Simply Dead

映画の感想文。

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『Futurama』 First Series(1999)

『Futurama』 First Series(1999)

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 ピザ屋の配達人として冴えない日々を送っていた青年フライ。その年の大晦日、彼は仕事中にふとしたきっかけで人工冬眠マシンに閉じ込められてしまう。そして時は流れ、目覚めるとそこは西暦3000年、千年後の世界だった! フライは飲んだくれの不良ロボット・ベンダーや、腕っぷしの強い一つ目美女のリーラと知り合い、遠い遠い遠い遠い(中略)遠い親戚ファーンズワース教授のもとで、スペースデリバリーボーイとして働き始める。

 『ザ・シンプソンズ』のクリエイターとして知られるマット・グレーニングが手がけた、もうひとつの傑作テレビアニメシリーズ(日本では未放映)。30世紀の未来世界を舞台に、20世紀生まれのダメ青年が銀河を股にかける配達人となって、仲間たちと共に活躍するSFコメディだ。絵柄はまるっきり『ザ・シンプソンズ』まんまながら、またひと味違う面白さのシリーズに仕上がっている。

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 もちろんマット・グレーニング作品らしい皮肉のきいたギャグとパロディが満載で、『銀河ヒッチハイクガイド』や『宇宙船レッド・ドワーフ号』に近いノリの、破天荒かつドライなSFコメディとして楽しめる(アメリカのテレビ番組としては珍しいかもしれない)。その意地悪く突き放した笑いの質は、おかしくもあり、時には切なくもある。優れた未来SFになくてはならない、クールな無常観をしっかり持ち合わせた秀作なのだ。マイク・ジャッジ監督の『Idiocracy』(2006)も、導入部の設定のみならず、本作をかなり意識していると思われる。

 随所に現れるカルチャーギャップの描写は、過去=視聴者にとっての現在である2000年代への痛烈なアイロニーにもなっている。安易な郷愁も抱かせないし、時代の肯定などは絶対にしない。そこがクール。

 映像的には、当時としては目新しかったセルシェーダー3DCGアニメーションがふんだんに採り入れられ、デジタル彩色によるカラフルでポップな未来世界のビジュアルが逆に新鮮。ファンキーで楽しげな音楽と共に、30世紀のニューヨークを映し出すオープニングタイトルは、何度観ても飽きがこない(演出はマイク・スミス)。

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 個性豊かなキャラクターたちも魅力的だ。主人公+ヒロイン+ロボットという王道の主役トリオ設定ながら、少しずつ定石をずらしていくグレーニング式のキャラ造形術が効いている。

 怠け者でテレビ好きの青年フライのどうしようもないダメさ加減は“若きホーマー・シンプソン”といった感じだが、よりオトナ向けに作られた作品だけに突き放し方はより辛辣。親友のロボット、ベンダーの型破りなキャラクターも秀逸だ。主人公よりもだらしない上、アルコール浸けで、性格も悪く、窃盗癖まである厄介者。そんな2人の世話役を務めるヒロインのリーラは、強くて知的で労働者階級出身のセクシーな美女という、いかにもオタク好みのキャラだが、「一つ目」というインパクト絶大のチャームポイントまで持っているのが素晴らしい。発想もいいけど、このビジュアルでちゃんと魅力的に見せているから大したものだと思う。ちなみにリーラ役を演じているケイティ・セーガルは、『地球最後の男/オメガマン』(1971)のボリス・セーガル監督の娘。

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 さて、DVD-BOXの第1巻に収録されている13話の中で、個人的に好きだったエピソードをいくつか紹介してみると……。

Episode 1 「Space Pilot 3000」
シリーズのパイロット版にして記念すべき第1話。タイトルもそこからきている。西暦2999年の大晦日にタイムスリップしてしまった主人公フライが目にする未来世界、リーラやベンダーとの出会い、役人からの逃走劇などがコミカルに描かれる。一見ユートピアのようでありながら、街角に設置された自殺ボックスに長蛇の列ができてたりする皮肉な世界観が楽しい。レナード・ニモイが本人(の保存生首)役でカメオ出演。

Episode 4 「Love's Labours Lost in Space」
消滅寸前の惑星へ希少動物の保護に向かったリーラ、フライ、ベンダー。3人は旅の途中で宇宙的英雄ザップ・ブラニガン艦長の船と遭遇するが、彼の真の姿はとんでもない大馬鹿マッチョ野郎だった。リーラはしつこくモーションをかけられ、弾みで一夜を共にしてしまう……。最低の男と寝てしまった女性の悲喜劇を描いた、『ザ・シンプソンズ』ではまずできない大人向けエピソード。一見タフだが弱さや迂闊さも併せ持つヒロイン・リーラの人間的な面にスポットを当てた秀作だ。タイトルはもちろんシェイクスピアの「恋の骨折り損(Love’s Labour’s Lost)」と、往年のSFファミリードラマ『宇宙家族ロビンソン(Lost in Space)』の合体。無神経でいやらしくて厚かましいブラニガン艦長のキャラがものすごい。『ザ・シンプソンズ』で言うとトロイ・マクルーアと市長の甥を混ぜた感じ。可愛い顔して何でも食べてしまうマスコットキャラのニブラーも初登場。

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Episode 7 「My Three Suns」
液体状の生命体が住む惑星にやってきたフライ一行。ひとりで宮殿へ配達に行ったフライは、喉が乾いて瓶に入っていた水を飲んでしまう。が、それはこの国の王様だった! フライは新国王に選ばれ、優雅な暮らしを満喫するが……。主人公フライの底なしのダメさ加減が楽しめる一編。オーソドックスなSFストーリーの本筋よりも、ベンダーが料理の趣味に目覚める導入部が面白い。タイトルは60年代のTVドラマ『パパ大好き!(My Three Sons)』から。

Episode 8 「A Big Peace of Garbage」
ファーンズワース教授の開発したニオイ望遠鏡で、フライは偶然、宇宙を漂う巨大なゴミの塊を発見。それは21世紀にロケットで無責任に打ち上げられたもので、千年の時を経て再び地球へと戻ってきたのだ。ニューヨークに危機が迫る中、フライとリーラとベンダーは命がけのミッションに旅立つ! 『アルマゲドン』の秀逸なパロディ編。この回は特にギャグが際立っていて、ファーンズワース教授のひどすぎる発明スケッチとか、21世紀のゴミ問題を伝えるドキュメンタリー番組とか、『ザ・シンプソンズ』のセルフパロディとか、メチャクチャおかしい。演出は『ザ・シンプソンズ』でも活躍したスージー・ディーター。エンドクレジットに流れる音楽は某キューブリック作品への素敵なオマージュ。

Episode 9 「Hell is Other Robots」
ビースティ・ボーイズのライブ(ただし保存生首)に行ったフライたち。その楽屋裏でベンダーは電流ショックの味を覚え、タチの悪いエレキ中毒になってしまった。更正のためロボット教会に入った彼は、極端に品行方正な模範ロボ、というより鬱陶しい宗教キチガイに生まれ変わる。フライとリーラは親友を元の性格に戻そうとアトランティック・シティへ連れて行き、なんとかリハビリに成功。しかし、戒律を破ったロボはロボ地獄に落ちなければならなかった! ファーストシリーズの最高傑作。ベンダーの堕落と受難をたたみかけるように描く、歌とギャグ満載の爆笑エピソードだ。タイトルはJ・P・サルトルの言葉「Hell Is Other People.(地獄とは他人のことだ)」から。ビースティ・ボーイズがカメオ出演し、ロボ地獄を司るロボ悪魔の声を『ザ・シンプソンズ』のホーマー役でおなじみダン・カステラネタが怪演。後半の地獄のシーンで繰り広げられるミュージカル・パートは圧巻!

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Episode 10 「A Flight to Remember」
ファーンズワース教授の計らいで、フライたちプラネット・エクスプレス社の面々は、豪華客船型スペースシップで社員旅行に出発。しかし、船長はあの宇宙に名を馳せるアホマッチョのブラニガン艦長で、しかも船の名前はタイタニックだった……。当時、世界的に大ヒットしていた映画『タイタニック』の素晴らしくよくできたパロディ。上流階級の貴婦人ロボットと出逢ったベンダーの切ない恋と別れを主軸に、名場面の数々が再現される。フライとリーラの仲も急接近。タイトルはタイタニック号事件の悲劇を綴った1958年のイギリス映画『SOSタイタニック/忘れえぬ夜(A Night to Remember)』から。

Episode 11 「Mars University」
20世紀には落ちこぼれ学生だったフライは、自分の学力を証明するため火星大学に編入。ルームメイトはファーンズワース教授が育てた天才サルのグンターだ。フライは秀才グンターと火花を散らし、片やベンダーはロボット寮の仲間たちと悪戯三昧を繰り広げ、放校寸前に……。『ナーズの復讐』や『アニマルハウス』といった学園コメディ映画のパロディ満載でおくる、「ホーマー大学へ行く」の姉妹編みたいな最高にバカバカしいエピソード。火星でやる必然性が全くないギャグの乱れ打ちには唖然とする。それにしてもベンダーはベルーシ役にぴったり!

Episode 13 「Fry & The Slurm Factory」
大人気飲料「スラーム」の工場見学ツアーに当選したフライたち。ところがその工場には恐るべき秘密が……。『チャーリーとチョコレート工場』のパロディ編。ウンパルンパもどきもしっかり登場する(もちろん70年代版の方)。『バッド・テイスト』まがいの悪趣味ギャグもてんこ盛り。ナメクジ型宇宙人のデザインがすっごく可愛い。

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 この他のエピソードも十分面白く、小ネタもいちいち楽しい。シリーズ全体に一定のクオリティが保たれているので、安心して観ていられる。『ザ・シンプソンズ』のファンで、SFも好きで、簡単な英語が分かる人にはぜひおすすめ。テレビ番組なので、DVDは日本のAmazonでも購入可能。

・Amazon.co.jp
DVD『Futurama』Vol 1(3枚組)
DVD『Futurama』Vol 2(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 3(4枚組)
DVD『Futurama』Vol 4(4枚組)


原案/マット・グレーニング
製作総指揮/マット・グレーニング、デイヴィッド・コーエン
スーパーバイジング・ディレクター/リッチ・ムーア、グレッグ・ヴァンゾ
CGディレクター/スコット・ヴァンゾ
音楽/クリストファー・ティン
出演/ビリー・ウェスト、ケイティ・セーガル、ジョン・ディマジオ、トレス・マクニール、モーリス・ラマーシュ、フィル・ラマー、ローレン・トム、デイヴィッド・ハーマン、フランク・ウィルカー
ゲスト出演/レナード・ニモイ、ディック・クラーク、パメラ・アンダーソン、ビースティ・ボーイズ、ダン・カステラネタ

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