Simply Dead

映画の感想文。

『マッド探偵』(2007)

『マッド探偵』
原題:神探(2007)
英語題:Mad Detective

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 東京国際映画祭2007で日本初上映された、ジョニー・トー&ワイ・カーファイ監督チームによる新作。相変わらずひどい邦題つけるなぁ、と思ったら本当にキチガイ探偵が大活躍する話で、すっごく面白かった(いや、ひどい題には変わりないけど)。同監督チームが新機軸を切り開いた『マッスルモンク』(2003)の系譜に連なる、あまりにハチャメチャかつクールな傑作。

 主人公の元刑事パンは、天才的な推理力で多くの難事件を解決してきたものの、あまりに奇行が過ぎて警察をクビになった男。彼は相手の心に潜む鬼が見えてしまう……つまり二重人格者ならホントに2人いるように見える。この設定が秀逸。そんな彼が本作で戦う相手は、なんと七重人格! 容疑者を尾行するシーンでは7人の男女がゾロゾロ連れだって歩いてたり、車に乗れば7人がギュウ詰めになってたりといった、シティボーイズのコントかと思うようなスリリングかつバカな絵面が展開するのである。ちなみに気弱で食いしん坊な人格を演じているのは、当然のごとくラム・シュ。黒幕的人格(?)を演じるケリー・リンがやたらカッコよかった。立ちション・シーンまで辞さない女優魂も含めて。

 心に鬼が棲んでいるのは犯人だけではない。主人公にも存在しない妻の幻影がつきまとう。さらに自分の耳を警察署長の前で切り取ってしまったり、プロファイリングのために自分も山奥で生き埋めになったり、その狂いっぷりは筋金入り。映画の主人公として成立するかどうかで言えば明らかにナシの方向だ。でも、ワイ・カーファイもジョニー・トーも「無問題!」と胸を張る。その潔さが凄い。

 タイトルロールに扮するラウ・チンワンが素晴らしい。一時期とは比べ物にならないほどスリムになった体型で、文字通り「あぶない刑事」を怪演。コメディの基礎として大真面目な顔で間抜けなことをやればやるほどおかしいというのがあるが、今作の場合はそこに「この人は本当に狂っている」というホラーなスパイスもきいていて、とても豊かなユーモアが醸し出されるのである。持ち前の可愛げもうまく活かされていて、幻覚でしかない元妻に一途な愛をささげる姿には、素直に泣かされる。

 映画祭のゲストにはジョニー・トー監督しか招かれていなかったが、これはどちらかというと脚本も共同執筆しているワイ・カーファイの個性が強く出た作品。もちろんジョニー・トーらしいシャープな映像とガンアクションも見どころだ。ラストの鏡を使ったトリッキーな銃撃戦も、物語としてはお約束だが素晴らしい(技術的には相当に難しい場面)。

 主人公のキャラクターがあまりに素晴らしいので続編を期待してしまうが、あのエンディングでは望み薄かも。警官時代にさかのぼった話でもいいから作ってほしい。


監督/ジョニー・トー、ワイ・カーファイ
脚本/ワイ・カーファイ、オー・キンイー
撮影/チェン・チュウキョン
編集/キャサリン・シー
音楽/グザヴィエ・ジャモー
出演/ラウ・チンワン、アンディ・オン、ケリー・リン、ラム・カートン、ラム・シュ
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