの?」とか「どういう感情の流れでこんな描写になるの?」とか「こいつバカなんじゃねえの?」といった疑問に対する答えがひとつもないまま、ただ前に前に進むだけ。技法的省略なんて上等なものじゃなく、単なる手抜きだ。
異世界をいかに自然な演出で描くか、というファンタジー映画の鉄則も無視されている。その世界ではそれが常識なんだから、くどくど説明すればするほど真実味は失われる。説明台詞を言うにしてもデリケートに処理しなければならない。が、そんな気づかいもからっきし欠けている。なぜか? 作り手がなんらその作品世界に対して興味を持たず、あらすじばかりなぞっているからだ。

映画版から察するに、原作も大したモノじゃないんだろう(読んでないし読む気も起きない)。喋る動物とか千里眼みたいな羅針盤とか世界を救う運命の少女とか、いかにもなファンタジー・アイテムを取り揃えて、それっぽい展開でテキトーに取り繕った、どこぞのマーケティング会議でこしらえたようなズサンな話である。そんなものを映画化しろと言われた方も困っただろうが、大金をもらって仕事している以上、少しは努力したらどうなんだテメェ! と絞め上げたくなるほど、何もしてない。
監督・脚色はクリス・ウェイツ。製作はニューラインシネマ。本当にただ単にダイジェスト化しただけで、そこから説得力のあるキャラクター同士のアンサンブルを構築しようとか、無理のある部分を省いて再構成しようとか、少しでも自然に見せようとか、そんな映画作家なら当たり前のことを放棄してしまっている。これがファミリー映画として全世界で公開されると知っての狼藉である。子どもをバカにすんな。親もバカにすんな。腹かっさばいて詫びろ、と言いたい。
何から何まで不自然で説得力のない映画だが、いちばんの原因は、尺が足りないせいだ。この内容を2時間以内にまとめろと言われた時点で、クリス・ウェイツの肚も決まったのかもしれない。無理のある話でも説明抜きで強引に突っ切りゃなんとかなるだろう! ファンタジーだし! よく知んねえけど! みたいな。そうでもなければこんな話をエンドクレジット込みで112分にまとめられるわけがない。結果、出てくる俳優は軒並み「ああ、お金のためにやってるのね」と一目瞭然の演技しかできていない。これだけの豪華キャストを集めながら、芝居の間も与えられず、無言の表情の見せ場もなく、全員がワケの分からない長台詞をパワフルにこなすだけ。こんなに「言わされてる感」に満ちた映画もないと思う。
ファンタジーなんて、好きでなければ作れない世界なのに、どこにもそれを楽しむ気配がないのも悲しかった。せめて『フラッシュ・ゴードン』(1980)みたいにバカバカしい世界で遊んでみせる余裕があってもいいのに、それすらもない。そんな輩にこういう企画を任せてはイカンのだ。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズがどれほど優れた作品であったか、そしてピーター・ジャクソンにどれほど演出的力量と、ファンタジーへの愛情と、映画会社に対する強情さがあったかを思い知らされる駄作。三部作らしいけど、もう打ち止めでいいよ、こんなの。
監督・脚本/クリス・ウェイツ
原作/フィリップ・プルマン
撮影/ヘンリー・ブラハム
プロダクションデザイン/デニス・ガスナー
編集/アン・V・コーツ、ピーター・ホーネス
出演/ダコタ・ブルー・リチャーズ、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイグ、エヴァ・グリーン、サム・エリオット、サイモン・マクバーニー、クレア・ヒギンズ、トム・コートネイ、デレク・ジャコビ、クリストファー・リー
声の出演/イアン・マッケラン、フレディ・ハイモア、イアン・マクシェーン

