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映画の感想文。

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『Halloween』Unrated Director's Cut(2007)

『Halloween』 Unrated Director's Cut(2007)

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 ジョン・カーペンター監督の出世作にしてスラッシャー映画の古典である『ハロウィン』(1978)を、『デビルズ・リジェクト』(2005)のロブ・ゾンビ監督がリメイクした話題作。日本公開はしばらく未定みたいなので、先月アメリカで発売されたアンレイテッド・ディレクターズ・カット版DVDで観てみた。(以下、ネタバレ全開なので楽しみにしてる人はスルーしてください)


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 微妙。

 前半は特に面白くもない“俺の『ハロウィン』”が延々続くのでウンザリさせられる。けど、後半は“俺の好きな『ハロウィン』”をかなりのハイレベルで実現しているので、ちょっとむやみに否定しづらくなるという、難しい映画だった。いや、結局つまらないんだけど、見どころはある。正確には、映画の半分が過ぎてやっとヒロインのローリーが登場してから、殺人鬼マイケル・マイヤーズとローリーの対決が始まるまでが特にいい。カメラワークや、子役を含む俳優たちへの演技づけなど、持ち前の演出力の高さを堪能できる。クライマックスでは再び冗長になってしまうのが残念。廃屋での追っかけっこと隠れんぼが、容赦なく真っ暗な画面の中でまた延々と続くので、やや辟易する(121分はさすがに長い)。

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 そもそもオリジナル版『ハロウィン』には個人的にどうしても受け付けない部分があった。それは殺人鬼マイケル・マイヤーズがマスクを剥がされて普通の青年の顔を見せてしまうシーンだ。そこで訴えたいことは分かるけど、ホラー映画としては不要な場面だと思う。その時に感じた「あーあ」という落胆を、ロブ・ゾンビは映画の前半1時間をかけて、みっちり味わわせてくれる。

 マイケル少年がいかにすさんだ家庭環境に育ったか、いかに人殺しの味を覚えたか、いかに孤独であったかを、監督は前作でも存分に発揮された饒舌さでもって、これでもかと描いていく。居場所のないどんづまり人生を送るいじめられっ子が壊れていく過程を、ひたすら痛切に、共感まるだしで、説得力バツグンに物語る。マイケルはリアルで、哀しい存在なのだと。それがもう、まったく面白くないのだ。全てが明白で類型的な理由づけをされた“悪”に、なんの魅力があるだろう?

 ロブ・ゾンビはホラーに向いてない。“得体の知れないものへの恐怖”などには目を向けない、情念のロッカーだからだ。だからこそ、続編ホラーという枠を全力で破壊し、とことんエモーショナルで具体的なバイオレンス・ファミリードラマへと振り切った『デビルズ・リジェクト』は傑作たりえた。今回の『Halloween』でもやっぱり“情”のドラマ要素が強い。でもそれは、ホラーとは別のベクトルのパワーだ(百も承知でやっているとは思うけど)。

 だからといって恐怖演出ができないわけではなくて、むしろ凡百の専業監督よりは、余程ショットの構築力がある。それを証明しているのが、ちょっと皮肉なことに、後半はっきりとカーペンターの『ハロウィン』を踏襲しだす部分である。白昼マイケルがローリーに忍び寄るくだりなどは本当によくできていて、さすがだなと思った。カーペンター・ファンは「前半いらないから後半だけほしい」とか残酷なことを言うだろうが。

 もちろん誰しも、これがロブ・ゾンビの映画にしかならないことは最初から分かっていたはずだ。個人的にも、オリジナル版『ハロウィン』とは全然違う映画を作ってくれることを期待していたし、なんならあのテーマ曲を一切使わずに作ってくれたら痺れるなー、とか思っていた。だからこそ残念なのは、どうして『Halloween』のタイトルを冒頭で見せてしまったのか? ということだ。なんの映画だか分からないように始めて、なんとなく(だが明白に)カーペンターの『ハロウィン』をパクったような展開で進めて、後半ではもう『ハロウィン』そのままになって、最後にバンッ!と『Rob Zombie's Halloween』と出せばカッコよかったのに……。「リメイクだとは思わないでほしい」と幾度となくエクスキューズしてきたのだから、それぐらいしてほしかった。

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 ロブ・ゾンビ色に染め上げられたキャラクター潤色と、新春かくし芸大会のような豪華キャスティングも好悪半々。マイケル少年役のデーグ・フェルク(って読むのか、Daeg Faerch?)は確かにインパクト絶大で表情もいちいち素晴らしいが、この映画のつまらなさを代表してもいる。分かりやすすぎるのだ。同じく絵に描いたようなトラッシュ家庭の母親を演じるシェリ・ムーン・ゾンビは、あまりにハマリすぎてて驚愕するほど上手い。こんなに疲れた母親が似合うとは思わなかった(なんだか夫ロブの母親を演じているかのような慈愛に満ちた表情を見せる)。

 大先輩ドナルド・プレザンスのあとを継いでルーミス医師に扮するマルコム・マクダウェルは、さすがに滅法かっこよく撮られていて、監督のリスペクト具合がひしひしと伝わってくる。でも失敗した偽善者として描かれたキャラクターを演じるには、よく扱われすぎている気もする。映画ファン的に嬉しいのは、ブラケット保安官役のブラッド・ドゥーリフと絡むシーン。現役最強怪優2人のツーショットを実現させた監督の心意気には素直に感謝したい。

 前作、前々作から引き続き参加している常連俳優たちも多いが、彼らが比較的登場しなくなる後半の方が、新鮮な気分で観られて楽しいし、役者へのディレクションの巧さも堪能できる。ティーン女子や子役たちからも、ちゃんと活きた演技を引き出していて感心した。ローリー役はスカウト・テイラー=コンプトン。「オリジナル版のヒロインは今だとお行儀よすぎてアーミッシュ村の住人みたいだ」というロブ式観点から生まれ変わった2007年版のローリーは、母親に朝っぱらからベーグルを使って卑猥なジョークをかます、フツーとも微妙に言いがたいハイテンションギャルになっていた(でも眼鏡っ子、というのがロブ・ゾンビのマーケティング感覚の鋭いところだ)。

▼真ん中がスカウト・テイラー=コンプトン
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 意外と冴えないのが成人後のマイケル・マイヤーズのキャラクター。『地獄の警備員』(1992)のごとき巨漢の怪力殺人鬼という設定になったものの、さほど動きの特異性が与えられてない上、躊躇のなさやキレといったものがない。たとえば、体中をナイフで刺されて虫の息で横たわる被害者がそれでも口走る「Please, don’t kill me」のキの字も出ないうちにブーツで喉を踏み潰すとか、そういった迷いのなさを期待していたのだけど、殺人描写は総じて鈍重で地味。

 で、オチも地味。まあ『デビルズ・リジェクト』みたいな暴力映画としては全然アリだと思うけど、普通はポカーンとするだろう。ただしこれはディレクターズ・カット版の話で、特典ディスクに収録されていた劇場公開版のラストはなかなかよかった。より短く簡潔にまとめられていて、前半の描写も伏線として劇的に活かしている。けどまあ、呆気ない気もする。どっちがいいかは好き好きだけど、なるべく劇場公開版から観た方がいいかもしれない。DC版の方は個人的に、マイケルが精神病院を逃げ出すくだりがあまりにバカバカしくて興醒めだったので。

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 とにかく『ハロウィン』と『ハロウィンII』をもういちど観たくなることは請け合いの映画。

追記:2008年10月、『ハロウィン』のタイトルで劇場公開。

・DVD Fantasium
DVD『Halloween』Theatrical Version
DVD『Halloween』Unrated Director's Cut

・Amazon.co.jp
DVD『ハロウィン』(1978)
DVD『ハロウィンII』(1981)
CD『Rob Zombie's Halloween』サウンドトラック(米国盤)
CD『ハロウィン』サウンドトラック《20周年記念盤》(米国盤)

製作/マレク・アッカド、アンディ・グールド、ロブ・ゾンビ
監督・脚本/ロブ・ゾンビ
原作脚本/ジョン・カーペンター、デブラ・ヒル
撮影/フィル・パルメット
音楽/タイラー・ベイツ
出演/マルコム・マクダウェル、デーグ・フェルク、シェリ・ムーン・ゾンビ、スカウト・テイラー=コンプトン、ブラッド・ドゥーリフ、タイラー・メイン、ウィリアム・フォーサイス、リチャード・リンチ、ウド・キアー、クリント・ハワード、ダニー・トレホ、ケン・フォーリー、シビル・ダニング、ディー・ウォーレス、シド・ヘイグ

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