Simply Dead

映画の感想文。

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『ブレイブ・ワン』(2007)

『ブレイブ・ワン』
原題:The Brave One(2007)

Brave-One-Poster.jpg

 金のかかった『天使の復讐』(1982)。この映画でも、いつジョディ・フォスターが『イノセント・ボーイズ』(2002)以来の尼僧姿を披露してくれるのかと思ったけど、コスプレひとつしてくれなかった。ケチ。

 真面目な社会派ドラマをつかまえて何を言ってるのかと思われるかもしれないが、これは単なるギャグ映画である。ただしひどく悪質で、無責任な。『プルートで朝食を』(2005)で、主人公キトゥンが香水だけで悪者たちを次々となぎ倒していくという幻想シーンで、見事に反暴力を訴え、号泣させてくれたニール・ジョーダン監督の映画だとは、俄かに信じがたい。『ブレイブ・ワン(勇敢なる者)』というタイトルも皮肉まじりのギャグだ。

 ジョディ・フォスター演じるヒロインは、深い傷とただならぬ決意をもって必殺処刑人の道を歩み始めるのだが、その後は特に「人を殺すこと」の重荷に直面したりしないし、憎しみと暴力の連鎖にも絡めとられたりしない。彼女自身の行為が悪循環を生んだりせず、ただその場その場のスリルとサスペンスだけで済んでしまう。なんとも作家的良心の感じられない展開が続き、どーすんのかなーと思っていると、最後の最後にものすごいギャグが控えている。

 もうあんまりな内容なんでネタバレとか関係なく書いてしまうが、暴行犯に復讐を遂げようとするヒロインに対し、居合わせた刑事がそれを止めるかと思いきや、「殺るなら警察の銃にしろ」とか言って自分の銃を渡してしまうのである。観客全員が心のなかで「ちょっとオッサン!」と突っ込んでいたはずだ。「オッ、粋だね」とはあんまり思わない。

brave_one_two.jpg

 まあ、その刹那にこの悩める刑事もヒロイン同様、ボーダーを越えてしまったというのは分かる。つまり『ブッチャー・ボーイ』(1998)なんだ、と。殺るっきゃナイト! それが僕らの合言葉なんだ、と。それ以前にこのストーリーラインで思い出すべきは、当然ジョーダンの監督デビュー作『殺人天使』(1982)なわけだが、『ブレイブ・ワン』ではそれらの作品にあった幻惑性も客観性も、全て弛緩したかたちで存在している。職人的な巧さでまとめてはいるが、良心はない。この怠け方は何かというと、やっぱり単純にアメリカ映画だからではないかと思った。あんまし興味ないよな、外国の社会がどうなろうが。

 とはいえラストには、復讐を遂げたヒロインが入り組んだ路地を右往左往する俯瞰ショットを挿入し、彼女がとうとう出口のない迷路に囚われてしまったことを鮮やかに示したりもする。まあでも、それくらい。確かにこんな題材ではトンチンカンな映画にせざるを得なかったのも、なんとなく分かる。明らかに脚本がロクにできてないんじゃないかと思えるシーンもいくつかあるし、『狼よさらば』と『タクシードライバー』からパチった場面でなんとかしのいでいる感もバリバリ。主演のジョディ・フォスターは製作総指揮も兼ねてるから世話ねえや、って感じだけど、主題歌に使われたサラ・マクラクランとか、こんな映画に参加しちゃったことを一体どう思ってるんだろう?

 原作・脚本はロデリック・テイラー。誰かと思ったら、マイク・ホッジス監督のフィルモグラフィの中でもいちばんつまらない『フロリダ・ストレイツ/脱出海峡』(1986)の脚本を書いた奴だった。バカ!

 もちろん、エイベル・フェラーラの『天使の復讐』の方がずっといい。ヒロインが誰の助けにもすがれないまま、はけ口もないまま、ひたすら弧高に狂っていくからだ。共感もないし、止めてくれる人間もいない。だからこそ真の意味で、彼女は自立する。この映画も、ポール・ヴァーホーヴェンとかデイヴィッド・クローネンバーグが撮れば、少しは誠実な映画になったかもしれない。


製作/ジョエル・シルヴァー、スーザン・ダウニー
監督/ニール・ジョーダン
原案/ロデリック・テイラー、ブルース・A・テイラー
脚本/ロデリック・テイラー、ブルース・A・テイラー、シンシア・モート
撮影監督/フィリップ・ルースロ
音楽/ダリオ・マリアネッリ
出演/ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード、ナヴィーン・ウィリアムズ、メアリー・スティーンバージェン、ニッキー・カット、ジェーン・アダムズ
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