Simply Dead

映画の感想文。

『ザ・クランプス 精神病院ライブ』(1978)

『ザ・クランプス 精神病院ライブ』
原題:The Cramps: Live at Napa State Mental Hospital(1978)

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 ここ最近観た映像の中で、いちばん楽しかった。別に、凝った作りのPVでも『ストップ・メイキング・センス』(1984)ばりの立派なライブフィルムでもない。1978年にカリフォルニア州ナパの精神病院で行われたザ・クランプスのライブを、手持ちの白黒ビデオカメラで撮りっぱなした約20分ほどの記録映像である。それがこんなにも面白いとは! 観ながら思わず「人類の友愛と平和がこんなにもシンプルかつカオティックに実現した瞬間があったんだ!」と感動してしまった。

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 正しく不健全な魅力に満ちたパンクロカビリーバンド、ザ・クランプスのイカした演奏に刺激された患者たちは、やがてステージ上にも自由に出入りし始める。ドラムスの横でフリーキーなリズムマシンと化す者もいれば、バンドメンバーと一緒に踊り狂う者あり、ふらふらステージを徘徊する者あり、あるいは我関せずと新聞を読みふける者もいて、終いにはマイクに割り込んで強引にセッションしてくる女性患者まで出てくる。文字通り“狂気のカオス”が加速度的に展開しながら、そこに不穏な気配はまったくない。なんともピースフルで微笑ましい空気が漂っているのだ。

 同時に、サイコな魔性と不良性みなぎるパフォーマンスが、精神病院内の秩序をハイスピードで無効化していく、アナーキーな高揚感にも溢れている。そのうち暴動になるんじゃないか、というハラハラ感も最高のスパイスだ。これを楽しいと言わずしてなんと言おう!

 ザ・クランプスの面々はフリーマンズの猛攻にもひるむことなく、キレたりもせず、彼らと積極的に“競演”し、その場のグルーヴをひたすら高めていく。ちょっと度が過ぎる時だけさっとステージを立て直す、その手際が実に鮮やかだ。ヴォーカルのラックス・インテリアが、調子に乗った女性患者からマイクを奪い返すあたりのスマートかつジェントルな所作は、ぜひ日常生活でもお手本にしたいと思わせる見事さ(たぶん瞬間的にかなりの腕力を使ってると思うけど)。「ここはいいや」というところでは患者にマイクをポイッと預けてしまうのも格好良かった。

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 どんなフィクションも太刀打ちできない、観る者をたまらなく幸福な気分へと誘ってくれる20分間。世界平和の鍵がここに眠っているとも言える、全人類必見の映像だ。現在、シアターN渋谷大阪PLANET+1で『全身ハードコア/GGアリン』(1994)と2本立てで限定レイトショー公開中。

 『全身ハードコア』もまた、ステージと客席の垣根をぶち壊し、真の自由とは戦いである/ライブとは命がけのスリルであることを教えてくれた偉人・GGアリンの苛烈な生涯を見つめた秀作ドキュメンタリー。監督はのちにハリウッドで快作青春コメディ『ロード・トリップ』(2000)を手がけたトッド・フィリップス。『空飛ぶモンティ・パイソン』のコントを地で行くような人達が大挙登場する爆笑映画でもあるので、これもぜひ劇場で。


監督・撮影/不明
出演/ザ・クランプス(Vocal:ラックス・インテリア、Guitar:ポイズン・アイヴィ、Guitar:ブライアン・グレゴリー、Drums:ニック・ノックス)、ナパ州立精神病院の患者さんたち

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