Simply Dead

映画の感想文。

『スパイダーマン』(2002)

『スパイダーマン』
原題:Spider-man(2002)

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 サム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズ最高傑作は、誰がなんと言っても1作目だ。あんなに泣かされた映画はなかったし、巷で評判のよかった『2』(2004)も、前作のマジックは薄らいでいるように思えた。『3』(2007)に至ってはあまりに腑抜けた作りにうんざりするところも多々あり、その弾みで今こんなことを書いている。

 今『スパイダーマン』を観て、初見の時ほど感動できるかどうかは分からない。あの時、あの9.11テロが起きた翌年に観たからこそ、あそこまで激しく揺さぶられたのかもしれない。

 『スパイダーマン』ほど、9.11の影響をダイレクトに受けた映画はないと思う。あの事件が起きたのは、まさに1作目を制作している最中だった。おかげでツインタワーを舞台に繰り広げられるアクションシーンがまるごとカットされてしまったという不運も生じたが、それは単なるアクシデントに過ぎない。人々に深い傷を残した惨劇が起きた時、奇しくも『スパイダーマン』はニューヨークの街を舞台に「守るべきもの」を問う物語として作られていた。その瞬間、映画は強靭なメッセージ性を帯びたのだ。祈りと鎮魂。そして自分達の暮らす街への愛情を、今一度人々に問う物語に。

 無力な少年が超人的な力を得て、無邪気に高層ビルの間を飛び交い、街を破壊する強敵と戦い、やがて「守護者」としての宿命を受け入れていく。ラスト、主人公がいかにもサム・ライミ映画のダーク・ヒーローらしく、ガールフレンドにも背を向けて墓地を歩き去る弧高の姿を見ながら、号泣していた。彼には愛する街が、守るべき平和がある。これほど当時のアメリカ人観客の心を癒し、勇気づけた映画はないのではないだろうか。

 ひるがえって観客である自分は、この世界にそんな愛着を抱けるだろうか? 『スパイダーマン』で覚えた感動は、そんな疑問とセットだった。だからこそ涙が止まらなかった。“ヒーローの誕生”に託されたドメスティックな表明に対する、ある種の羨望でもあった。

 快哉と共に摩天楼の間を飛び回るスパイダーマンの姿には、少年の無邪気な喜びが溢れ、同時にニューヨークへの憧憬がストレートに表れていて、ここでも泣いた。1年前、悪夢のような悲劇に見舞われ、その惨状を世界中にさらした街。それでもここは美しい。どんな場所でも、いつもは灰色に見えているこの街を、いつかいちばん楽しい歩き方で見てみたい、という夢は誰しも抱くはずだ。

 デイヴィッド・ベニオフの脚本をスパイク・リー監督がアフター9.11の物語として作り変えた『25時』(2002)と同じマジックが、『スパイダーマン』の場合は偶然に働いてしまった。その『25時』製作総指揮を務めたのが、ピーター・パーカー役のトビーマグワイアであるというのも宿命的である。そんな彼も、シリーズ3作目ではまったく怠惰な芝居を見せるようになってしまい、非常にがっかりさせられた。全編マスクを被ってた方がまだマシだ。

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DVD『スパイダーマン』デラックス・コレクターズ・エディション(2枚組)


監督/サム・ライミ
脚本/デイヴィッド・コープ
撮影/ドン・バージェス
プロダクションデザイン/ニール・スピサック
音楽/ダニー・エルフマン
出演/トビー・マグワイア、キルスティン・ダンスト、ウィレム・デフォー、ジェームズ・フランコ、クリフ・ロバートソン
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hero / chad kroeger

スパイダーマンのエンディング ゆったりとしたテンポのロックです。 でも、あんま

  • 2008/01/22(火) 03:28:57 |
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