
毎年行っている映画祭「TAMA CINEMA FORUM」で観た。3本立てのうちの1本で、正直全く期待してなかったんだけど、意外によかった。というか、かなりの秀作だと思う。
高校生が主役のシリアスな青春映画なのに、イヤな感じが全然しない。そういう映画は珍しい。いい大人が作った映画である以上、感覚のズレ、リアリティの欠如は当然孕みやすいし、あるいは過剰な思い入れや、大人の一方的なセンチメンタリズム、わざとらしい物分かりのよさなどもカンに触る時がある。まして本作のように、悩める高校生の男女5人それぞれのドラマを描いていくとなれば、多少のうざったさは避けられない。
だけどこの映画は、彼らの恋と別れ、不安と疎外感、挫折と再生、何かに打ち込むことの素晴らしさなど、様々な青春模様をきっちりやりきった上で、気恥ずかしさや嫌味のない映画として成立している。普通にやったら顔が赤くなってしまうような瞬間の数珠繋ぎみたいな内容なのに。そんなの、なかなかできることじゃない。
監督・脚色はこれが長編デビュー作となる岩田ユキ。ケレンに走らず、真面目に丁寧に、抑えるところは抑えて撮って、微妙なバランス感覚を終始キープする姿勢が効を奏している。常に軽いユーモアを通わせようとするのも良心的だし、フレーミングには才気を感じた。田舎の描き方もリアルで、人の少ない町の空気感が伝わってくる。多少、繋ぎの拙いところもあるけど、丹念で節度の利いた演出には信頼が置ける。

配役もよかった。役者全員が芸達者というわけではないけど、それぞれが役柄にしっかりハマッていたので気にならなかった。榮倉奈々も、谷村美月もいい。後者は実質、いちばんの演技派として映画を引っ張っている。『カナリア』(2005)など、やや芝居っ気が強すぎる印象があったけど、ここではその個性がうまく活かされていた。
お調子者の野球部員・佐々木を演じた柄本祐も素晴らしい。滑舌にややモンダイのあるところもあるけど、やっぱり何か独特のムードがあって魅力的なのだ。「だって俺、好きな人にさよならなんて言ったことないんだもん」というラストの台詞は泣かせる。高校生バンドのリーダーを演じる平川地一丁目・弟は、芝居的には確かにちょっとアレだけど、本人のキャラが役にマッチしてるから大丈夫。先生役の浜崎貴司、駄菓子屋の店番役の石井正則(アリtoキリギリス)もよかった。
同じ日に観た『天然コケッコー』(2007)も、珍しくイヤな感じのしない青春映画の佳編ではあったけど、それはハナっからドラマの生まれる要素を取り除き、勝負を避けているからで、そこはちょっと気になった。それなら、田舎でくすぶる少年少女の悩みも痛みも喜びも描かれた『檸檬のころ』の方を推したい。
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DVD『檸檬のころ』
文庫本『檸檬のころ』(原作)
監督・脚本/岩田ユキ
原作/豊島ミホ
撮影/小松原茂
美術/仲前智治
プロダクションスーパーバイザー/高橋伴明
編集/日下部元孝
音楽/加羽沢美濃
出演/榮倉奈々、谷村美月、柄本祐、石田法嗣、林直次郎、浜崎貴司、石井正則、大地康雄

